表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のんびり回る異世界道中  作者: 雪だるま
2/3

二階層:冒険者学校へそしてチート判明

冒険者学校へそしてチート判明






「はい、これで記入事項は終わりです。これが貴方の部屋の鍵となります。地図はあちらにありますので、其方で確認してください。明日の8時から選別のテストがありますので遅れないようにしてください。遅れた場合は最低のEクラスとなりますのでご注意ください。では、よき冒険者を目指してください」


受付のお姉さんから、必要事項、記入、説明、支払などなどを聞いて鍵を受け取った。

案内地図をみて、そのまま俺に割り当てられた部屋を目指す。


しかし、ここまできて判明したことがある。

なんやかんやで俺が異世界からやってきて随分経った気がするがまだ時計を見れば、あの草原で気が付いてから6時間って所だ。

今は14時を回ったところ。

部屋に入って少し整理するか。


「えーと、205号室っと……」


なんかホテルの鍵だな。

まあ、それと変わりないか。

説明だと、一人で一部屋借りれるみたいだ。

腕のいい生徒だと複数部屋を借りて倉庫にしたり、ミーティング室にしたりするらしい。

ああ、奴隷ってのも存在してて、奴隷達専用の部屋にしたりするみたいだ。

お金を稼げということだな。


結構色々できるが、期限が基本3年。

これで自立できないなら冒険者になれないと判断されて放逐される。

部屋も自分で掃除したり、服も自分で洗うのが普通。

忙しいときだと、清掃販売ってところで有料で洗濯を引き受けてくれるそうだ。


「ここか」

「ここね」


「「ん?」」


ようやく205号室を見つけて声を上げると、隣から同じように見つけた声が上がる。

それで横を見ると、見事な金髪ロールの令嬢が立っていた。

スタイルも抜群、すげー巨乳で腰がえらく細い。

こんなのが実際にいるんだな。

下心より、珍しいモノを見た感じが強い。

というか、鳥野先輩や、田中先輩とつるんでたので、あんまり女性にがっつく精神はない。

どう見てもなんかプライドが高そうなんでさっさと挨拶済ませて、部屋に入ろう。


「どうも、俺は205号室なんだ。君は204号室?」

「ええ、お隣みたいですわね」

「そうか、騒がしくするつもりは無いが、問題があれば言ってくれ。俺は今日入って来たばかりなんで、準備があるから、何か話があれば後日で」

「あ、ええ。分かりましたわ」


そういって、俺は鍵を開けてさっさと中に入る。

これ以上、今まで得た情報を整理する時間を削られるのは勘弁だ。

どう見てもお貴族様だし、あれとは関わりたくないな。

……フラグになりませんように。



「……それなりに家具はそろってるのか。いや、そりゃそうか」


部屋に入って内装を確認してみる。

2部屋って所か、家具もあるベットもある。


「ああ、なるほどベッドだからか」


なぜ二部屋か不思議だったが、西洋だと敷布団なんて無いだろうからな。

いや、寝袋とかはあったはずだが、ベットの部屋があるのが当然みたいな感じだからな。

冷蔵庫なんかないし、テーブルをベットない部屋にドカンと置いてある。

おう一部屋なら邪魔だな。


食事は一階の食堂で任意らしい。

毎日指定時刻にいけば無料食べられる。

稼ぐ奴は外で食べたりするらしい。


今は私物もほとんどないので、そのままベットに腰を下ろす。

思ったより固いな。

いや、俺の普通と比べる方が無理があるか。


「さて、こういう時はノートに書きだせって先輩いってたよな」


なので、ノートを取り出してカリカリ書いていく。

俺が現在知りうることを、これからするべきと思う事を。


・ここは俺の知ってる世界じゃない

・魔物がいる

・ダンジョンがあるらしい

・今いる町はラキアの町というらしい

・冒険者学校で情報を集める

・手持ちの武器がない

・RPGみたくステータスがあるらしい

・帰る方法を探す


「うーん。最終目的は帰るだよな。うん。だが、こう書いてるのを見るとどうやってもすぐに達成できそうにない。まずは冒険者学校で情報を集めるべきだな。手持ちの武器はあとで、購買で安い武器を仕入れるべきだな」


