ロスト・バトル
若干パロディがあるので注意です
「よくきたな勇者どもよ」
「魔王!!覚悟しろ!!」
魔王と勇者一行が対峙していた。
この魔王は強力な配下と自身の絶大な魔力により世界を破滅させようとしていた。そんななか魔王を打ち倒すべく勇者が立ち上がった。勇者は仲間を集め、各地で暴虐の限りをつくしていた魔王軍四天王を打ち破りついに魔王との直接対決に挑むことになった。
勇者は振り返り仲間を見る。
多種多様な攻撃魔法、支援魔法でパーティを支えてきた魔法使い
強固な鱗を持つモンスターでもやすやすと打ち砕く拳を持つ武道家。
未熟な自分がここまでこれたのもこの頼もしい仲間たちのおかげだ。勇者は胸の奥から熱いものがこみ上げてくるのを感じた。それは仲間たちへの感謝であり信頼でありそしてこれから始まる死闘への覚悟でもあった。
剣を構え勇者は吠える。
「行くぞ!!魔王!!」
「あ、ちょっとタンマ」
「っ!?」
突然の待ったにずっこけそうになった。よーい……どんって言ったらスタートだからねって言われた感じで
「……どうした?」
「ああ、実はまだ遺書を書いて無くて」
遺書って死ぬ前に残す手紙のことだろうか。え、なにこの魔王やられるき満々なの?
「いや、あきらめるのが早すぎませんか」
おずおず魔法使いが言う。
「いや無理無理勝てないって魔王って時点でフラグ立ってるし」
おい、フラグとか言うなよ。
「どうしてそこで諦めるんだよ!!もっと熱くなれよ!!」
ちょっと武道家うるさいよ
「だってお前ら絶対レベルマックスだろ。四天王倒してからここに来るまでずいぶん間があいてたし……こっちはレベル固定だっていうのにさ。あれだろ最強の武器とか装備して体力全回復のアイテムがカンストしてんだろ。そんなんチートやチーターや!!」
「「「…………」」」
ドンピシャでその通りだからなんもいえねぇ。
「というわけで今から遺書を書くから待っててくれないか」
「そうやって逃げようとしてるんじゃないのか」
「疑り深い勇者だな……ここで書くからそれでいいだろう」
魔王は魔法で折り畳み式のテーブルと座布団を取り出し遺書を書き始めた。
「うーん、遺書ってどうやって書くんだろうか……お前たちわかるか?」
「しょうがないですね。私が教えましょう」
「おお、すまんな」
魔王がもう一つ座布団を取り出しほれと魔法使いに渡し魔法使いは礼を言い向かい合うように座る。いやにフレンドリーだな。
「遺産相続とかよく考えたほうがいいですよ」
「おお、遺産とか考えてなかったぞ。あぶないあぶない」
「なあ、武道家」
「なんだ」
「これどういう状況?」
「こっちが聞きたい」
……だよな
「魔王陛下!!大丈夫ですか!!」
遺書が書き終えるまで暇なので武道家と2人で大富豪をしていると魔王の配下がわらわらと現れ囲まれてしまった。しまったここが敵地だと忘れていた。
「貴様ら!!うるさいぞ!!今この魔法使い殿に遺書の書き方を教えてもらっているのだ!!茶菓子でも持ってこんか!!」
「え、いやあの」
困惑した配下と目が合う、大丈夫、お前に落ち度はないよ
「これだから名無しの配下は……城を守れと言えばやすやすと侵入されしかも簡単にやられらて敵に経験値を与える始末……全く使えん」
滅茶苦茶に言われた配下たちは肩をふるわせ上をむく。お前たちは今泣いていい。
あまりのいたたまれなさに勇者は思わず慰めるように肩をたたく。
「一緒に大富豪やる……?」
「……うん」
こうして盛大な大富豪大会が開催された。
「よし、8切りで上がりだ!!」
「あ、勇者それローカルルールだから駄目だ」
「え!?まじで!?……知らなかった」
「勇者ざまぁ。俺の番だな……よし革命で上がりだ!!」
「あ、武道家。それもローカルルールだ」
「まじか!?」
「武道家ざまぁ」
そんな感じで大富豪で盛り上がっていると
「皆の者、またせたな遺書が書き終わったぞ」
遺書を書き終えた魔王と魔法使いが達成感あふれる顔して握手していた。
「お前のおかげで素晴らしい遺書が書けた。礼を言うぞ」
「いえいえ、お役に立てたようで光栄です」
なんかすげー仲良くなってるなこの2人
「では……」
魔王が身構える。その場の空気が一瞬にして張り詰める。
ていうか戦うのか……今の状態で。魔王と魔法使いは友情築いちゃってるし勇者と武道家は配下たちとの大富豪が楽しくてまた遊ぼうなと約束してるし……戦う雰囲気じゃ全くない。
「……また今度にしない?」
重苦しい空気に耐えられなくなった勇者がそう切り出すとそうだそうしようと満場一致。
「じゃあまた」
「うむ、また来いよ」
「今度はダウトしようぜ」
「またなー」
玄関まで見送られ勇者一行は魔王城を後にする
「俺たち……何しに魔王城に行ったんだっけ?」
「さあ、当初の目的なんて忘れました」
「遊びにいったんじゃね?」
「……だな」
読了感謝感激です
暇つぶしにでもなればうれしいです