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勇者な俺と魔王な彼女  作者: ロドニー
兵士編
16/33

15話 「接触」

「あのような雑種に遅れを取るとは貴様ら!!兵士としての誇りはあるのか!!」


中央広間にもう一度集められた俺たちは総合兵士長さんに恐喝を入れられていた。


「裏世界の人間ごときに敗れおったからには兵士を辞める覚悟はあるんだな!!」


「待ってください!!それはあまりにも横暴では!」


「黙れ!!第三部隊の七名を本日を持って除名とする!!!」


「そんな!それでは私の部隊には新兵の二人と三人の兵士しか残りません!!これでは寧ろ探索に遅れを来します!!」


「そのない知恵を使って考えろ!!!」


かなり頭に血に上っているようだ。そんな兵士長さんから出された第二の指令は捕獲ではなく抹殺。見つけ次第、殺すことを許可すると来たもんだ。


なんの罪も犯していない人間もいるかもしれない。だが裏世界というだけで問答無用で殺される。何が平和で何が正義なんだか……。


アリスはその場に立ち尽くしていた。お偉いさんのクラスがクラスなだけに俺も余計なことは言えなかった。まぁ、今はだけどな。


「まぁドンマイ」


「納得がいかないわ……私の仲間は果敢に戦ってる……!!何も知らないくせに!!」


「そんなに見返したいならお前が捕獲すればいい話だろ」


「私が捕獲しようとしたら逃げられたのよ……それにもう捕獲ではなく、抹殺」


「人が人を殺せば罪になるのに帳消しとは酷い差別だな」


「トウマ少しがっかりしてる」


「人間ってのは結局は偽善を振りかざす愚者だと再認識したよ。まぁ、俺もその人間だけどな」


「トウマ!!」


突然のアリスの呼びかけに俺は首を傾げているだろう。


「一緒に行動してほしい」


「………え?」





人通りのない暗すぎる道。暗黒という比喩が相応しいほど暗いそんな場所に、俺たちはいた。


「ミオン!!!やめろ!!僕に虫を向けるんじゃない!!」


「ラハールって昔から虫が触れないよね~」


「やめろぉおおお!!!」


「あははは……リンちゃんがラハールくんを弄ってるよ…」


「てめぇーら馬鹿にしてんのか!?」


自分はボケキャラだと思ってた。いや、そう思ってた頃が俺にはあった。いや、ボケじゃなくて素なんだけどな?


だがこいつら、緊張感ないにもほどがあるだろ!


「そもそもこんな道幅の中!こんな大人数で来るか普通!?」


「仕方ないでしょ……ここを抜けた先に暗黒街があるんだから」


暗黒街。表世界でありながら闇を持つその場所は人々からそう呼ばれているらしい。


失敗した資産家や小さな罪を犯した人間、職を失った表の人間。そう、人生において失敗をしたものが行き着く先と言われている。


そこに裏世界の人間が交わっていてもなんの違和感もない。むしろ、判別が難しそうだ。


だがフウ曰く、裏世界とこの暗黒街では決定的に違うところがあるらしい。それは生死の危険性。暗黒街で死ぬことは正直言ってほとんどないらしい、だが裏世界では小さな失敗すらが死に至るらしい。


そのため裏世界の人間はそこでも隠密で冷静な行動をしているとの推測だ。まぁこれが理解できるのは俺とフウだけなんだが。


「見えてきたわ」


先頭を歩くアリスがそう言い指さした先には小さな広場が広がっていた。少し生臭い匂いが漂っているその場所に入った瞬間に即座に理解する。


「くくっ……確かに違う」


「どうしたのトウマ?」


「リン、お前らはここで事情聴取でもしとけ…!」


「え!?あっ!ちょっと!!」


俺は五人を置いて走り出していた。


「トウマ、もう見つけたの?」


「俺たちが入った瞬間に警戒の視線を向ける人間が一人いたよ。そこら辺の奴らとは圧倒的に違う敵としての警戒線」


「私にはわからなかった」


「そりゃあお前、背中にいるからだろ。それに微量な物だしな」


「やっぱりトウマ強い」


「またそれかよ…」


俺は廃屋に足を忍ばせる。しかし、それと同時にナイフのような物が頬を掠めた。


「いきなり物騒な奴だな!!」


俺は真っ暗な廃屋の中にいる一人の人間に目標を定め突っ込む。だが男はそれに反応し、右へ飛んで俺が振り下ろした拳を避ける。


本来なら見えないはずの暗黒の中でだ。


「どるぁ!!!」


「俺も生憎暗闇でも見える性質でな!!!」


男から繰り出された拳を俺は両腕をクロスしてガードする。確実に急所を突くいい攻撃だ。


「むっ!!ふんっ!!」


「っと!!その手はくわねぇーよ!!」


休むことなく繰り出される的確な急所攻撃。俺はその攻撃を確実にガードし受け止めていた。


「貴様、何者だ。表の者じゃないな」


「列記とした表の人間だぜ?」


「この暗黒の中、俺と攻防を数秒続けられる人間はそういない」


「おいおい、随分と自分の腕に自信があるようだな」


「私の魔法は『梟の瞳ブラックアイ』。どのような場所でもこの目は逃さず見続ける」


「つまりあんたは俺が見えてるってことか?」


「その通りだ。貴様が女を背負いながら戦っていることも承知している」


最初のナイフ投合こそ、目が慣れていなくて少し掠めたが確実に脳へ飛んできたのはそういう事か。そしてこの場所に潜んでいる理由はあのナイフで確実に倒せるようだろう。


「裏世界の人間ってのは中々おもしれぇーな」


「俺はこのような場所で死ぬわけにはいかん」


「俺としては楽しませてくれればいいんだぜ!!」


あの世界で常に感じられたこの緊張感。俺はたまらなく懐かしい気分に浸れていたが、それは決して戦いに反映されるわけではない。


力は俺が圧倒的に勝っていた。


そして、数分の攻防は終わりを迎える。


「ぐっ!!!」


「死にたくないなら今から俺が言う質問に答えろ。二秒の沈黙は死と見なす」


「……」


男は押し黙る。


「お前は何故この世界に来た?」


「……光が見たかったんだ」


その言葉に嘘はないだろう。真意はわからないが、何故かそう思える自分がいた。


「今、この暗黒街にこっち側に来たお前らの仲間はいるのか?」


「ああ、全員、暗黒街ここの何処かに潜んでいる」


「仲間をあっさりと売るんだな」


「仲間なのではない、ただ一緒にこちら側に来た愚かな者たちだ」


「質問は終わりだ」


「なら殺すといいさ」


「……」


「質問に答えれば生かすとは言っていない、そうだろう?」


「ああ、悪いが殺すぜ?だが何故俺の質問に答えたんだ?」


「いい拳を交わらせてもらった格闘家としての誇りだ」


「……そうか悪いな」


俺は男の首に手を掛ける。


「最後に名を教えてくれ……」


「トウマだ」


「そうか、死にゆく俺の名前を覚える義理はない、だが聞いてくれ。俺はソウヤだ」


俺は男の首に力を込める。


「地獄で待っているぞトウマ」


そして、その首をへし折った。


最後の言葉だけが少し気になったがこいつはここに放置しておこう。


それよりもあいつらの所にどう理由をつけて戻るかな……。ついつい過去の本能が赴くままに走ってきてしまったからな……。


まぁ、細かいことは後で考えるとしよう。

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