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勇者な俺と魔王な彼女  作者: ロドニー
兵士編
18/33

17話 「表と裏」

「うぉおおお!!!」


と、いきり立って真っ直ぐと突進をしてくる男を冷静に体を右に引いて避けたアリスはそのまま隙だらけになった男の首筋に手刀を当てて失神させる。


「ふぅ」


アリスは緊張の糸を弛緩させ放出していた魔力を収める。そこまで莫大にはないが成長次第では類まれな力を発揮するいい魔力だ。


「ち……ちきしょ……」


手刀を当てられた男は立てないようだがまだ意識はあるようだ。流石は裏世界の人間という事だ。生命力は人一倍あるようだ。


「なんで俺たちは生まれた時から差別されてんだ……」


「……」


その時見せたフウの哀しそうな表情が少し俺の目に映った。


「産まれただけじゃないか……生きていただけじゃないか………」


「どちらにせよあなたは境界を区切った。それは罪だ」


「何故だ?何故俺たちは同じ人間なのに境界を張られている?」


「それは……」


アリスが答えに戸惑いを見せる。


「悪いが終わりだ」


俺は男の首をへし折った。任務は抹殺だから問題はないはずだ。


「惑わされるな。奴らはもう仲間を傷つけている」


何が仲間だ、そんな事は微塵も思っていないのに。


「裏世界、私が生まれた時からその世界はそう呼ばれていた」


「そこにいる人間は生きていることで罪を課される」


フウはそう何かを憎むような目でそう言った。アリスにはその意味がわからないだろうが、俺には痛いほど理解できた。


そんな感傷に浸っている時だった。


「死ねぇえええええ!!!」


「あ?」


と、肉が断絶される音が俺の体内に鳴り響く。


「お前らのような人間が俺たちを見下し差別するんだ!!!」


俺が男の方を見ると男は俺に刺したナイフを抜きもう一度刺そうとしていた。避けようと体を動かそうとするが上手くコントロールが効かずにもう一度刺されてしまう。


一度目とは違い仄かな痛みが全身に広がった。


「貴様……」


「あ?」


「!!?」


背中に背負っていた魔王の極悪的と言える殺意が俺の背中を伝って感じ取れる。男も流石にそれに焦りを感じたのか大きく後ろに後退する。


流石に魔王ってとこだな。幼くても流石は諸悪の根源である魔王と言ったところだろう。


「夜、抑えろ」


「………うん」


「な……なんだってんだ……畜生ぉおお!!」


男はナイフを俺に向けて突進をしてくる。俺は男がナイフを持っていた手を蹴り、男がその蹴られた痛みに苦しみの声を上げるより早くその体に拳を打ち込んだ。


「……ガハッ!!」


男はその衝撃に吐血しその場に崩れ落ちる。


「なんだ……?」


少し息が上がっている。疲労?


この程度で疲労などあり得ない。そもそも最初のナイフを突き刺そうとした時、こいつは恐らく俺に殺意を向けていただろう。


例えそれが微量な物でも俺が気付けないわけがない。何故なら向こうから突進をしてきたからだ。


「というかお前らなんで硬直してんの?」


俺は硬直して俺を見つめていたアリスとフウに声を掛ける。


「一瞬だが寒気がするほどの殺意がその背中の女の子から感じられたんだけど?」


と、フウが冷や汗を額に浮かべながら俺にそう質問する。


実は魔王なんです、とは流石に即答できない。


「気のせいじゃね?」


そういう事にした。


「それよりも大丈夫か!?」


アリスは急いで俺の傷口に手を添えてくれる。すると徐々に痛みが引いてくれる。流石に痛みを感じないという超人にはなれそうにはない。


悲鳴を上げずに我慢はできるが……。痛い物は痛い。


「ああすまねぇー……」


そこで俺の視界が歪む。


「……な……に………?」


そして、抵抗はするも俺はその場に崩れ落ちた。


最後に魔王の声が脳内に聞こえた。


トウマ…と……。

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