閑古鳥が啼いている
さて。
あるところに、あまりうまくいっていない小さなお店がありました。そう遠くないところにできた大きなお店にお客さんを皆取られて、その小さなお店を訪れるお客さんはさっぱりいなくなってしまったのでした。
「ああ、暇だなあ」小さいお店の店主は、ぼんやりと椅子に座ったままぼやきます。「どうしてこんなに暇なんだろう。おれはこんなに頑張っているのに」
店主はそう言っておりますが、実のところ対して頑張ってはいませんでした。お客さんを呼び込むことも、品ぞろえを整えることもほとんどしませんでした。手入れのされないお店はどんどんさびれていき、なおのこと客足は遠のきます。
そのうち、小さなお店の軒先に小さな鳥が留まるようになりました。糞を散らされてはたまらないと、店主は鳥を何度も追い払いますが、鳥はすぐに戻って来てまたかっこうかっこうと啼き始めます。しかも、みるみるうちに数を増やして、軒先にずらりと並ぶとかっこうかっこうの大合唱です。
「何だってんだよ一体!」業を煮やした店主が怒鳴っても、鳥たちはもはや動じません。「やっぱり糞を撒き散らしやがってよ!」
と、そこで偶然通りがかった老人が、軒先に連なっている鳥たちを見て笑いました。
「こいつは驚いた!」老人は指を指して笑います。「閑古鳥が啼いてるよ!」
「閑古鳥? こいつらが閑古鳥っていうのか」顔をしかめて、店主が言いました。「いくら閑古鳥でも、こうたくさん集まって騒がれたんじゃ全く侘しくなんかならないな」
啼いているのが閑古鳥では、いよいよお店もおしまいです。何とかして追い払えないものかと思案している店主に、先程まで大笑いしていた老人が言います。
「繁盛していないから閑古鳥が啼くんだ。しかも度を越して流行ってないから、こんなに閑古鳥が集まって来るんだろう。だから、お店をしっかりと繁盛させれば、閑古鳥もいなくなるに違いないよ」
老人の言葉に店主は半信半疑でしたが、とにかくやるより他にありません。何より、軒先に並ぶ閑古鳥たちがこちらをバカにしたような目で見下ろしてくるのです。そのままにしておくのは癪ですから、店主はこれまでとは比べ物にならないくらい働きました。品物を豊富にし、お客さんを愛想よく呼び込み、閑古鳥の糞を綺麗に掃除し、大きなお店に負けないくらい宣伝しました。
その甲斐あってか、少しずつ小さなお店にもお客さんがやって来るようになり、いつしか大きなお店ができる以前よりもっと繁盛するようになりました。そして客足に応じるように、閑古鳥は数を減らしていき、とうとう一羽もいなくなりました。
閑古鳥はいなくなりましたが、二度とこの店では啼かせまいと、店主は努力を怠ることがなくなりましたとさ。




