約束
シェルターに戻り第一隔壁の中に入るとまず、手に入れた品々を一箇所に集める。
それを業者が白夜さんと交渉しながら買い取る。その時によく値引きしようとしてくるので時間が掛かる。その交渉が終わると回収物はのことは業者が管理することとなる。
その後はシャワールームでスーツやトラックなどの付着を洗い、スーツを返して終わりとなる。
報酬は集会所で渡されそのまま解散となる。今回は報酬が少ないがあんなハプニングがあったので仕方がないが。
俺は白夜さんが仕事が終わるのを待ってから白夜さんと共に家路につく。
「なかなか、大変だったみたいだね」
「まあ、そうですね」
白夜さんは質問に苦笑しなが答える。
「そう言えば亡くなった人の家族はどうなるですか?」
「そうだね、兵士の家族は基本的な生活を保障されると思うけど、他の人はどうだか」
白夜さんは困った顔をしながら言う。
しばらく歩くとお互いの家が見えてくる。
「さて、お別れだね。 お休み」
「はい、おやすみなさい」
そう言って家のドアを開ける。
「ただいま」
廊下に声が響く。
「お帰りなさい、兄さん。夕飯できてますよ」
リビングへ移動すると机の上にはデミグラスソースにかかったハンバーグとご飯が並んでいる。
椅子に座るといただきます、と言って食べ始める。
「今日はどうでしたか?」
こちらの顔色が悪いことに気づいたらしく聴いてくるので今日の出来事を語る。
「それは、大変でしたね……でも、不貴信かも知れませんけど兄さんが無事で良かったです。」
俺の話を聞いている間、緊張していた顔に安堵の様子が伺うことができる。
「そうだな、今回は死を覚悟したしな」
そう言うと茜は手のひらを返したように不安そうな顔になる。
「兄さん約束してください」
「うん? 何をだ」
決意した顔をすると茜は口を開く。
「はい、私の花嫁姿……いえ、私の死に装束を見るまでは死なないでください」
「おい、茜の方が年下だろ。まあ、花嫁姿くらいなら約束できるが」
聞き終えると茜の顔が笑顔になる。
「絶対ですからね」
小指を出しながら尋ねてくる。
「ああ、約束だ」
俺も小指を出し、絡ませる。
「本当にですからね」
何度も確認してくるので、頭を撫でて答える。
そうすると茜は黙り込む。
何度も尋ねるのは生い立ちを考えれば仕方の無いことだろう。お互い血は繋がっていなくても最後の家族なのだから。
「お時間を取らせてすいません、夕飯を食べましょう。冷めてしまいますから。」
夕飯の途中だと言うことに気づいて慌てた様子で言ってくる。
「他人行儀みたいなことを言うな、家族だろ」
「はい……そうですよね」
茜は嬉しいような悲しいような顔をする。
不思議に思いつつも食事を続ける。
食べ終えるといつものように茜が片付け始める。
俺はお礼を言うと部屋で今日、たくさん使ったP220を分解して整備をし始める。
まったく、散々な一日だった。
この仕事させてもらってからは人の死はたくさん見たがやはりなれること無い。
今日、知っているだけでもドッグタゲの分は死んでいる。一個分隊もだ。
茜を落ち着かせるためにああは言ったが本当のことはどうか分からない。
いかんな、だめな思考もしている。
そんなんじゃ、親父との家族を守る約束も茜との約束も守れない。
そんな事を考えながら作業をしているとあっとゆうまに終わっている。
今日はとてもつれた。
P220を机に置くと着の身そのままにベッドに入る。
それだけで瞼が重くなっていく。
身をゆだねるとすぐに意識が途絶えた。