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のんびり回る異世界道中  作者: 雪だるま
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一階層:気が付けば異世界へ

気が付けば異世界へ






「んあ? どこだここ?」


俺は気が付けば、草原で転がっていた。

辺りを見回しても山もみえぬ平原が広がるばかり。


「……日本かここ?」


辺りを見回しても、山一つ見えない場所なんて日本に存在したか?

いや、見えないことはないけど、青みがかってるから距離は相当だろう。

丘は幾つかみえるが、あれを山と言うのはな……。

そんな広大な平地は日本にないのだ。

あるとすれば外国、ヨーロッ○とか、アメリ○とか?


「…どうしたもんか……」


とりあえず、自分の状況を確認してみる。

服装はなぜか外着。

あれー、俺の記憶が確かなら、大学から帰って寝てたはずなんだけどな。

ありがたいことに、スマホ、ノート、筆記用具、携帯ゲーム、ライターと入っている鞄も一緒だ。

財布と家の鍵はあるけど…何かを買おうにも、お金が使えるかわからないし、鍵なんて家で使うものだしな……。


「あ、そうだ。スマホ電波オフにしないと……」


慌てて俺はスマホの電波をオフにする。

携帯電話は、電波が届かないところに置いておくと、繋がる回線を探すために電力を大幅に使ってしまう特徴がある。

だから、電波をオフ。

飛行機内モードでもいいけど、そうすれば電気の消費が抑えられるのだ。

遭難した時は覚えておくといいと、先輩の鳥野さんに言われたのを思い出した。

お互いオタクなので、アホな談義をしたもんだ。


「しかし…実際役に立ってもあまり嬉しくねえよ……」


草原の中にある岩に座り込み、とりあえず頭の中を更に整理する。

ええっと、こういう時の行動は……。

あ、そうだ。自分の名前とかを言うんだっけ?


「俺の名前は、本条ほんじょう 大輝たいき。今年で20のぴちぴちの大学生」


うん、自分でそう言葉にするとなんとなく落ちついてくる。

確か自分で言葉を発することで、実感が持ててくるんだっけ?


「しかし、自分で言っててもぴちぴちはねーわ。でも、冷静になってくるな」


後半のギャグもそうだ。

あえて冗談をいって自分でツッコム。

それを自覚するのが大事なんだと、これを言えないとか、言っても取り乱すなら、落ち着いてないって証拠らしい。


お蔭で今自分が取るべき行動が見えてきた。

・まずは何処へ向かうべきか 解:人のいる所

・そのためには何をするべきか 解:自分が何処にいるかを確認、人がいそうな場所への移動

・移動をするために必要なモノは 解:自分の体力

・体力を維持するためには 解:食料、水


「……食料は何も持ってないわ。うーん、下手に動いていいものか……」


辺りに人が、民家があるとは限らないか。

それならまずは水場だな。

そう、人間生きていくために一番必要なのは水分。

いや、食料も大事だけど、大体食料は一週間、水は3日摂取しなければ死に至るらしい。

水場を見つければ、魚とかもいるから、必然的に食料も見つかるってことだ。


「運よく人が見つかればいいんだけどな……。あ、でも言葉か…英語圏だといいんだが、それ以外は身振り手振りだな」


そうやって、岩から腰をあげて、何処に水がありそうか辺りを見回す。

遠めだが、森がある。

日本の森みたいに山に木が生い茂っているのではなく、草原の中に木が生えている場所があるだけ。

真面目に日本じゃねーな。


「しかし、あれだ。外国なのはいいとして、これが異世界だったら面白いのにな」


歩いてそうつぶやく。

そう、なんでここにいるかは分からないが、異世界ならまあ許そう。

それなりに楽しめそうだし、帰る方法を探すだけでも一冒険だ。

なーんてありえないよな。

そんな事を思いつつ、ブラブラと見える森に足を進める。


運がいいのか、そうやって森を目指していると、草原の真ん中に、道ができてる。

獣道ではなく、人工的なものだ。

車と言われるとなにか違う気もするが、その場所だけ、草が抜かれて、地面がむき出しになり道が左右に伸びている。

さて、どうしたものか、このまま道なりに進んでみるか?

