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ナイス! 仲良くなろう大作戦!

――成り行きでなった仲間だからこそ、仲良くしたい――

そんなルキの願いはかなうのか?



はい! またなんだかハチャメチャなストーリーです!

ちなみに、この世界に着物というものはありません! が、イメージしやすいようにあえて、着物と書きました。

 日も落ち、あたりが大分暗くなった頃、一行はルデス・シティーに到着した。

 とりあえず皆別々の部屋をとり、話し合うためにルキの部屋へと集まった。

 3人は各々(おのおの)好きな所へと座り、ルキが口を開いた。

 「――なんだか成り行きで仲間になったから、あんまちゃんと自己紹介してなかったじゃん? だから今ここで自己紹介しちゃおうと思って」

 お互いに話し始めるのを待つ。

 …………………………………………………………………………

 ……………………

 「だああぁぁあぁぁっ! もう! しっかたないなあたしからやるよ!」

 静かな空気に耐えられなくなったルキが叫ぶ。

 「あー、あたしはルキ……ってもう知ってると思うけど。生まれはマリゴル王国で、家族はおにーちゃん・ばーちゃん。とーさんとかーさんも居るんだけどなんか旅に出てるとか何とかで、顔を覚えてない。だから、居ないのと一緒かな。んで、魔法もまあ、少しは使えるけど、体術の方がずっと得意で、甘いものは好きだけど苦いのと辛いのは苦手。

 ――まあ、そんな感じ。大体」

 「ハイハーイ! 次、私ね!」

 元気よく手を挙げるミリア。ラギウスも軽く頷く。

 「へへ……。私ミリア=ディアンよ。趣味は買い物、出身はブルジア連合王国で、育ちはルキと一緒でマリゴルなの。私は体術は好きじゃないけど、魔法と暗器が好きだわ」

 ず。

 ラギウスが表情を変えずに若干ずり落ちる。

 「? で、家族はお父様・お義母(かあ)様・妹がいるわ。妹はリリアっていって、姉思いのいい子なのよ~。フワフワしてて可愛いし、そう! 歩くと髪がそれに合わせて揺れるのよ! もう可愛くって可愛くって……見せてあげたいわ~。もう婚約者も決まってるのよ!」

 「姉とは違って?」

 ルキが横からちゃちゃを入れる。

 「うっ。余計なお世話よ!」

 ミリアはふくれっ面になってベッドに腰を掛ける。

 「――じゃあ……」

 2人に視線を向けられたラギウスは、やれやれというように肩をすくめ、口を開いた。

 「ラギウスだ。剣と魔法が主な戦力だ。以上」

 え~! とミリアは大きく頬を膨らませる。

 「なんかないの? 趣味とか好きなものとか苦手なものとか!」

 「……そうだな……。趣味は読書で寝るのは好きだ。苦手なもの……強いて言うなら寒いのが嫌いだ」

 「呼んでほしい呼び方とか」

 ミリアは更に問い詰める。

 「別に何と呼んでもらっても構わん」

 「え、じゃあラーくん――」

 「やめてくれ、すまん俺が悪かった。悪かったからそれはやめろ。――ラグとでも呼んでくれればいい」

 ミリアの提案を即答で却下すると、彼は口を閉じた。

 「じゃあ、ラグ」

 会話が途切れたところでルキが話しかける。

 「えっと、これからも、ヨロシクね?」

 「――ああ」

 ラギウスは短く返事をすると、自分の部屋へと戻っていった。

 ――しばらくして。

 「……結局、あんまりわかんなかったわね、ラグ君のコト」

 ミリアが残念そうに言う。

 「しかたないよ。成り行きでなった仲間だし、ラグは深く話す気はないと思う」

 ルキは困ったように笑う。

 「ええー。それはそうだけどぉ……」

 「――でも」

 ルキは続ける。

 「成り行きっていうと、それってなんか運命的な感じがする。そんな仲間と、別れちゃうのは嫌。

 だからさ、向こうが心開いてくれるまで、待とう?」

 フッと、ミリアは笑う。そういうところが、ルキのいいところなんだな、と思った。

 「――そうね。そうしましょうか」

 

