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嘘上手
さて。
あるところに、とても嘘の上手で、自分に騙せないものはないと豪語している男がおりました。あるとき、その男の噂を聞きつけた殿様が男を城まで呼びつけ、言いました。
「お前は嘘が得意だと言うが、ならば今すぐこの場で私を見事騙してみせよ。もし騙しおおせたのなら千両の褒美をやろう」
殿様の前にひざまずいた男は了承しましたが、しかし、と続けます。
「殿様。おれは嘘をつくときは必ず自分の嘘つき指南書を読んで嘘をついているのであります。しかしこのたび、殿様の急な呼び出しで慌てて家を飛び出したため、この指南書を忘れてきてしまいました。どうか一度、家に帰ってこの指南書を取って来てもよろしいでしょうか」
何と、と殿様は表情を曇らせましたが、仕方ないと許可しました。
「お前は指南書に従って嘘をついていたのか。それはやや興ざめだが、已むを得ない。取りに帰ってもよろしい。早く取って来て私を騙してみせよ」
殿様の言いつけで、男は一度家に帰りました。
しかし、戻ってきた男は指南書どころか、身ひとつで何も持ってきていません。何事か、と殿様が怒ると、男はしれっと、
「嘘つき指南書というのは嘘で御座います」
男は見事、千両の褒美を手に入れて帰りましたとさ。




