4話 「第二試験」
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誘導された、城の中には10人の鎧を纏った騎士が立っていた。そういや、怒号を上げていたおっさんと人がいつの間にか変わっていた。
それにしても、どいつもこいつも騎士とは思えないほどの殺意や狂気が満ちてやがる……。マジでここの兵士なのかよ。少しでも油断すれば斬りかかって来そうだな。
「ここにいる10人は薬物を裏世界の人間と愚かにも交渉した兵士たちだ」
男がそう言うと兵士志願者は騒めく。それほどまでに裏世界の人間ってのは関わるだけでもやばいのか?そもそもそんな場所は一体どこにあるんだか……。
「おいリューシュ」
「ひぃ!?トウマくんそんな怖い目で睨まないでよ!」
「裏世界の人間と関わるってのはそんなにやばい事なのか?」
「貴様は世間を知らなさすぎだ」
聞いてもいないのに会話に割り込んでくる誰だっけ?
「お前誰?」
「ラハールだ!!ラハール・コバルトだっ!!」
「裏世界の人間と関わることは死罪に近い罰が与えられるわ。交渉なんて奴隷罪よ」
「そういう事だ」
何故こいつがドヤ顔なんだ。
「今からこの場にいる10人と殺し合いをしてもらう」
そう男が平然と言うとさらに辺りが騒ぎ始める。なんだなんだ?俺はこの男の意図がまるで読めなかった。
少し癇に障る男だった。
「兵士たるものの殺す覚悟を問いたい。もちろん殺さなくてもいい、瀕死にさえたり気絶でも構わん」
殺す覚悟ね……。改めて狂気に満ちた男を見渡す。
敵じゃないな。だが、ここで全員を俺一人で殺してしまうと問い詰めがめんどくさそうだ。何としても過去の人間である事を悟られてはいけない。
一人を瀕死くらいにして俺もある程度攻撃を受けるか…。本島の力量は組んでからじゃないとわからないが半分以下にセーブで事足りるだろう。
「但し、向こう側には君たち一人でも殺せば罪を免罪すると伝えてある。死にたくない者は今から引き返す事だ」
その一言でさらに騒めく志願者。
「ミオン、前に出るんじゃないぞ」
「冗談じゃないわ」
「なぁ?お前リンだろ?なんでミオンって」
「リン・ミオンだからよ」
「あっそう」
「なんだ?嫉妬か?僕だけが特別な名前で呼んでいるか嫉妬なのか!?」
「うぜぇーんだけど……」
「私が殺し合いの合図をし生き残った者を第三試験を受ける資格があるものとする」
男が釈然とした顔でそういうと数人が城から引き下がる。『死』に屈した奴らか……。一度屈した者は二度と立ち上がることはできない。
その事を俺はよく知っていた。
「ふむ、それでは残った23人で殺し合いを開始する。逃げ回るもよし、戦うもよし、だがこの10人が気絶もしくは死なない限りこの試験は終わらない」
「お母さん僕死ぬかも」
「リューシュお前……」
なんて情けない姿だ…。膝も震えてるし……。助ける義理はない。
「ぐーぐー」
「お前はこの狂気に当てられても起きないのな」
「起きてる」
「起きてるのね…………まぁ、しっかり首に掴まっとけよ」
「うん」
「締まってる締まってる!!ギブぎぶぅ!!締めすぎだごるぁ!!」
「開始…!!」
隠せなかってだろう狂気が解放され莫大な物となる。薬物敵殺意……あの場所ではよく見られたものだ。まさかこの世界でもう一度感じられるとはな。やはり、故意的な殺意とは違う背徳感を感じられる。
「俺が相手だぁ……あひゃひゃひゃ!!!」
俺の目の前には明らかに目が逝ってる男が立っていた。
「その背に背負ってる女を犯させろぉおおお!!!」
真っ直ぐ殴りかかってくる男の拳に迷いはない。それをあえて腹に受ける。
「クリーンヒットぉぉおおおお!!次いくぜぇええええ!!!あひゃひゃひゃ!!!」
「痒いねぇ」
「んなぁ!?うりゃぁああああああ!!」
「型はいいな。ちゃんとした護身術だ」
俺は男と拳を交える。男は頭と目が完全に逝ってるというのに的確な急所を突いてきていた。だが急所といっても正攻法な鳩尾や脹脛などだ。
「だが俺を倒そうというならば目を潰し、腕をへし折り足もへし折り動けなくしようとするんだな」
「うぁああああ!!!」
「おせぇ!!」
男の攻撃を敢えて受けながらも俺は隙だらけになった顎にアッパーを決める。その一撃で男はその場に倒れ、痙攣を起こし、立ち上がらなくなった。
「やっべ、顎砕けたかも」
だが殺してもいい男だったはずだ。ついつい、あの時代に向けられた殺意と似ていたから半分の力を出してしまった。
「やっぱり強い」
「はぁー!はぁー!こいつ滅茶苦茶強いぜぇ……。何とか本気で勝てたぜぇ」
「とても嘘くさい」
「だまらっしゃい」
俺は周囲を見渡すと既に勝ち誇っている志願者が数人いた。
戦っているのはリンとアリアテンのコンビと何かよくわからん奴らだ。おっと、今首を絞められて事切れた志願者が一人。
首を絞めて殺した薬物兵士はそのままリューシュの元へって……。
「ひぃい!!来ないでぇええ!!」
「殺してやる!殺してやる!!」
「助けてぇええ!!」
あれが兵士志願者なのか?俺が試験官なら帰ってもらってるぞ?まぁ、俺が助ける義理はない。一回きりの付き合いだ。
「……!!」
「がはっ!!」
と、リューシュを追いかけていた薬物兵士の首が180度回転し倒れる。
「えっ!?えっ!?」
そしてそれをしたであろう少女が表情を1つも変えずに立っている。それを誇る事も悔いる事もない。
いいねぇ……。
「いやはやまさかこんなにも早く終わるとは……今年は優秀な兵士が多いようだ、さぁ城の中央へ案内しよう」
リンとラハールはかなり息切れをしていた。苦戦したようだ。ちなみに俺も苦戦した設定なので息切れをしておく。
「嘘くさい」
「だから黙れ!!というか寝とけ!」
この世界に来て魔王(幼女)を背に背負ったまま戦っている俺って一体……。
23人から18人に志願者は減っていた。
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