 *


 「おっはよー!!」

 次の日の朝、ルキは元気よくテーブルに着いた。

 「おはよ~」

 「……ん」

 ミリアはもう食べ始めていたし、ラギウスの方もコーヒーを飲んでいる。

 ルキは今日のお勧めを聞き、それを頼むと、2人の方を見た。

 ミリアは相変わらずモーニング・セットを数人前食べ終えている。ラギウスは野菜スープとバタートーストを頼んでいたが、ミリアの食べっぷりに圧倒されているようだった。

 「――あんた、よく食うなあ……。俺の知り合いでも、そんなに食う奴はいなかったぞ?」

 「はっはっは。育ち盛りよ、育ち盛り!」

 ミリアは前にルキに答えたように答え、また黙々と食べ始めた。

 「育ち盛り、か……」

 ラギウスはそう呟いて、頼んだスープを一口すすった。ルキが一言。

 「あんたの食費で一体いくらかかるのさ……」

 ぴきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん

 音すら立てて、ミリアが凍りつく。

 おお、効果覿面(こうかてきめん)。今度から困ったらこれを言おう。ルキは今の言葉を深く心に刻み込んだ。


 「さーて、まずは何を見ようかしら♪」

 あれからしばらくして硬直から抜け出したミリアは、頼んでおいた分だけの皿を空にし、その間に2人も食べ終えた。そして、街を見て回ろうという事になったのだ。

 「やっぱりまずは名物の図書館かしらねえ?」

 「ここでは魔法の品の店(マジック・ショップ)が発達していて、あとは土産物に良いものが揃っているらしいぞ」

 「おお、随分詳しいな! すごい、何で知ってんの?」

 ルキが感心すると、ラギウスはそっぽを向いて、

 「……本で読んだ。別に誰でも知ってる」

 テレてるな。ミリアはそう直感した。が、口には出さなかった。気を悪くされて『仲間を抜ける』なんて言われたら――別に彼女自身は困らないが――、ルキの気持ちを裏切るようになってしまうからだ。

 「――そうね、じゃあまずは魔法の品の店(マジック・ショップ)にでも行ってみましょうか」

 ミリアはそう言うと店へと向かった。


 そこは――

 ひたすら怪しかった。

 例えるならそう、まるで廃墟のような雰囲気だな、とルキは思った。

 中に入ってみると若干薄暗く、店内の見通しは悪かった。

 「え、ここがそれ?」

 「あ、ああ。そうのはずだ……?」

 ラギウスの語尾も疑問形になっている。すると突然――

 『あれま、お客さんかい?』

 声が聞こえた。くぐもったような、年老いた老婆のようだ。

 「きゃああああああああああああああああああああああああ!?」

 ミリアが叫んだ。お化けは苦手なのだ。――といってもお化けではないが。

 『なんだい、大声出して。ちょっと待ってなされ、今行くから』

 そう聞こえたかと思うと突然周りが明るくなり、あたりがこうこうと照らされた。光源は呪文で造りだされたものだった。

 「いらっしゃい」

 今度はくぐもったものではない、本物の声が聞こえた。3人が後ろを振り向くと、一体どこから湧いたのか生えたのか、ローブを纏ったおばあさんが立っていた。“いかにも”といった感じである。

 「何が欲しいのかえ?」

 おばあさんが尋ねる。

 「ふふ、言わんでも大体は分かるけどね。

 そこの三つ編みのお嬢さんは――そうさね、新しい隠し武器でも欲しいかね? 今丁度良いのがあるよ。

 ――そこのお兄さんは、切れ味のいい剣が欲しいかね。そこの棚にたくさんあるから、好きなのを選ぶといい。

 それでそっちの黒髪のお嬢さんは――」

 おばあさんはそういうと、ルキへと近づき、囁いた。

 「あのお兄さんとみんなで仲良くしたいんだろ?」

 「!!」

 ルキは目を丸くした。図星だったからだ。

 「それならそうさね――。そういうのは魔法でどうこうするもんじゃないから、手助けになるもんがいいね」

 おばあさんは懐から何やら取り出すと、ルキに握らせた。

 「これだけは、お代はなくていいよ」

 「でも――!」

 ルキが言うとおばあさんはウインクをし、

 「いいんだよ。おばあちゃんのお節介としてもらっていきな。大丈夫。上手くいくさ」

 あ―― とルキは息を吐き、ありがとうございます!とお礼を言った。おばあさんは優しく微笑んでいた。

 会計をすまし、ほくほく顔の3人を見送ると、おばあさんは小さく呟いた。

 「……――私の孫も、生きていればあれぐらいの齢になるかね――」

 その呟きを聞いていたのは、魔法の品々(マジックアイテムたち)だけだった。


 *


 「ふふふっ。いい買い物したわ!」

 ニコニコ顔のミリアに、満足そうに新しい剣を眺めるラギウス。そして、おばあさんのくれた金の輪のようなものを持つルキ。

 ――おばあさんは言っていた。

 『これをあのお兄さんの髪の毛につけてもらいな。そうすればきっと上手くいくさ』

 でも、どうやって? ルキは考え込んでいた。いきなり『これつけて♪』なんて言ったら、怪しい事この上ない。悩むルキの横に、1人の男性が佇んだ。

 『!?』

 一同は思わず身構える。すると男は、慌てて言った。

 「ちょ、ちょっと待ってください! 怪しいものじゃありませんから!」

 「自分で言っている時点で十分怪しいぞ」

 ラギウスはそう言いながらも、構えを解く。

 「はぁ、良かったあ。

 実はお話があって……」

 男の話はこうだった。

 この地域には、これといってあまり面白い行事がない。それで町おこしにと行事を考えたのだが、地域の人々は新しい行事に参加しようとしない。そこで旅の人――つまり外の人――に参加してもらう事で、なんとかこの行事を広めようとした。その協力者(ターゲット)となったのがルキ達だった、ということだ。