これからするべき事を書くことで、しっかりわかってくる。

まあ、雲をつかむような話だが、普通なら錯乱して正常に判断できるまで時間がかかるだろう。

急がばまわれ、初体験な事だし楽しむべしだな。


「さて、まずは今確認できることをするべきだな。えーとステータス? だっけ?」


職業:メイン剣士  サブ(魔術師・僧侶・戦士・格闘家・勇者・賢者……などなど

入れ替え可能


Lv.15

HP:5200

MP:8291

STR(筋力):3840

DEF(防御力):2310

INT(賢さ):4720

AGI(素早さ):4032

LUK(運):1220


ユニークスキル

ゲームからの道具引き出し


スキル

ゲームから適当に全部つけといたから頑張って生きてくれい。

これぐらいしかできんが(by女神)

平凡スキル山ほど

……

……



「誰だよ女神って!!」


思わず他の項目すっ飛ばしてツッコんだよ!!


「おちつけ、おちつけ。これは今は判断不能だ。叫んでも隣の部屋の人に迷惑がかかるだけだ。すーはー、すーはー」


よし、落ち着いた。


「まずはステータスは見れた。これは成果だ。しかし比較対象を見てないから何ともいえない。次に大事なのはスキルだな。女神はほっといて、ゲームからの道具引き出し?」


よくわからん、ゲームなんてないし……いや待てよ。

そう思って、鞄の中にある携帯ゲームを引っ張り出す。


「まさかな……」


電源を入れて…ソフトは心配するな。

これはVIPAだ。

ネット経由で懐かしゲームから、最新作まで、64GBのメモリーでウハウハさ!!

まあ詰め込んだせいで残り5GBだけどな。


そうだな、適当にRPGから道具を山ほど集めているゲームを起動するか。

どんなゲームかって?

