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童子の大法螺
さて。
あるところに、自分は国内一の大法螺吹きであると自認する男がおりました。この男があるとき、とある町にもやはり大法螺吹きと吹聴してやまない男がいると聞き、これは是非とも法螺比べをせねばならないとその家の戸を叩きました。
ところが出てきたのは童子がひとり。男は、自分こそが国内一の大法螺吹きで、お前の父親とどちらの方がより大きな法螺を吹けるか腕比べにきた、さあお前の父はどこへ行った、と問いました。
童子はつらつらと答えました。
「父は天が落ちてくると聞いて隣近所と一緒に天を支えるべく爪楊枝を三本持って出て行った。母は海の底にできた裂け目を塞ぐために二寸の縫い針と麻糸を持って行って今も縫ってる」
童子の言に面食らった男は、しかしうろたえた様子は見せず、
「昨日の暴風でうちの村の吊鐘が飛んでいったのだが、何か知らないか」
するとこれにも童子はしれっと、
「それなら今朝までうちの天井裏の蜘蛛の巣にかかっていたようだが、もう見えなくなったところをみるとどうやら全て食べきってしまったようだ」
童子の返答に、これほど軽々と大法螺を吹く童子なら、この親はどれほどの大法螺吹きなのかと恐れをなし、裾をまくって逃げ帰ってしまいましたとさ。