それとも、最初の通り、目の前に見える森に行ってみるか?


「んー。道なりに行ってすぐ民家とか見えるのは日本ぐらいのもんだからな……森に行って水を確保するのが先だな」


とりあえず、一面草原ですぐ人と会えそうにないので、まずは水の確保を優先しよう。

森の中に川があるとは限らないが、朝露などで森の方が水分をとりやすい。

そして、森の方が動物もいるだろうと思って森へ足を進める。

道が見える位置で陣取っていれば、いつか人が通るだろう。

それまで何とかしのげればいい。


「さて、ここら辺の木に目印でもつけて、水場でも探すか」


適当に武器代わりになる木の棒を見つけて、木の幹に叩きつける。


「うし、こんなもんか」


木の幹がはがれ、傷がつく。

これで目印になるし、木の棒の強度も確認できた。

森の奥に行くなら、木に目印をつけていかないと遭難確実だしな。


「…ナイフでもあれば楽だったんだが。まあ、意味もなく刃物持ち歩くわけにもいかなかったしな…」


筆記用具はあるがカッターなども入れていない。

大学の一般学部だしな、不必要な刃物を持ち歩く理由もないしな。

しかし、考えれば考える程、俺がここにいるのは不可解だ。

俺が酔っぱらって、ここまで来たって回答が一応筋が通るが、そりゃ…ミラクルだわ。


と、今は水の確保と。

仕方なく、森の中へ足を進める。

まあ、誰も近寄っていないのか、背の高い草が生い茂っている。

道を確保するために木の棒を振り、草を払いながら前へ進む。

わくわくするな。

この草を払い、森を進む感覚。

子供の頃、RPGとかテレビのサバイバルをみて憧れたもんんだ。

ある程度歳を重ねると、こういう事をすること自体が不毛と思えてやらなくなるんだが、こういう機会でやってみると案外楽しい。


「これで、敵モンスターでも出てくればリアルRPGだな」


少し気分が高揚してそんな事を口走る。

でも、そんな事はなく、ひたすら森を歩き回る。

そして、いい加減疲れてくる。


「……いったん戻るか。ここら辺の地理も詳しくないし、下手に奥に進むのは危険だな」


一応歩き回った道は覚えているつもりだが、いつの間にか迷ってましたは勘弁願いたい。

確実に地理を覚えるまで、下手な深入りはやめておくべきだろう。


「水が見つかったのはまあありがたいか……」


そう、実は歩き回った際、川は無かったが湧き水が出ている個所を見つけた。

恐る恐るだが、その水を飲んで安全と確認できたのはありがたい。

まあ、一週間は体の調子を見ておかないといけないけどな。

水を飲んで一時間はたってるけど、俺の体に異変はなし。

直接的な体に害になるような物は入っていないらしい。

これで死ぬなら、それまでの事だっただけだしな。


その湧き水がある位置は大体森の入口から3分程の場所。

案外近かった。

実際見つけるまでには30分近くかかったけどな。

一緒に食料も探しては見たが、果物らしいものはあったが、食べてみる勇気はない。

知識にある食べ物は今の所ないのだ。


「鶏でもいればな……」


じいちゃんが鶏を飼っていて、卵を産ませたり、絞めたりしてたので、命を奪うことに忌避はない。

寧ろそんな事をためらっていて、動けなくなる方が馬鹿だろう。

なんでか知らないが、動物は森にいる間は見なかった。

運が悪かったのだろう。

この規模の森なら少なからず何かいるはずなのだが。


運がいいのは未だに腹は減っていないこと。

少し休憩して、あとでまた探しにいこう。

動けなくなる前に、何か見つけないとな。

最悪、毒かもしれない果物を食べる羽目になる。

動物がいれば、その果物をくわせて、毒があるか判断できるんだが。

その動物がその毒に対して、抗体をもってたなんて時は運が悪かったと思って死ぬわ。


「いい天気だねー。暑くもなくいい感じだ……ってあれ。日本は夏だったはずだが……」


ますます、ここがどこかわからなくなってきたぞ。

中南米なら暑いはずだし、日本より北なら……まだこの環境は納得できるか?