もち、WIZ系。

倉庫の画面に移動する。

レア系アイテムがごっそり並んでいる。


「で、どうやって取り出すんだよ?」


さもありなん。

ゲーム画面からどうやって道具を取り出すんだよ。

そもそも画面が小さいから、手をぎりぎりツッコめるかどうかだ。

武器とか取り出せねぇよ。

そもそも、画面に手が沈むようなP4ではない。


「うーん、スキルってどう使うんだ?」


念じても、唸っても無駄か。

これで思い浮かべれば出てきてくれよ。

パターンだろ……。

ちくしょう。


かれこれゲーム画面とにらめっこを30分。

考えても仕方がないので、ゲームでもしようかと思ったのだが……。


『このアイテムをどうしますか? 持っていく 捨てる 売る ゲームから取り出す』


あったよ。

コマンドで追加されてるよ。

ないわー。

その発想はなかったわ。


「さて、何を取り出した物か……。何回取り出せるかもわからないし、とりあえず最強武器か? いや、防具か? アクセサリーか?」


悩むな。

取り出しに失敗してアイテムが消失しないとも限らない。

普通ならしょぼい、普通のアイテムから試してみるのが安定だが……。


「レアアイテムのストックはあるし、一旦アクセサリー系で行ってみるか」


試したいこともあるし、身に着けてても隠せそうなアクセサリー系がいいだろう。

自動HPMP回復、状態異常無効といろいろあるが、この手のゲームは一個のアイテムで全て防げる事はない。

武器や防具はどうあっても目立つ……いや方法が無いわけでもないが、まだ情報が足りない。

命を守るアクセサリー系が一番安定だな。


そう思い、まずは身代わりアイテムを取り出す。

お約束の身代わりアイテムだ。

死亡を回避するアイテム。

まあ、どこまでの死亡を回避するのかは知らないけど。

実験だし。


で、コマンドを選択してアイテムを取り出す。

本当にできたよ。

とりあえずささっと、ネックレスを付けてみる。

名前は身代わりのネックレス。

装飾も過多ではなく、メンズが着けてもおかしくないシンプル。


「とりあえず着けて……ステータス」


ステータス表示が変わるか確認してみよう。

そうやって先ほどのステータスを見ると項目が追加されていた。


装備アイテムスキル

・身代わり 致死ダメージ、致死毒も含み肩代わりする。発動するとアイテムは壊れる。


「ふむふむ。思った以上に便利だな。しかし落下死とかどうなるんだろう? 要実験だな。あとは重複がどうなるかか」


そう、ゲームと違いこの世界ならアクセサリーは幾つでも……まあ無限ではないが、ゲームみたいに制限なくつけられるはずだ。

効果はどうなるのか確かめないと。

ゲーム画面を見つめる。

特に異常はない。

身代わりのネックレスのストックが一つ減っただけだ。

どうやってデータ書き換えてんだろうな?

ま、そんな事よりもう一個と。


そうやって、もう一つの身代わりネックレスを取り出して、首にかける。

これで同じものが二つ。

ゲームの制限的につけれらない二重装備に二重効果。

恐る恐るステータス画面を開く。


装備アイテムスキル

・身代わり 致死ダメージ、致死毒も含み肩代わりする。発動するとアイテムは壊れる。

・身代わり 致死ダメージ、致死毒も含み肩代わりする。発動するとアイテムは壊れる。


「増えてるな。これは…同時に効果でて二つとも壊れたりしないよな? …これも検証が必要だな。あ、ステータスUP系のアクセサリーで重複するか見ればある程度わかるかな?」


結果ステータスUP系は重複することが分かった。

基礎ステ+力2のアイテムを2個3個4個と指輪を付けてみた。

しっかり4、6、8と増えていった。

ゲーム上力は、この世界ではSTRになるらしい。

こっちの世界に合わせてアイテムも多少変化しているとみるべきだろう。

特殊な効果は重複してるのかイマイチだったが、この場では調べようがないので、とりあえず検証をしようと思うアイテム類は取り出した。


「あー、これは不味い」


取り出したアクセサリーを見てそうつぶやく。

身代わりのネックレスや効果が低いアクセサリーはよかった。

調子にのって超効果。

つまりレアアイテムを取り出したのだが、凄い豪勢なつくりだ。

匠の技が生きた宝飾品だった。

文字だけだと分からない所だよな。


隠せる分ありがたいか。


「……そういえば、新たにゲーム内で錬金して作った物やゲーム内の店で買ったアイテムは取り出せるのか?」


ここは大事だ。

行くら倉庫にある程度数は揃えているとはいえ無限ではない。

更に言うなら、ゲームではほったらかしの回復アイテムは現実では重要だ。

ゲームなら強くなるにつれて回復アイテムは持てる数を圧迫するので売却という形が多くなる。

ゲームでは全滅すれば最初からか、救援部隊つくって回収して復活すればいいからな。

ここでも蘇生ができるかしらないが、迂闊に試せるものでもない。

大事だな回復アイテムは。


結論から言えばゲーム内でのアイテム補充は出来た。

ゲーム内モンスタードロップも取り出せる。

これで物資は無限に取り出せる事になる。

ゲームの電池がいつまで持つかわからないが。

アイテムを吟味したり、モンスタードロップの実験などして2時間ほどつけっぱなしだったが、変な事に表示電池は減っていない。

表示が壊れている可能性もあるので、ある意味さっさと必要なモノは取り出すべきだ。


一旦ゲームの電源を切り、必要なモノだと思うのを書き出す。


・武器 種類選ばず 最低武器もだす

・防具 種類選ばず 最低防具もだす

・アクセサリー 換金できそうなのも含めて

・回復アイテム 蘇生系も取り出しておくこと

・素材系 何が必要かわからんが、錬金がこっちの世界で可能か確かめる為

・最重要 アイテムを保管しておける袋系? アイテムボックスみたいなの。   


「……保管だよな。いつゲームが使えなくなるかわからない。レアアイテムを安全に保管しておける道具が欲しい。……が、そんなアイテムは存在しない。システム上無限袋みたいなのはあるが、システムであって道具として存在しているわけではない。……不味いな」