 「ふぅん、行事ねぇ」

 ミリアはあまりやる気がなさそうだ。

 「で、どんな行事なんだ?」

 ラギウスが尋ねると男は、

 「はい! 女性が男性に髪ゴムを渡す、という行事です!」

 これだ! とルキは思った。――が、もうしばらく話を聞いてみることにした。

 「髪ゴムぅ?」

 ミリアが怪訝そうに聞き返す。

 「ええ、髪ゴムです!」

 「なんでまた髪ゴムなんかを……」

 「それがですね」

 男は答える。

 「この地域の古い言い伝えなんですけど――

 昔ここいらでは、髪の毛が神の御使いだと考えられていたんです。だから男性も女性も髪を長く伸ばし、儀式の際にはその髪をほどき、最後には女性が男性の髪を結っていたそうなんですよ。女性は神聖なものだと考えられていたから。

 だからそれにあやかって、女性が男性に髪ゴムを渡す、という行事にしたんです!

 ――まだ受け入れられてませんが……

 だから、お願いします! どうか協力していただけないでしょうか!?」

 「そんな……」

 「いいですよ!」

 なおも嫌がるミリアを遮り、ルキが答える。

 「ちょっ……!」

 「困っている人が居たら助けるってえのが道理ってもんでしょ!」

 「でも……」

 なおも食い下がるミリアを見て、男が付け加える。

 「お礼はお支払いしますよ。……金貨10枚でどうでしょう?」

 「乗ったあ!」

 あっさりと承諾するミリア。ラギウスは、

 「1人づつなら考えてやらなくもないぞ。特に支障はない」

 と付け足した。

 男はちゃっかりしてますね~、と笑い、分かりました、と言った。


 ――かくて――

 ルキの『ラグと仲良くなろう作戦』は幕を開いたのである。

 「えーっと、じゃああたしがラグに渡すってことでいい?」

 ルキは尋ねる。

 「ええ、どうぞ」

 男はうなずき、ミリアは『渡すだけなら……』と男に渡すことになった。


 行事の日――

 ルキは最大の試練にぶつかった。

 なんと女性の方はある衣装を着なくてはならないのだ。

 それは、フリルの付いた着物の、裾が太もものあたりまでの長さになったようなものだった。

 「なんでええええええええええええええええええええ!?」

 ルキは絶叫する。彼女はスカートというものを履いたことがない。なのでこのような服は異例中の異例なのである。ミリアはこのような服は好きなので、ウキウキしているようだ。

 しかし、ここでやめたらあの作戦は実行できない。そうしたら、いつまでたっても仲良くなれないのだ。ルキは意を決してその服に着替えた。

 ……足がスース―する…… ルキはそんなことを思いながらラギウスと男のもとへと行った。

 「なっ……!?」

 「おお~、綺麗ですよ。ルキさん、ミリアさん」

 ラギウスは思わず絶句し、男は2人を褒める。

 ルキは、こんなの聞いてない!と食ってかかろうとも思ったが、『じゃあやめるか?』と言われても困るので、『ありがとう』と答えておいた。


 行事は、滞りなく行われた。

 ルキが渡すと、目のやり場に困っていたラギウスは『ああ……』と受け取った。ミリアの方も、金貨10枚の報酬と可愛い服が着れたことに大満足で、行事のはじめから終わりまでずっとニコニコしていた。

 あとから聞いたところ、あの衣装は支持を集めるためのものだったらしい。

 服はともかくとして、とりあえずあの金の輪をラギウスに渡せたので、ルキはこの行事に感謝した。


 この行事の後、ラギウスはあの金の輪で髪を止めることにしてくれた。そしてルキには、心なしか彼の態度も優しくなったように思えた。

 実はこの回は最初は特に何の事件もなく終わっていたんですが、『さすがに何の事件もないのはなぁ』と考え直し、話に盛り込みました。もうほんと、行き当たりばったりで付け足したんで、『おばあさんに髪ゴムもらったぞ!よし次どうやって渡そう!』みたいなw なんとか少しでもリアリティを、と頑張りましたっ!

*なぜ髪ゴム行事かというと、ちょっと落書きしてたら何となくルキがラグに髪留め渡してるのが思いついて、それをかきたいなぁと考えていたからです。(理由になってないっ!? すいませんっ)

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