確かにいえることは、ここは日本でない可能性がかなり高い。

グンマーとかならまだ納得…できねーよな。

群馬県民の皆さまごめんなさい。

少し現実逃避したかったんです。


「しかし、水は何とかできたし。あとは寝床か……適当に枝でも集めて、横になるスペースぐらいは……」


そんな事を考えつつ、道がある方向を見つめている。

何にも変化はなし。

軽く10分は見てるんだが、ここまで人通りがないか……。

こりゃ、真面目に民家とかがあるのは当分先の場所だな。

下手に動かなくて正解だな。


「さて、そろそろ動くか」


いい加減なんにも通らないし、休憩も十分にとった。

まずは食料でも探そうかね。


そうやって、腰を上げた時何か聞こえた気がした。

そう、何か人の声の様な。


「空耳か?」


周りを見回しても、それらしい人影はない。

いや、道なりの奥に何かある。


「……馬車か? なんともレトロな」


目に映るのは馬車。

二頭立てのなにか荷物を沢山入りそうな車を引いている。

なんでやねん。

自動車使えや。


「ま、いいか。とりあえず、人は見つけられた。馬車の方が声かけても聞こえるだろしいいか」


あんまり疑問におもわず、そのまま馬車へと向かう。

丁度、こちらに向かってくるので、待ち構えているだけでよかった。


「ん? なんかおかしくね?」


何か物凄い速度で走ってる気がする。

こう荷馬車ってのんびりゆっくりって気がするんだが、あんな風に馬が駆けてるもんなのか?


「おーい、止まってくれ!! 近くの町まで、いや電話がある所まで連れってくれー!!」


まあ、そんな事より、自分の事が大事だ。

大声と手を振り自分の事をアピールする。

しかし、向こうはこちらに気が付いた様子がなく、速度も緩めない。

いや、見えてるはずなんだがな。


「おーい!! 聞こえてますかーー!!」


再度大きく手を振り、声を張り上げる。


「っつ、逃げろ!! 出てくるな!!」


御者の肥えたおっさんがそう叫ぶ。

お、日本語話せるのか?

見た感じ完全に西洋人なんだが。

で、なんで出てくるな?


「ま、魔物が!! 魔物が来ている!! 殺されるぞ!! 茂みに逃げ込め!!」

「は?」


何言ってんだこのおっさん。

魔物?

殺される?

なんだ、カバかワニでもいるのか?


俺はおっさんの言った言葉がよくわからなくてその場で立ち止まっていると、後ろから変な集団が馬車を追いかけている。

数は5・6人?

えーと、腰ミノ一つで棍棒やらナイフやらもった全身緑色の小柄な人?


「……ゴブリン?」


うん、俺の知識の中ではあれはたしかにゴブリンと言われる魔物だ。

……魔物?

うわ、やべ、コレ殺されるんじゃね!?


