5話 「最終試験」
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改稿作業完了
「いい具合に奇数になったな」
そう歩いている途中、不敵に男はそう言葉を漏らした。
「改めて自己紹介をさせてもらう、私はアスラ・リード。この国の十二部隊の第二部隊の隊長兼この国の参謀を兼ねている者だ」
そうアスラはその不敵な笑みを見せる。こいつの見た目から感じ取れるのは殺意に近い狂気、だがそれを敢えて隠しているような何かも感じ取れる。
つまりまるで読めないでいた。恐らく殴り合いになれば勝てるが、できれば敵に回したくない。それがアスラに対する俺の想いだった。
「第三試験で計るのは『情』だ」
「おいおい、ここまで絞っておいてさらに絞るのかよ!?去年は120人近くが兵士になったんだぞ!?」
と、遂に不満を漏らして抗議する志願者の男。
「去年の兵士が今。どれだけここにいると思う?」
「は?そんなの70人くらいじゃ……」
「たったの13人だ。数人が殺されそれ以外は自主的にやめた」
「なっ!?」
「そう覚悟だ。彼らには覚悟が備わっていなかった。だから今年度より覚悟を問う事にしたのだよ。安心した前、ここにいる君たちはもう兵士になったような者だ。それでは第三試験いや最終試験の内容を発表する」
アスラは淡々と言葉を続ける。
「この質問にYESの者は私の右へ、NOと答える者は左へ来なさい。絶体絶命の危機の中、仲間が重傷を負う、君だけで逃げれば確実に助かるが仲間を担いで逃げれば五分五分。その仲間は君にとって掛け替えのない人だ。さて、君は助ける?助けない?」
そういうアスラの目は不敵に笑っているようだった。ちっ、こういう意図の読めない奴は好きじゃないな。
と、真っ先にアスラの右へ行く三つの影はリンとリューシュそして……。
「誰だ」
「ラハールだ!!もうこのノリ二回目だぞ!」
「そうだラハールだ」
その三人はアスラの右へ立つ。
「後、3分で答えなさい」
意図が読めたならその答えの方に行くのだが……。読めないとなりゃあもう自分の想いのままに行くしかねぇーな。
俺はゆっくりと歩き、アスラの左に立っていた。
俺以外に先程、薬物兵士の首を回した少女と愚痴を漏らした男が左に立っていた。
「全員いい具合に別れてくれたね」
助けないのは俺を含めて3人だけだった。
「それなら少数の方から聞かせてもらおう。そうだね、そこの幼女を背負った君」
俺かよ!
「ああー、そういう場面に直面したら必ず俺は自分を取るぜ、いや人としてその行動を取る。人間ってのは偽善な生物だ。誰かが大事と言おうが結局一番可愛いのは我が身」
「なら君はもし今その背負っている幼女を殺せと命令されればどうする?」
「殺してやるよ」
俺は魔王の夜の首を掴み絞める。そこで始めてアスラの表情が歪んだ。少しやってやった気分になる。
「私が悪かった。その手を離しなさい」
「ふん」
俺は魔王に掛けていた手を離す。
「いきなり何する」
「命令されたからな」
「睡眠妨害」
そっちかよ。一応、しなくていいって言われるまでは本気で殺す気だったんだけどな。
「少し調子が狂ったよ……まぁ、もう予定通り進めるとしよう。少し予想外だったがこの場にいる18人を本日より王国兵士と認める!!!」
「な……に?」
「どうしたんだい?不満そうだね?」
「当たり前だろ?何故、俺だけが質問を受けてこの二人も受けてないし、向こう側の奴らも受けてないんだよ!」
「そりゃあこっちが正解だからね」
「なんだと?」
てっきり答えなど存在しないものだと……。
「言ったろ?『情』のテストだと」
「………」
どうやら俺は考え過ぎたようだ。疑い深い性格も少し面倒だという事がわかった。
こうして俺は無事に兵士になる事ができたのだった。
だが、何故こちら側にいた俺たちも兵士になる事ができたんだ?奴はその意図を俺たちに、俺に話す事なく城の奥へ俺たちを誘導する。
☆
「………」
無表情だった男が新兵を見て傲慢な笑みを浮かべた事に新兵はともかく、トウマすらが気付いていなかった。
次回から兵士編に切り替わります!
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