下手にチート道具を部屋にばらまいて置くのもな……。

選別するしかないか。

……それかゲーム内で錬金して最低装備を底上げするかだな。

まずは選別したアイテムを取り出して、ゲームが電池持っているなら錬金をして底上げ装備を作って取り出す。

これが一番か。

ほっといてもゲームの電池は徐々になくなる。

なるべく早い決断が必要だ。


そうと決まればやることはさっさとやるべきだな。

ゲームを再起動して、取り出すと決めた物を取り出してく。

武器が20、防具も20、アクセサリー系が50、回復アイテムは300個近く。

これでも電池は余っていた。

予定通り、低ランクの装備品を錬金で底上げして取り出すことにした。

いつ電池が切れるかわからないので、一個できるたびに取り出す。


そして、丁度予備まで作り終えたところで電源が落ちた。


「え? それでも1時間くらいだぞ? このVIPAは6時間は持つはずなんだが……えーと」


ココに来た時はつけてないし、この部屋に入ってから4時間ぐらいか……。

表示が壊れてるなら、まあ誤差の範囲か?

しかし、無情だな。

チートはほかに色々あるが、一番便利なゲームアイテム移動はもう使えないか……。


とりあえず、只の学生服……、なんか最近のWIZ系って学園があったりするよな。

それを錬金で耐性MAXとか防御ガン上げ、ステータスUPの合成もした無茶苦茶の一品である。

とりあえずサイズは合いそうだからきてみる。


「ステータスっと……」


ちゃんと装備スキルや補正が付いてるか確認を……


「あれ? MPが減ってる?」


HP:5200

MP:22/8291


しかも殆ど空。

いつ魔法なんて使ったっけ?

んん?

もしかしてスキルでMP使ったりする?

それならゲームからアイテムポンポン出してたのが原因かな?


「ゲームの電池も魔力で補ってたりする?」


これは希望的観測だ。

そんな都合のいいことはない。

でも、それが使えるか確認するのは無駄ではない。

これは明日が楽しみだ。

いや、どのくらいの速度でMPが回復するかも確認しないとな。

今のMPを記憶してと。

ステータス画面をずっと見てても時間の無駄だし、他の確認を済ませてしまおう。


色々武器も装備してみた。

剣は勿論、刀、槍から果ては銃など。

でもWIZ系の銃火器って威力ひくいよねー。

弾とかどうなってんだろう?

実は弾薬はゲーム内でどうやってか補充してるらしく、こっちでは銃は使えなかった。

弾も細かく作っとけ!!