「君!! 逃げろ!!」


おっさんは通り過ぎながら忠告してくれたんだが……。


ガゴッ


そんな鈍い音がして、荷馬車が横転する。

盛大に荷物が飛び散る。


「うわわわぁぁあぁぁーー!!」


おっさんも転がり落ちる。


「おい、おっさん大丈夫か!?」


咄嗟に、おっさんを助け起こす。


「うっ、だ、大丈夫だ。……そ、それより、ま、魔物が」

「ど、どうするんだ!? なにか武器はないのか!? こ、このままじゃやられちまうぞ!!」


ツッコミは一旦置いておく、目の前に迫るゴブリン? が偽物とは思えない。

逃げてたいが、このおっさんを見捨てれば後味悪いし、なにより、ようやく会えた人だ。


「い、一応、護身用の剣なら……」


そういっておっさんは腰に履いていた剣を俺に渡す。

おいおい、せめて槍とかないのか、リーチが短い武器で多人数戦かよ……。

おちつけ、田中さんが言ってた。

一番大事なのは、冷静でいることだ。

そうすれば、無謀な事と、生き残る道の判断がつくって。


「「「げひょ、ぎょひぃ!!」」」


うわー、変な鳴き声上げてきてるよ。

しかし、人の形をした生き物を殺せるのか?


『まあ、そうそうなれることじゃねーよ。でもお前って鶏とか絞めてたんだろ? なら、他の人よりましなはずだ。ま、できなくても不思議じゃないし、悪い事でもない。でもな……』


田中さんは俺にこういった。


『やらなきゃ死ぬときもあるからな。お前が選べ』


もと傭兵の田中さんの言葉、重いな。

けど、それが今このときか。

おっさんから受け取った剣を握りしめる。


「…ふう」


落ち着け。

今やるべきは、目の前のゴブリンを倒す…いや、殺すことだ。

そうしないと俺も殺されるし、おっさんを助けないと、これからどうしていいのかわからない。


『いいか、多人数戦では動きを止めるな。一瞬でも動きを止めたら蜂の巣になると思え。ためらうな、一瞬でも悩むとその分動作が遅れる。いいか、なるべく一対一の状況を作り出せ。多人数戦で不味いのは連携を取られることだ。だから最速で仕留めていけ』


