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勇者な俺と魔王な彼女  作者: ロドニー
兵士編
12/33

11話 「フウとの対話」

「あなたが勇者?とても勇者とは思えないほどの口の悪さね」


「勇者が誠実なんて誰が決めたんだ?とある世界の勇者なんてはい、か、いいえ、しか喋らないらしいぜ?それに比べりゃあいいだろ」


「もうー最悪!どうして私がこんな男のパーティーに組み込まれてるのよ!!国王もどうかしてるわ!!こいつを三人目の勇者にして魔王を討伐させるなんて!!」


「ほざいとけ」


過去に二人の勇者が魔王の討伐に向かったが、二人とも魔族の領地の踏み込んだ瞬間に通信が途絶えたらしい。それほどまで魔族の領地とは未開の地であり、危険な場所とされていた。


だが魔王を倒さなければ人類は魔族に屈する未来がやってくる。それだけは何としても避けなければいけない。だからこそ、今。


三人目の勇者が選ばれた。


それが俺だった。



「まさかあの攻撃を平然と受けて立ってられるなんて予想外だったわ」


「何度も言うようだが相手が悪かっただけだ。俺以外ならノックアウトだぜ、多分」


「だけど私はあなたに負かされた、何を聞きたいの?私の魔法の事はもう気付いてるわよね……」


「気配を掻き消す魔法で認識しておけばいいのか?」


「簡単にいうと相手の五感を弄る魔法よ。私はあなたの全ての五感を恐ろしく鈍らせた、そして誤らせた、五感だけに誤感ってね」


「お前、もう二度とダジャレ言わない方がいいぞ」


「うぐっ……私はこの魔法を『気配消灯オンミツ』って呼んでるわ」


「潜入捜査とかに向いてそうな魔法だな」


「そうね……それでこれだけで返してくれるわけじゃないでしょ?」


「ああ、お前は勝利する算段で先程の条件を提示したんだろ?」


「ええ……悔しいけどあなたは気付いてるのね……」


「聞きたいことを一つ聞くとは提示されていない、つまり俺はお前に聞きたいことを何でも聞いていいってわけだ。一応、嘘とか敏感だからつけると思うなよ?」


「私も腹をくくって、今、あなたの部屋にいるわ」


こいつは勝利するつもりで一つと提示しなかったのだろうが、今はそれが完全に裏目に出ていた。俺が聞きたいことは三つあった。


「聞きたいことは三つだ」


フウはゆっくりと頷く。表情は決意に満ちている事から本当に腹をくくったようだ。夜には席を外してもらうわけにはいかないので、背中で眠ってもらっている。


「一つが今の魔法の事。そして次の質問だ」


「何……」


「お前、こことは別のドコかで育っただろ?」


「………」


「歩き方や周囲への目配り、いや、お前は自分の行動全てに軽い警戒を置いている。その理由を教えろ」


「……本当に嫌な習慣よね…。意識せずともしてしまう、この気配のようにね」


「確かに習慣ってのは抜けない」


俺も今でも抜けきれないのが、走る時の足音だ。絶対に音を殺すように慎重な走り方に意識しなければなってしまう。


他にもいっぱいあるが、もっとも意識しているのはこの走り方だけだった。


「裏世界。私はそこで17年間生き抜いた。強さも生き方も全て……」


裏世界。


聞いたことのある単語。


そこにいる人間は表世界の人間から意味なく嫌悪され差別されている。何より、格下に見られている。ゴミのような扱いを受けている。


「そんな裏世界の人間がよくこの世界に来れたな。確か、ここの書物を確認する限り、裏世界の入り口前には巨大な壁が建ったらしいじゃねぇーか」


そう、裏世界と表世界の境界線には書物によれば数年前に巨大な壁が建てられた、と記されてあった。決して自分の目でそれを拝んだわけではない。


「壁をよじ登り、この魔法でこの世界に来た」


「なるほどな、認識を掻き消したのか」


それなら臆する事無く表に交われそうだ。


「始めて知ったわ、この世界がこれだけ暖かい事に」


「まぁいいさ、俺が聞きたいのはその理由だった。その裏世界ではそれをしないと生きていけなかった、だからこその習慣、そう認識するぜ?」


「うん……」


「少し嫌な過去だったか、まぁそんな事より最後の質問だ」


「わかってるわ」


「お前が俺に聞きたかった事はなんだ?」


「それを聞いていいのかしら?」


「構わねぇーよ、だが答えるとは言ってないぜ」


「……あなたの強さは一目でわかったわ、だからこそ聞きたかった」


「まぁお前よりは強いがそこまで強くないぜ」


「裏世界の人間は誰よりも力探りが巧いわ、そうやって自分より弱い奴を叩いて生きる」


「んで俺はお前より強いと認識されたのにお前に喧嘩吹っ掛けられた、と?」


「いえ、あなたの力が見切れなかった、あなた一体どれだけ強いの?」


「はぁ?普通の人間だっての」


「ええ、だから確認したかった。弱すぎて読み違えたのかそれとも……」


「俺を評価しすぎだ。俺は普通の人間だよ」


「それとあなたの背中に背負ってる幼女そのこも私より強い」


「考え過ぎだ、というかお前が裏世界出身である事はなるべく隠せばいいんだな?」


「ええ、出来る限りお願い」


俺はフウを追い出し、二人きりとなった部屋で魔王を起こす。


「どうしたの?」


「とある奴に感づかれ始めてる。勇者と魔王である事は伏せるが時間の問題かもしれん。俺もまだまだ力を隠すのが下手くそなようだ」


「トウマは強さがにじみ出てるから無理」


「お前もあいつも俺を評価しすぎだって……」


その日は少し疲れたので俺は軽く仮眠を取っておく。

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