名も無き男
「一刻も早く一般人を避難させろ!!
時計塔から離れされるんだ!!」
クロノスが叫んだ時には
時計塔の上に人が立っていた。
第13話 名も無き男
その凛とした姿をした男をみて
クロノスは舌打ちをした。
グランはこの状況をようやく理解し始めたようで
塔の上に立っている人に戦闘態勢を構えていた。
「一般人を少し餌にしただけで魔術師らしき人間が
2人もでてきた、、か。」
そういうとその男は塔の上から
地上まで降りてきた。
がっちりとした足。揺れる茶色のフード。
鈍く光るサングラス。
見るまでもない。あれは殺る側の人間だ。
グランは直感でそう思った。
するとフードの男がグラン達の名を聞いてきた。
「お前たち、名を何という?」
その問にクロノスは冷静に答えた。
「俺はクロノス・ダース。俺はミストラル国軍兵器と化した魔術師だ。」
その言葉にフードの男は少しだけだが反応した。
「そこのお前は?」
グランは随分とめんどくさそうに軽く答えた。
「俺はグラン・オルガ。ミストラル国軍兵器である
魔導術師の一人だ。」
そう答えるとフードの男は満足げにグラン達に
攻撃を仕掛けてきた。
「お前たちは報復を受けるべき罪人である。
力に逆らう者に神の報復を!!」
突然雰囲気が変異した男は
グランの元に走りかけた。
「まずはお前からだ!!神の報復を受けるがいい!!!」
「そうはさせるかよ!!無気力パレット!!!」
グランはブンッと腕を振ると大きな鎌をだした。
その鎌に驚いたのか少しだけ体勢が崩れていた。
今だ!というタイミングにグランは鎌を無駄なく大きく振り、その鎌はフードの男の首元に直撃する
、、、はずだった。
次の瞬間、男はその鎌の刃先を防御魔法で止めていた。
「つまらん武器を作るのだな、、憐れな者よ。
破壊ーブレイクー」
小さく呟くと鎌に大きな術式が展開され
男が軽く鎌を見ると、グランの持っていた鎌が
勢い良く壊れた。
「壊れ、、た!?」
ぎょっとした顔を浮かべたグランに追い討ちをかけるかのように男が勝負を仕掛けた。
「報復だ!魔導術師!!」
「おーっと。ここからは俺が相手になるぜ。」
男がグランに襲いかかる寸前に
クロノスが走り込んできて男の手を斬るように
大きく剣を振るった。
危険を回避した男は一度後ろに下がった。
一段落がついたところでクロノスが話始めた。
「そーいや、お前の名前を聞いてなかったな。教えろよ。」
そういうと男は大きな声をだした。
「我は醜き国軍兵器をこの世から消すためにこの地に降り立った神の使者である。」
「おいおい。俺が聞きたいのはお前の名前だ。」
クロノスは何かを見透かしたかのような口ぶりで
男に喧嘩を売る直前の言葉を口にしている。
その言葉に乗ったのか男は名を口にした。
「我はこの世には存在するはずのない者だ。
名などない。好きに呼ぶがいい。」
「じゃあ適当に呼ばせてもらうわ。
ついでに俺達の目の前から消えてくれたりしないのかな?」
「醜き者を前にして使者が黙って帰ると思うのか?」
「やっぱりそうなるよな。」
何か楽しみにしているかのような目で男を見つめた。
グランも反動が終わったらしくゆっくりと立ち上がっていた。
「クロノス、さっさとこいつを片付けるぞ。
始末しないと面倒なことになるだろうからな。」
その言葉を聞いて男はフッと笑った。
「やはりお前達は報復すべき者だ。
さあ始めるぞ。神の報復を!!」