俺は駆けだす。

目の前の敵はゴブリンが7匹。

一匹足が速いのか、一つとびぬけてこちらに走ってくる。


「ぎいぃいぃぃいい!!」


俺に狙いを定め、ナイフを振り上げてこちらへ駆け出してくる。


「やってやろうじゃねぇか!!」


俺も覚悟を決めて、今まさにナイフを振り下ろそうとしているゴブリンへ、剣を走らせる。

こっちの方が出が早かった。


スパン


肉を切り裂く感触が剣から腕に伝わる。


ドサッ ゴロン


首と胴が分かれて地面に落ちる。

緑色の体液が辺り広がる。


止まるな。


あと、6匹。


思った以上に剣の切れ味がいいのか、ゴブリンが脆いのかしらないが、攻撃が思ったように通る。

俺はすでにゴブリンの首が空中を舞った瞬間に、前へと踏み出していた。


「「ぎょひ!?」」


先頭についてきていたゴブリン2匹。

武器はどっちとも棍棒、棘付きで当たったら痛いな。

だが武器が重いのか、驚いて反応できないのか知らないが、武器を構え動作さえしていない。


全速力で駆け寄る。


「なろっ!!」


すれ違いざまに、一匹に一閃。

こちらは胴体を深く切り裂く。

止まらず、即座にその場所を離脱。


ドゴッ


今いた場所にもう一匹からの棍棒が振り下ろされる。

あ、あぶねー。

しかし、相手は避けられたのが以外だったのか、武器をまだ降ろしたままだ。

絶好のチャンス。

一気に駆け寄って、武器を持っている腕を切り飛ばす。

返す刃で胴体を一閃。


『いいか、行動不能に追い込んだら、次にいけ。一々止めを刺している時間も惜しい場合がある。あとでゆっくりやればいい。まずは安全を確保しろ』


のこり4匹。

なぜか相手を俺を見て後ずさりしている。

ああ、怖がっているのか。

でも、加減はしない。

好都合だ。


ゴブリン達は連携をとるのではなく、即座に背中を見せて逃げ出した。

だが、それを見逃す理由もない。


「逃がすかよ!!」


とりあえず、怖がって体が思うように動かないのか、あっさり追いついて、一匹を背中からバッサリ切り捨てる。

もう一匹も続けて頭に横殴りに一閃で頭部が半分になって宙を舞う。


最後の一匹も追いかけて殺そうと思ったのだが、草原の中に逃げ込んだ。

これは、あまり良くないな。

草原の中は見通しが良くない、相手は小柄、迂闊に入るのは危険だな。


『まぐれで勝っても調子にのるな。いや、実力で勝ってもだ。無理に追うな。自分とよく相談しろ。目的が敵の殲滅じゃないのなら、追う意味はほぼない。ま、情報が欲しいときはしかたないだろうがな、返り討ちに会いましたってのは馬鹿だぞ』


落ち着け、俺の目的は俺の命の安全と、おっさんの安全の確保だ。

逃げ出したのなら、それで目的は達成できる。

無理をするな。


「……ふう」


行動不能にしたゴブリンが、また動き出さないとも限らない。

ココでおっさんから離れるのはダメだな。

俺は追うのをやめて、転がっているゴブリンに止めを刺しながらおっさんの所へ戻った。


「おっさん大丈夫か?」

「お、おお!! 君は冒険者かね!! た、助かった!! ありがとう!! 本当にありがとう!!」


おっさんは俺が声をかけると、飛び上がり、手を握って感謝の言葉を述べる。


「お、おちついてくれ。色々聞きたいんだがいいか?」

「あ、ああ。すまない、何が聞きたいんだ?」

「えーと…」


そうやって、話を聞こうかと思ったが、散乱してる荷物をみて、これでは、話を聞いても進むに進めないと思いこう切り出す。


「その前に、荷物とか、馬車の修理をしよう。一匹取り逃がした。あれがどう動くかわからないが、応援を連れてきたら面倒だ。馬はどうだ? あの横転で怪我とかは?」

「そ、そうだな。いくら凄腕冒険者の君がいても安全ではない。手早く荷物を集めて、修理できるかみてみるよ」

「あー、荷物は俺が集めるから、馬車が修理できるかどうか確認してくれ。乗せる時に荷物は整理すればいいしな」

「何から何まですまない。わしは君の言う通り馬車の様子をみてくるよ」


俺とおっさんはすぐに行動に取り掛かる。

俺は馬車の近くに荷物を集め、おっさんは馬の様子や、馬車の状態を調べている。


「……色々な物があるけど。なんだろうな、この大荷物。なんか食料品とか衣類が多いが」


まあ、色々あるんだろう。

手早く集めて、直ぐに馬車に乗せられるようにしないとな。

せっせと俺は荷物を集める。


「おーい」


ある程度、荷物を集めているとおっさんから声をかけられる。

修理できるか、荷物を捨てていくか、判断がついたか?


「どう?」

「ああ、聞いてくれ。奇跡的に損傷は横転した時に天幕が破れたぐらいだ。転倒した理由はそこの岩に速度を上げて乗ってしまったのが原因だろう。慌ててたからね」

「それはよかった。馬の方は?」

「馬の方も、馬車が転倒しただけで、馬事態に被害はなかった。二頭とも無事だよ。あとは、横転した馬車を戻して、荷物を載せればすぐにでも動ける」

「そうか、それならさっさと馬車をおこしちゃおう。二人でいけるか?」

「なんとかいけるだろう。君は見かけによらず強いしな」


強いからと言って力があるわけじゃないんだが、まあ水を差す場面でもないから大人しくしていよう。

そのまま馬車に近寄り、二人で一斉に……


「「せーの!!」」


ぬぐぐぐっ、流石に重いなっ!!

