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昨日焼いた
さて。
あるところに、所用でしばらく遠出する男がおりました。先に来客の予定があったのですが、所用が急ぎなもので待っていられません。仕方がないので男は、自分はこれこれの用事でしばらく家を空けるから待っていてくれという伝言を書きつけ、息子に渡しました。
息子は言いつけ通り伝言を持って待っておりましたが、待てど暮らせど父も客も来ないので、とうとう伝言の紙を庭で焼き捨ててしまいました。するとその翌日、とうとう客人がやって来ました。
「お前の親父はどこだい」
来客が問いますが、息子は答えられません。父の伝言の紙は昨日焼き捨ててしまいましたし、その内容など覚えていないからです。しばし息子は考えましたが、とうとう諦めて正直に伝言の紙は「なくなった」と答えました。
驚いたのは客人です。突然、父は亡くなったと言われては二の句が継げません。それでもようやく、葬式は「いつだね」と問いました。
その問いにも息子は正直に、伝言の紙は「昨日焼いた」と答えました。
ぶったまげた客人は、結局用を済ませることなく帰ってしまったということです。




