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満たしちゃいけない好奇心

 さて。

 あるところに、とても好奇心旺盛な冒険家がおりました。この冒険家は、富や名声には興味を持たず、ただ自分の知識欲を満たすことだけを冒険の目的としておりました。

 そしてあるとき、この世の全てを知り尽くしている賢者が、世界の果てにいるという話を聞きつけました。知識を求める冒険者として、これを外すわけにはいきません。早速冒険家は世界の果てへと向かいました。

 艱難辛苦かんなんしんくを乗り越えた末、ようやく賢者の住まう洞窟にたどり着いた冒険家は、その最奥さいおうにまします賢者に開口一番問いかけました。

「賢者よ! どうか私に教えてほしい! この世界は、一体どうやってできている。この世界はどこから生まれ、どのように続き、そしていかにして終わるのか!? さあ賢者よ、私に全てを教えておくれ!」

 冒険家の問いに、賢者は重々しく答えました。

「教えよう。この世界は無から生まれ、虚しく続き、そして無に帰して終わる。全てはまるで夢のようであり、幻のようであり、柔らかな風に撫でられるだけで消える蝋燭ろうそく灯火ともしびのような儚いものだ」

「成程、箴言しんげんだ」冒険家は満足げに頷きました。「では問おう。世界はいつから始まり、いつに終わるのか。この世の全てを知り尽くしているのならば、それも知っているのだろう!?」

 冒険家の期待に反し、賢者はゆっくりと首を振りました。

「世界は無から始まった。無にとって時空の概念は存在しない。ゆえに世界がいつから始まったかを問うことに意味はない。世界が始まったときから、時間が流れ始めるのだ」

「では世界の終わりは。終わりはいつ訪れる」冒険家はさらに勢い込んで問いかけます。「知らないことのない賢者であるならば、世界の終わりだって知っているだろう!」

「残念ながら、それについては答えられない」賢者は言いました。「世界の終わりは誰も知らない。知ってしまっても誰も幸せにならない。だから私は、お前の問いには答えられない」

「何だ、そうなのか」

 冒険家は、拍子抜けしたような顔になって、あっさりと背を向けました。

「賢者が聞いて呆れるな。この世の全てを知り尽くしているのではなかったのか。所詮、賢者などその程度。やはり自分の足で見聞を広げていくしかないようだな」

 ひとりごちながら、冒険家は立ち去りました。再び賢者だけになった洞窟の闇の中で、そっと賢者は囁きます。

「誰も、知りたくなどないだろう。世界が既に、遥か昔に滅んでいて、この今の世は神が昼寝に見ている夢幻に過ぎないなどという現実は」

 結局、冒険家が真実を知るよりも、神が目覚める方が早かったんですとさ。


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