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つらら女房
さて。
あるところに、全く女に縁のない男がおりました。嫁が欲しいとは思うものの、誰も来てくれないので困っています。それでも諦めることができず、寒い冬になれば毎朝、軒先から下がって朝日に輝くつららを見て「あんな綺麗な女房が欲しいものだ」とつぶやいておりました。
ある吹雪の夜のこと、男のもとに道に迷ったという美しい女が訪ねてきました。女には身寄りもないということで、一目惚れした男は女を早速嫁に取りました。
女はとても気立てがよく、家事もそつなくこなしましたが、決して風呂にだけは入ろうとしませんでした。さすがに数年も風呂に入らないのでは不潔だと、ある晩に嫌がる女を無理に風呂に入れました。すると、どういうことでしょう、たちまち女は湯煙の中に消え、女の櫛だけが残されていたということです。