だけど…いける。


ズンッ


ようやく馬車を元に戻せた。


「さあ、さっさと荷物を積んで、移動しよう。おっさんは馬をつないでくれ」

「ああ、馬をつないだらすぐに手伝いにいくよ」


そのあとは問題なく荷物を積んで移動を開始した。



「いやー、助かった。あんな所に魔物がでるとは、きっと近くにダンジョンが出現したに違いない。町についたら、領主様に報告しないとな」

「ダンジョン?」

「ん? 君は冒険者じゃないのか?」

「あ、いや、なんといえばいいのか……」


今までの状況から、ここが地球ではなさそうなのだ。

この場所の文化がどうなっているかは分からないが、下手によそ者だと言えばどうなるかわからない。

どうするべきか……。


「ああ、わかったぞ。君はまだ若い。町にある冒険者学校の入学希望者だな?」

「そ、そうなんだ。ちょっと道に迷って、そこに丁度……おっさん、と名前は?」

「と、これは失礼したな。私の名前はドラッドだ。ラキア町で商店を営んでいる」

「俺はたいきだ。ドラッドのおっさんが言う通り、冒険者学校の入学予定だが……」

「だが? どうしたんだ?」

「いや、噂だけで来たんで、何が入学に必要かわからないんだ。何か知らないか?」


うっし、すごい自然な言い回しだった。

疑問を持たれる様なドモリもなかった。

俺スゲー!!

鳥野先輩みたいに息を吸って吐くように嘘が出る様になるのはまだまだ遠そうだがな。


「なるほどな。確か入学金が金貨1枚だったかな。変に安くはあるんだが、実際はダンジョンで実習をして素材を学園に売却、生徒たちは少しの報奨金で装備を整えるんだ。まあ、生活は保障されているが。でも、一月最低限の素材売却をこなせなければ、退学になるようになっている。あれだ、金持ちのお坊ちゃんやお嬢様がお遊びで、金で物を言わせないようにするためだな。完全な実力主義ということだ」


ふむふむ、下手に権力の横やりが無い、完全実力主義か、そうやって素材売却の一月でのノルマをつけて、冒険者としてやっていけるかを見極めているんだろう。

しかし、いい情報を聞いた。

金を溜めて冒険者学校にいこう。

そうすれば、なんとかこの世界でやっていけるだろう。

いや、この世界を楽しめるだろう。

おいおい、元の世界に戻る方法も探していこう。


「そうか…ドラッドさん。どこか働き口はないか? ちょっと手持ちが足りない。入学するために稼ぎたいんだが、どこかいい場所はないか?」


まあ、力仕事ぐらいならやれるだろう。


「ふむ、どうだろう? タイキ君に私は助けてもらった。それのお礼として金貨3枚報酬を渡そうじゃないか」

「いいのか? 多少なりとも、商品に被害はでたんだろう?」

「そうだな。でも、下手すれば命を失っていた。君がもらうべき報酬にしては少ないと思うぞ?」

「そうなのか?」

「ああ、冒険者の卵ならよく知らなくても当然だが、先ほどのゴブリンだが、討伐報酬だけでも一匹銅貨2枚だ。そして、ゴブリンの魔石は一つで銅貨3枚だ。さっきは急いで場を離れてしまったが、6匹分の報酬は銀貨3枚だ。本来冒険者ギルドで依頼があってもっと報奨金は多いだろう。だから気にせずもらてくれ。まあ、うちの商店で買い物をしてくれると嬉しいがな」

