紅眼の魔導術師（エクソダス）

謎の使者編

男の正体

クロノスは空中で体制を下に傾け

手にしていた剣を二刀流へと変化させ

「百花繚乱！！」

彼がそう叫ぶと刃の部分が

禍々しい焔で覆い尽くされていた。

両手を交差させその剣を両手に

フードの男へと攻撃を仕掛けた。

第15話 男の正体

クロノスは思い切りフードの男に向かっていく。

まるで獲物を見つけ飛び込んでいく鷹のように。

（これで終わりだ！！）

心の中で勝利を確信したその瞬間

すっとフードの男が下に手を当て

男の周りを囲むように魔導式が展開した。

「絶対防御壁（テンペスト）！！」

そう叫ぶと魔導式から高密度の壁が勢いよくでてきて

ドーム状に男の周りを囲んでいった。

空中に浮いて戸惑っているクロノスを

みてグランが叫んだ。

「やべ、、！弾性（バウンド）!!!!!」

クロノスがその声に気づいた時には

目の前に魔導式があった。

青色で中心に「弾」と書かれている。

すると勢いよくクロノスはど真ん中に直撃し

壁とは反対側に飛ばされた。

「ちょっ！！あぶねーだ、、、ガハッ！！」

クロノスはそのまま背中から地面に降り立った。

勢いもあったのですごく痛かったらしい。

頭を掻きながら体制を戻すと

目の前でグランが真剣な顔でクロノスを見ていた。

「大丈夫かクロノス？怪我は？？」

「お前が弾性（バウンド）で吹き飛ばしておいて

人の心配するのかよ」

「無事ならよかった。ほんと。」

二人が喋っている間に

フードの男が壁を破壊して外にでてきた。

その破壊音に反応しグランとクロノスは体制を整えた。グランの手には何もなく、クロノスの手には「鳳凰」と呼ばれる剣が２本。

その格好に動揺せずに

ゆっくりと２人に近づいていった。

「俺は貴様ら魔術師を許さない。貴様らが生き続ける限り、俺は報復し続ける。」

「そうですか。だったらやってみなさい。」

フードの男はその声に気づいていなかった。

グランでもなくクロノスでもないこの声を。

「あなたに対しての報復です！光臨の矢！！」

その声に気づいた男は驚きながら

空に顔を見せた。

とんでもない速さで飛んでくる光を

視界で捉えることができた。

ーときにはもう遅かった。ー

その光はサングラスとフードを勢いよく

消し炭にした。

男は危機一髪フードを脱ぎ捨て

絶対防御壁（テンペスト）を構築し

その光が自分に当たらないように防いだ。

グランはゆっくりと空を見上げると

右手を前に突き出し

どこかおしとやかな雰囲気を醸し出している

一人の魔導術師（エクソダス）を確認した。

「大将から連絡が入ったので向かいました。

グラン、お久しぶりですね。」

そういいながらグランの前に降り立ったのは

紛れもない、天空の魔導術師（エクソダス）フィリアだった。

「今のは新技かフィリア。すごい威力だったな。

葬撃隊にほしい戦力だ。」

「なにを言っているの？アダムとグランがいたら

私なんて出る幕ないじゃないの」

そんな話をしているとまた壁を壊し

男がでてきた。

今までフードやサングラスをしていたから

よくわからなかったが

男を誰だか確定できるチャンスがきた。

が、次の瞬間

グラン達はその男をみて震えていた。

褐色の肌に透き通るような蒼の瞳。

その姿をみただけで

この場にいる全員が誰かを特定できた。

「こいつ、、その肌、その瞳、、、、。

まさか、、アステロルの生き残り、、。」

グランがそう言うと

クロノスが横で呟いた。

「もしこいつが生き残りなら

今までミストラルの魔術師殺人事件も納得がいく。」

それもそのはずであった。

今の魔導術師（エクソダス）が産まれる前に

ミストラルとアステロルで戦争が起きた。

火種はミストラル国軍が謝ってアステロルの人間を

射殺してしまったことだ。

その戦争にはミストラル国軍兵器である魔術師が

数多く駆り出されていた。

そしてこの戦争は徐々に拡大していき

終戦した頃には皆にこう呼ばれていた。

アステロル殲滅戦と、、。

今グラン達が目にしているのは

その殲滅戦で生き残ったごく僅かな

アステロルの生き残り。

魔術師を恨み恨み続けた結果

今の彼になってしまったということらしい。

「魔術師が次から次へと！

今日はなんとついてるのだろう、、ガッ!」

男がゆらりと立ち上がり

グラン達に向かって走り込んでいる最中に

なんらかの邪魔が入り

男はその場に膝をつき手で体を支えていた。

「これは重力魔導 グラビティ・パルス。

この技を受けてなおその状態をキープできるなんて

やるね、お前。」

グランが技の発動場所をみると

男の後ろにアダムが立っていた。

「アダム！！お前一体今までどこにいたんだよ！！」

グランが慌てて咄嗟に聞くと

「だってクロノスもグランも２人でどこかに行っちゃったんだもん！行こうとしたら近くに黒猫がいて

危なくない場所まで連れていったんだよ！？」

「それはごめん。まあ、そのまま捉えとけ。

もうじき大将が来るだろうさ。その時に、、！！」

全員が油断していたタイミングに

男が地面に手のひらをあてて

破壊して地下水道をつたって逃亡した。

アダムが追いかけようとしたところに

グランがその勢いを止めた。

「やめろアダム、これ以上追いかけたところで無駄だ。」

そういうとアダムは悔しそうに後ろに足を進めた。

ふぅ、と大きなため息をついたグランに

フィリアが寄ってきてなにかをしゃべり始めた。

「あの男、、アステロルの生き残りだとしたら

なんでしょうね、、、復讐したい気持ちは良く分かります。、、なのに、あのおかしなオーラは一体、、」

フィリアの言う通りだった。

あの男はアステロルの生き残り。

それだけでも復讐の理由には十分なり得る。

だが男は復讐とは全く違った感情を

オーラとして放出していた。

ー自分を殺して欲しいとー