あと、服の上に鎧ってコンボで上乗せ可能だった。

だから学生服に皮の鎧ということができた。

ゲームなら学生服か皮の鎧だけど、実際下に服を着るもんだよな。

ということでゲーム以上に色々上乗せできてチートができる。

チートというかゲームのルールに沿ってるから問題ないんだが、初期装備ではやりすぎだな。

が、命がかかってる自重はしない。

武器もロングソードとショートソードで対霊倍というか、全種族倍ダメージ。

まあこの世界じゃよくわからないから効果がある。だと思う。


自動回復はHPもMPも勝手に回復するし、促進って感じになるのかな。

とりあえずMPを見ると秒間20回復してた。

おうふ、こりゃすげー、つけるとつけないは大違いだな。


MPも半分近く回復したし…ゲームつけてみるか。

恐る恐る電源が切れたゲームを掴み、スイッチを押す。


「うっし!!」


ついた。

MPを消費してスキルを発動してるみたいだ。

とりあえず起動で10ほどMPを持っていかれた。

とりあえず、ステータス画面を見ながらアイテムを適当に取り出してみる。

するとMPが5減った。

ふむ、取り出しにもMPを使うのか。

次にレアのアクセサリーを取り出す、次は消費が40。

うーん、回数こなしてないからわからないけど、レア度も影響してるみたいだな。

しかし、このゲーム機VIPAが無くなるか壊れればおしまいだな。

大事にしないといけないな。

そして、なんとかアイテムを大量に安全に保管する方法を探さないと活用はしにくいな。


鳥野先輩がいってたもんな。

幾らチートでも、国家が相手だと身動きが取れなくなる。

自分一人ならどうでもなるが、まあ、人付き合いもやめないといけないだろうから。

チートは隠すのが賢明だな。

俺TUEEEも我慢しないと、戦力扱いで、駒扱いだろうよ。


そんなのは勘弁だ。

しっかり隠ぺいして行こう。


「お、もうこんな時間か」


もう6時を回っている。

食堂で飯でも食うか。

誰かと話でもして、情報を集められればいいな。


部屋を空けるのは心配だが、この短時間で道具が盗まれるなら、余程注意しない限り、チートは使えんだろう。

一応レア道具は棚にしまったし、最低ランクの武具は見えるところに立てかけている。

ただの最低ランクとチートランクを混ぜて置いてあるから、予備だと勘違いするだろう。



鍵をかけて食堂へと歩こうとしたら、206号室が勢いよく開けられる。


「おっと」


ぶつかるほど間抜けじゃない。

さっと、避けて、そのまま歩き始めようとするが……。


「ご、ごめんなさい!! もう食事の時間で焦っちゃって!!」


206号室から出てきて謝っているのは俺より多分年下のちびっこと言っても通る少女だ。

ま、胸だけデカいが。

なんだ、胸のサイズがでかいのかこの世界?