「そうだな、ありがとく貰っとくよ。学校でも紹介しとく」

「タイキ君は話が分かるじゃないか、わっはっはっは!!」


そんな事を話ながら、細かいことも聞いてようやく町にたどり着いた。



町は俺が知っている町とはだいぶ違っていて、なんというか、RPGの町だ。

例えるなら、オブリビオ○、スカイリ○のイメージだな。

石造りがメインではあるが、ちゃんと木々も植えてあって見た目もいい。

門前には、門番らしき人物がいて人の出入りを確認しているようだ。


「ドラッドさんお帰りなさい。道中なにか問題はありませんでしたか?」

「ただいま。いや、このタイキ君がいなければ危ない所だった。ゴブリンが草原の方で出現してね」

「なんですって!?」

「ほら、これが証拠の品だ」

「本当だ。……ということはダンジョンがあの草原の近くで発生したのですか?」

「多分そうだろうな。私は商店に荷物を運び次第、領主様に話へ行くつもりだ」

「わかりました。よろしくお願いします。で、彼がドラッドさんが言っていたタイキ君ですか?」


そして、門番の人が俺に視線を向ける。


「ども、初めまして。縁あってドラッドさんを助けることになりましたタイキです。ここへは冒険者学校へ入学するために来ました」

「なるほど、ゴブリンを倒せるなら将来有望だな。この土地は他の国と違って、ダンジョンが多く、魔物が自然に発生しないんだ。ここまで旅をしていて、魔物が出なくて驚いただろう?」

「え、ええ」

「他国からすれば、ダンジョンが多くて危険と見られがちだが、そのおかげで他国の戦争に巻き込まれないし、ダンジョンの攻略に力を入れられる。それなりのメリットもあるんだ」


ふむ、話から察するに、他の土地、国では普通に魔物が大量発生するんだな。

そして、ダンジョンは他国から見れば魔物よりよっぽど危険な存在って感じだな。

侵略目標から外されるなんて。


「とりあえず、そこの水晶に手を置いてくれないか。他国はどうか知らないが、その水晶で職業とかLVを確認するんだ。盗賊が職業だからといって拘束はしないから安心してくれ、ダンジョンで攻略するには必要な職業だからね。まあ、ステータスを確認させてもらうことになると思うけどね」

「そ、そうですか」


ステータス? 職業? LV?

なんだ、そんなRPG要素がこの場所、世界にはあるのか?


「そんなに警戒しなくてもいいよ。ステータスは本当に大事な時にしか見せない物だってのは何処でも一緒だからね。万が一見ることになっても、こんな人通りの多い所ではやらないさ」


なるほど、ステータスは地球で言う個人情報見たいな感じか、やべー、うっかりその場でステータスって言うところだったよ。

と、ステータスを見る時はどうすればいいんだ?


「えーと、そういえば、ここら辺ではステータスを見る時はどういう風にするのが礼儀なんですか?」

「ああ、ステータスを見る時は儀式や作法をもってするところもあるからね。こちらでは普通に念じてステータスって言って大丈夫だよ」


ふむふむ、念じて言うだけね。


「と、すまない。手を置いてもらえるかな?」

「あ、はい」


反射的に水晶に手を乗せる。

そうすると、空中にホログラムの様なものが浮かび、文字が書かれている。

……なぜだ、見たことない文字なのに読める。


「へー、流石ゴブリンを倒しただけはあるんだね。剣士LV15か、下手すればもう冒険者になっていてもおかしくないね。それでもこの学校にくるって事はダンジョン専門の冒険者を目指してかい?」

「はい?」


なんだ?

ダンジョン専門?

冒険者にはそんな区分があるのか?

色々わからないことが多いな。

真面目に学校に行きながらこの世界の常識を覚えないと。


「えーと。ちょっと迷ってるんでいい機会かなと」

「なるほどな。それなら学校でいい道を選ぶことを祈るよ。私はこの町の衛兵でサッツィだ。何かあれば遠慮なく言ってくれ。基本的に門番だから、ここに来ればいると思う」

「ありがとうごさいます」


うん、この人はいい人だ。

頼りにさせてもらおう。


「と、すまない。ここで長話してもアレだな。こほん、では門番の仕事をこなすか」

「門番の仕事ってちゃんとしてたんじゃ?」


サッツィさんはそのまま俺に敬礼をして。



「ラキアの町へようこそ!!」



定番のあいさつをしてくれた。



「よろしくお願いします」



そう言って俺は門をくぐった。




異世界初日としては上々だろう。

というわけで、どこかの後輩のお話です。

誰かさん達の訓示により、精神的にもチート気味です。

でものんびり生きたい主人公。

無理かもね!!

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