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勇者な俺と魔王な彼女  作者: ロドニー
兵士編
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9話 「気配消灯」

「トウマ、どうしてシュタインマイヤーのパンチ受けた」


「どこの政治家と間違えてんだよ」


「間違えた、どうして受けたの?」


「お前あの時、俺から降りやがったな?」


「だって、下敷きになる、トウマ重い」


「ふん、まぁ受けた理由としては自分の強さを象徴してもまた調子に乗ってるとバカにされ孤立するからだ。ある程度弱ければ弱い奴と集団になれるのさ。強い奴ってのは大抵自信家だ、そんな奴らが群れて集団行動するとは思えねぇーんだよ」


「つまり弱く見せて弱い人と組む?」


「そっちの方が嫌われていても動きやすい。忘れるな、俺たちは勇者と魔王なんだ」


「うん」


「それと、先程、部屋に満ちた殺意に気付いたか?」


「殺意?感じなかった。というかあの時、ほとんどの人があなたに敵意を向けていた」


「そういやそうだ……」


だが、あの時の殺意はそんな生半可な敵意ではなかった。一歩でもこちらに来るならば問答無用で殺す。あの世界の人間の誰もが持っていた殺意。


久しぶりに感じられて思わず……。


「あふれ出る戦意が漏れるとこだったぜ……」


「トウマ、忍耐力凄い……」


「さてと新兵の仕事でもこなすか……」


俺は怠い体を背筋を伸ばして解し、ベッドから立ち上がり魔王を背にその部屋を出た。


そうして、第七部隊の会議室に特に気にすることなく向かう。


「よう、新入り」


「………」


「おいおい!?ガン無視かよっ!?ちょっ!お願いだから挨拶はしてYO☆!」


何こいつ?先輩だけど凄くむかつくんだけど?


「いやぁ、昨日は中々面白い物を見せてもらったぜ。ジンにあそこまで威勢よく言葉を返せるのはお前くらいだろうなぁ」


「あんた、誰だ?」


「冷たいねぇ。同じ部隊の仲間じゃねぇーか!俺はトロイだっ!趣味は隊長のおっぱい観察!!」


「お前とは仲良くできそうだ」


「やっぱり!?お前もあの胸に興味ありありってか!?」


「男として当然だ。あの巨乳……いや、爆乳は揉み応えがありそうだ」


「くぅううう!!童貞卒業者は言う事が違うね!!」


「あんまり、下ネタNG」


「だ、そうだが?」


「まぁ、そりゃそうだわな」


トロイと呼ばれる男の身なりは兵士とは思えないほど軽い。態度も中々にチョロイ。こんなのが兵士になれるなんて世も末だな。


「今なんか俺を見て世界終わりみたいな顔しなかった?」


「気のせいだ」


勘はいいようだ。


「とりあえず俺は新兵のお前とフウの世話役を押し付けられたのさ!」


「はっ!厄介者は厄介者ってか」


「おい俺が厄介者みたいに言うんじゃねぇーよ!!」


「先日も伝えたが、新兵はこれから一週間厳しい鍛錬を受けてもらうぜ?これが無理だと思ったなら兵士はやめろ」


「新兵が終わればその鍛錬とやらはしなくていいのか?」


「いんや、週に一度行われるぜ、部隊事にな」


「なるほどな、それはそうとフウにも説明をするなら二度手間じゃないのか?」


「フウならお前の隣にいるだろ」


「いる」


「!?」


「トウマ、気づかなかった?」


「は?気付いてたけど?は?えっ?何?気付けてなかったと思いました?俺は芝居上手いんだよ」


「下手な嘘に持っていくとプライドが後でズタズタに崩れる」


「気づきませんでした」


この女。いつの間に俺の横に立ってやがった……?いくら、俺が注意をトロイに向けていたからと言って真横に立たれて気付けなかった?


この女……。なんて気配のなさだ……。己の存在をないものと認識してやがるのか?


俺ならどれだけ気配を隠されても気付ける自信があったんだけどな……。今ので折れた。


「まぁ、とりあえず今から俺率で鍛錬を開始させてもらうぜ?新兵は一応通常兵の七割の量だ。感謝しろよ」


そうトロイが言うと、トロイは「付いて来い」と、俺たちを先導する。俺とフウはその後ろに付いていく。そういえばラハールの姿がないがどうやらあいつは違う兵士に見られているようだな。


「おいフウ」


「なんですか?」


「てめぇ、どうしたらそんな気配を隠しながら生きれるんだよ」


「へ?隠してるつもりはありませんが……存在感がないとはよく言われます」


自然な芸当、か。だからこそ気付きにくいのかもしれない。


本来気配を隠すならばその気配を隠すための気配が何かしら現れる物なのだ。まぁ俺でも精々、完全に気配を消しきっている人間がいても30m範囲なら気付ける自信がある。


まさか気配を隠さず隠す女に真横を取られるとは不覚だったが……。これからは注意をさらに強くしておけばいい話だ。


結局、気配を隠し切る事ができる人間など存在しない。


魔法でも使わない限り、な。


「というかお前そういう喋り方なのな」


「いつもはもう少し口は堅いんですが……あなたの雰囲気にしてやられました」


「トウマ、話しやすい」


「イケメンだからな」


「関係ないと思いますが、あんな馬鹿な会話を初っ端からぶちかましたからだと思います」


「誰がバカだ」


「さてと、ようこそ鍛錬場へ!!」


そうトロイが両手を広げた先に広がった世界は………。


「ふんっ!!ふんっ!!」


「はっ!はっ!!」


「うりぃいいいい!!!!」


恐ろしく汗臭かった。

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