余 陽だまりの中で
上気する巫女と男との交わりを邪魔するように影から声がする。
「やれやれ、今回は手ひどくやられてしまったが、手の内の一つは知れた事だし、まぁ次回はもう少しうまくやるとするかね」
「次があるとお思いですか?」
「ああ、もちろんだとも、貴様達だとて、今は打つ手もあるまい、ゆるりと逃げさせてもらうさ」
*
余 日溜まりの中
緩やかな午後の昼下がり、小さな猫が、一人の青年の膝の上で丸くなる。清楚なる巫女が現れ、その傍らにお茶を置く、そして、その後ろから、神無のどんよりとした声が響く、「…膝枕、…膝枕、わたしですらそんな事やってもらった事ないのに…」あの後、正気を取り戻した綾音は、その場に額をこすりつけながら喚くように言った。「数々の無礼と非礼をお許し下さいなのですにゃ、なんとお優しく、素敵な方なのですかニャ、杜若 綾音、あなた様に惚れたのですニャ、あなたのもとにいれば、私でも、きっとお役に立てる気がするのですニャ、ご恩返しをせねばならないのですニャ、猫又一族の厳しい厳しい掟ですのニャ」そうして、新たなる居場所を確保した子猫は、主の膝の上、心地よく寝言をたらす「ここは気持ちがいいのですにゃ、ここはいごこちがいいのですにゃ、ようやくみつけた、私の居場所なのですニャ、ここは譲れないのデスにゃ」
日溜まりの中、静寂が破られ、女達の日常が始まるのはいつもの事だった。




