8話 「好感と嫌悪」
「ようこそ第七部隊へ!僕がたいちょーのドナーだよ!みんなよろしくね!」
俺たちが連れられた先は第七部隊の会議室だった。そこにいたのは鎧を纏う騎士が8人とラフな格好をした男女が5人ほど
そして俺たち3人と体長の4人を合わせて17人の人間がそこにいた。まぁ、そんな事より……。
隊長の胸でけぇ。
おっと、みんなのクールなトウマのイメージ像を壊してしまって悪いな。
「そんなイメージない」
「だぁーっとけ」
「君が噂の背中背負いの騎士かな?」
「なんだ?俺はそんなあだ名まで用意されてんのか?」
「おい、新入り」
と、入り口付近にいた男が殺気をむんむん出しながら俺に忠告をする。
「言葉には気を付けろよ?」
「おいおい?脅しのつもりか?そんなので怖いよぉーって言うのは子供までだぜ?」
「怖くない」
「こいつもこう言ってるし、あんた怒っても怖くなさそうだし保育園の園長さんでもなれば?」
まぁこいつは子供じゃないけどな。
「舐めやがって……殺してやる!!」
男は腰に差していた鉄剣を抜刀しそれを俺の首筋に当てる。睨み合う俺と男。一歩でも動けば俺の首が飛ぶそんな間際。
「どうした?殺さないのか?」
「何故避けなかった」
「殺意こそ漏れてるがあんた腕が震えてるぜ?殺し向いてないな、こんなんじゃあ脅しにすらならねぇーよ」
「っ!!舐め……」
男がそう殺意を持った視線で俺を睨む。俺はその視線をその倍以上の殺意を持って睨み返す。
「ちっ!!」
「殺すんじゃなかったのか?」
「気が変わっただけだ……」
「こらこらー!同じ部隊なんだから仲良くしなきゃ!」
と、豊満な胸が揺れる。
あれをおかずに久々に抜くか?いや、それなら手っ取り早くその辺の騎士を襲った方がいいな。久々に股間が疼くぜ。
「えい」
突然、全身に奔る鋭いその痛みは皮膚を思いっきり抓られたからだ。
「いだだだっ!!我何すんじゃごるぁ!」
「トウマ気持ち悪い顔してた」
「俺のような美男子はどんな顔をしても許されるんだよ」
「トウマブサイク」
「いい度胸しとるの我」
「貴様らのコントはどうでもいい!!すいません!!新兵のラハールです!!」
「こいつ童貞」
「貴様は僕を舐めているのかぁああああああ!!!」
「んだよ事実を述べたまでだろ?」
「何処の世界に自己紹介で童貞を名乗る世界がある」
「this here」
「そんな世界は存在しない!!」
「え?なに?卒業してんの?リンとは一発かましたのか?」
「……殺す!!」
と、ラハールは右手を強く握りしめ迷いなく俺に振り下ろした。俺はそれを敢えて受けて吹き飛び、弱さを象徴する。ちなみに夜はちゃっかり降りている。
運がいいことはラハールがそこまで弱くないという事だ。
「ミオンを侮辱した事をあの世で後悔するがいい!!」
あの世界の拳に比べればこいつの拳は軽すぎる。
「こらこらぁ!!同じ部隊だから仲良くって言ってるでしょ!!」
またも豊満な胸が揺れる。これほどの胸、あの世界でもあまり拝めなかったぞ?Eは軽くあると見た……。
「隊長!!僕はこの男が嫌いです!!よって仲良くできません!!こいつを別の部隊にするか僕を別の部隊に配属してくださいっ!!」
「はっ!てめぇーは気に入ったぜ。隊長、同じく俺もこいつが嫌いだ。新入りの癖に調子に乗り過ぎだ」
「おいおい、ここぞとばかりの便乗してきやがる先輩兵士って……」
「いきなり険悪だなぁ……それじゃあそんな嫌われ者の君どうぞ自己紹介!!」
「トウマだ。童貞は卒業してる」
「わぁー!!どうてもいいからぁ!!どうして君はそう嫌われそうな事をカミングアウトするの!?」
「いや白黒は大事だろ?そこにいるラハールくんに勝っている部分と言えるだろう」
「貴様ぁああ!!僕をどれだけ侮辱すれば気が済むんだ!!」
「私、夜」
「へぇー夜ちゃんって名前なの?」
「巨乳死ね」
「え?」
「虚言癖も困ったもんだぜ」
俺はそう言いながら夜の頭をぐりぐりする。
「痛い」
「俺の株をこれ以上下げるな、というか上げろ」
「わかった」
「よし!もう一度行け!」
「夜。トウマに愛されてすくすく育ってる」
株が最悪に下がった。
「このロリコンがぁあああ!!!」
「ちげぇーよ!!てめぇのせいで変態のレッテルを張られちまうだろうが!」
「事実」
「だぁああああ!!」
「まさか…トウマくん避妊しなかったの!?」
「こんなイケメンな俺が子持ちなわけないだろ」
「こんなに若そうなのに苦労してるのね……」
「聞けよ隊長」
ちなみに周囲の兵士からはかなり奇怪な目線に当てられている。というかいちゃもん先輩とラハールがもう意気投合して話してるじゃねぇーか……、明らかに俺に対しての愚痴だろあれ。
「それじゃあ最後の女の子お願い!」
「フウ。……処女」
おおー!と男の歓声が漏れる。この女、中々肝が備わってやがる。
「はぁー誰かさんのせいで変態的な自己紹介になっちゃったよ…」
「俺のせいか?」
「そうだよ!?」
「今年の新兵は期待できるだろ」
「僕としてはこんな度胸よりも強さが欲しかったなぁ……」
それは刹那の出来事。
気配に敏感でなければ気付けないほど微量のものだ。だが、一瞬。
―――――何処からか威圧的な殺意が背中に背負われてる魔王に向けられた。
そして背負っている俺がそれを感じ取れるほど、その一瞬の殺意は大きかった。