204号室のお嬢さんもでかかったし。


と、そこはいいか。

色に走れば、自滅の元だ。

相手はお子様とも取れる少女、大人の対応をしなければ。


「別にぶつかってないから気にしないでいい。今度は気をつけろよ」

「あ、はい」


さて、食事に行こう。


「あ、あの。あ、貴方もごはんですか?」

「ああ」


返事をしつつ進むことはやめない。


「す、すごいですよね。ここ。皆で食事ができて無料なんですから」

「そりゃ、しっかりお金貰ってるしな」


なぜか話かけて、ついてくる。


「わ、私206号室に今日住むことになりました。ユーリィです」

「俺は隣の部屋の205号室のタイキだ」

「お隣なんですね。よろしくお願いします」

「おう、宜しく」


そのまま食堂についてしまった。

まあ、食事って言ってたし同じ道だったってことだろう。

さて空いてる席に適当について食うか。


「わー凄いですね」

「……そうだな」


同じ席なのも、偶然だな。

他の席埋まってるし。

うん、偶然。

さっさと飯を食って、ねよ……っとまて、情報を集めるには丁度いい。


「ユーリィだったか? ちょっと話をしていいか?」

「もぐもぐ。んっ!? はい、大丈夫です」


ハムスターみたいに頬を一杯に食べ物を詰めている。

なんか悪い事したな。

答えてくれるみたいだし、あとでお詫びをしよう。


で、何を話せばいいのか。

必要な情報はアイテムボックスみたいな存在は無いか。

だが、いきなり聞くのは不躾だよな。


「あ、あの。どうかしましたか?」

「ん? すまない。話をしたかったんだけど、何か親しくないのに悪いかなと思ってな」

「大丈夫ですよ。これから一緒に冒険者に成る為に頑張るんです。お互い様ですよ。お隣同士ですし仲良くしましょう!!」

「そう、だな。色々迷惑をかけるかもしれないが、改めてよろしく」

「はい、よろしくお願いします」

「それで話だが、荷物の事をな」

「荷物?」

「ああ、これからダンジョンをメインに訓練をするだろう?」

「はい、そうですね」

「沢山倒せるとは思えないけど、一人で持てる量は限りがある。なんか一気に沢山持てる方法はないかなーってな」


少し遠回しに言ってみる。

この世界の常識がないし、ユーリィがどんな子かと判断するには時間が足らない。


「なるほど。そう言えばそうですね。大きい鞄を持って行っても邪魔になりますし、やっぱりお金はかかりますけど、アイテム袋じゃないですか?」


よし、必要な情報が取り出せた。

幸先がいい。


「そうか、やっぱりアイテム袋が一番か~」

「ですね。でも、安いモノでも金貨1枚ですし、お金が溜まるまでは大きい鞄ですね」

「安物で金貨1枚か、それでどれぐらい入るんだろうな」

「えーと、金貨1枚のアイテム袋はMPの総量に応じて変わるらしいです」

「MPの総量?」

「はい、1MPで1キロって聞いたことがあります。でも冒険者でもない限りMPが上がることはそうそうないですから使えないですよね」

「どうして?」

「どうしてって、一般人はMPがあって10前後ですから。10キロ運ぶには確かに便利かもしれませんけど、10キロを運ぶ為に金貨1枚はちょっと。金貨5枚で200キロ運べるアイテム鞄がありますから」

「なるほどな、しかし5枚で200キロか、それを使えば商売でかなり稼げるんじゃないか?」

「うーん、どうでしょう。確かに200キロって多く聞こえますけど元が鞄ですからね。大きいモノは入れられませんから、樽とか小麦を沢山入れた袋は無理ですから、あまり使ってる人はいないみたいです。盗賊に襲われたら大量に無くなりますから。そのままの大きさの方がいいみたいです」


そういう事か、失くした時のリスクが大きくなるのか。

守るにしても鞄一個に山ほど大量に入ってるのを、一個でも取られれば大損害。

それなら、ドラッドのおっさんみたいにそのまま載せたほうが、安全ってことか。

魔物や盗賊がいる世界だし、安全をとったわけだ。


俺はMPが8000はあるから8000キロ、8トン。金貨1枚だし、明日買いに行こう。


「しかしユーリィは物知りなんだな。家が商売でもやってるのか?」

「あ、はい。……その、アイテム鞄を活用しようとして、失敗しました。お父さんが……」

「すまん」


地雷でした、思いっきり地雷でした。


「で、でも大丈夫ですよ。借金はお姉ちゃんが奴隷になって返せましたし!! お父さんも真面目に働いていますから」


重い、重すぎる。

いやまて、奴隷になってお金を得るのは普通なのか?


「私が早くお金を溜めて、お姉ちゃんを買い戻すんです!!」


アカン、目から涙が……。

でも姉を買い戻すか……トンデモな額なんだろうな。

聞くのが怖い。

でも、ある意味納得だな。

短期間でお金を稼ぎたいから冒険者か、いや学校だけど、頑張ればそれなりに稼げる。

普通に働くよりは稼ぎはいいだろう。

腕さえよければ。


「その、頑張れ。なにかできることがあれば言ってくれ」

「はい。ありがとうございます」


健気な子や……。


それからは趣味など、軽い雑談をして、食事を終えて部屋に戻った。



「奴隷ね……。この世界は厳しいな。田中先輩がいってたっけ、状況はしっかり把握しろ。適応できなければいけない場合もあるって。これがこの世界の現実。奴隷が普通にまかり通る世の中。俺一人が声を上げてもたかが知れてる。無茶をすれば目をつけられる。下手な正義感…俺の世界の常識を押し付けるなってことか」


ベットでごろりと転がりながら、そんな事を考える。

まだ初日だ。

そうか、初日だったのか。

俺は幸運らしい、普通こんな遭難なら、宿を取れることだって稀だろう。

現状に文句を言っても何も変わらないか。


「異世界なんだし、適当に楽しみながらじゃないと、精神が持たないか」


時計を見る。

思ったより時間が進んでる。

もうすぐ21時といったところか。

ユーリィと話し込んだせいだな。

情報はそれなりにもらえたし、悪い事ではない。

彼女の邪魔にならないなら今後もいい付き合いをしていけたらいいものだ。


「そう言えば風呂は無いんだったよな。中庭に井戸があるからそっちでか……」


日本人にはここがキツイかもな。


「タオル、タオルっと……」


購買で買っていたタオルをもってとりあえず体だけでも拭くか。

衛生面はなんとか考えないとな。

石鹸はここでは嗜好品みたいだし、ゲームに石鹸なんてあったか?

無いなら、お約束の内政チート関連で作ってみるしかないな。


そんな事を考えながら中庭の井戸にたどり着くと変な光景が待っていた。


「あ、タイキさん」

「あら? 貴方も体を拭きに?」


両隣の部屋の住人が全裸で水を浴びていた。

ここまで堂々とされると、なんだがなー。

いいもん見た気がするのに、変な気もおきねーや。

しかし、そうか中世ヨーロッパならこんなもんか。

いい所の人はともかく、普通の人に風呂なんて無いし、こういう風にするのが一番か。


「ああ、しかし二人とも立派な体つきだな。綺麗だよ」


適当に御世辞を言っておく。

なんつーか、このままコメントをしないのもあれ何で一応言っておく。


「あ、ありがとうございます!!」

「あらどうも」


ユーリィは顔を真っ赤にしてお礼を言ってくる。

対照的にお嬢さんの方は言われ慣れているのか、簡単に返してくる。


さて、そんな事はいいか。

さっさと俺もタオル濡らして部屋に戻ろう。

よくよくみると、多くは無いがそれなりに、全裸で水浴びをしている人がいる。

男も女性も関係なく。


「ああ、そう言えば自己紹介がまだでしたわね。わたくし、ローリッヒ・クワイアといいます」


全裸のまま巨乳を揺らしながら接近してくる。


「どうも。俺はタイキだ。よろしくローリッヒ」


ローリッヒの手を握り返して挨拶をする。

が、何かいけなかったのが目を丸くしている。


「何か問題があったか?」

「いえ、家名を聞いても驚かないのですね」

「ああ、田舎者でな。そこら辺はよくわからないんだ。すまん。家名で呼んだ方がいいのか?」

「いいえ、お気になさらずに。ここにいる以上只の冒険者見習いですから。寧ろタイキの様な扱いがいいですわね。皆さん私をさけますのよ」


ああ、下手に無礼を働いて、クビちょっぱんは嫌だろうからな。


「それは仕方がない。が、まあ俺はこのままの姿勢で行くから気軽に話しかけてくれ」

「ありがとう。なかなか面白いわねタイキ」

「どうだろうな、只の田舎者だからと思うぞ」


そんな風にローリッヒと話しているとユーリィが桶に水を汲んでこちらにきた。

勿論こっちも全裸だ。


「タイキさんお水ですよ」

「っと、ありがとう」

「いえいえ」


手持ちのタオルを水につけて絞る。

これでヘアで体を拭けばいいかな。


「じゃ、俺はお先に」

「え?」

「あら、タイキも水を浴びに来たのでは?」


誰もいないならそうしてたんだが、これがここの普通なら俺はタオル濡らして部屋で体を拭く日々になりそうだよ。

人の裸を見るのも、見られるもの慣れない。

ここの人からすれがここは公衆浴場みたいな感じなんだろうが。


「悪いな、可愛いく美人な子が目の前に二人もいるからな。襲ってしまいそうなんだよ。そんな事すると捕まるしな、二人にそんな事したくない。ということで、俺は部屋に戻る」

「お、お、襲う!? わ、私をですか!!」

「ふふっ、私を襲うですか。そんな事面と向かって言ったのはタイキが初めてですよ。試してほしい反面、タイキを衛兵に引き渡して打ち首にするのは勿体ないですから、諦めましょう」


おいおい、この町は女性を襲ったら打ち首ですか。

まあ、それぐらいしないとこの場は乱れに乱れてるだろうからな。


そんな事があって、さっさと部屋に戻った俺は体を拭いて一息つく。

良いモノは見れた。

しかし、精神的にまだ追いついてないらしい。

まだ、日本と比べて不満が自然とこみ上げてくる。


「初日だし、仕方ないか」


体も慣れない事をして疲れている。

今日はもう寝るか。


そう思ってベットに潜り込む。

そうすると簡単に意識は落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