プロローグ
小説のタイトルは、仮なので変更する場合があります。
読みにくかったらごめんなさい;
いや、途中で一人称に変えて再連載するかもです。いやおおいに有り得る。
ダンッ
『うおおおおおおおおおお!』
湧き上がる歓声。周りに作られた人垣。人々の好奇の視線。
その中心には――
少女がいた。
年の頃なら14、5歳。黒い髪を高い位置でまとめたやや小柄な美少女である。幼さの残るその瞳には、やんちゃそうな光が宿っている。
その少女が、自分よりも一回りも二回りも大きい男を倒したのである。注目されないワケがあるまい。
しかも、魔法で、ではない。腕相撲で、である。
その細い腕の、一体どこにそんな力があるのやら、少女は顔色一つ変えずに、男の手をテーブルにつけてしまったのだ。
彼女の名は、ルキ=ヴァレンティ。史上最強とも謳われるあの、リィナ=ヴァレンティの孫娘なのである。
そして――
『おおっとルキ、いとも簡単に挑戦者を倒してしまったぁ!
なんとこれでもう二十勝目だ!ルキの前には銀貨の入った袋が高々と積み上げられている!
さあ!もし次に挑戦者が勝てば、その獲得はなんと銀貨十袋!金貨一袋分にも相当するぞ!さあ誰が行く!?』
このうるさい実況を務めているのはミリア。ルキの旅の連れであり、大親友でもある。すらりと伸びた長身に、知性を宿す瞳、キリリとした顔立ちが印象的な美人である。三つ編みにした茶髪にカチューシャが、彼女のトレードマークだ。そして、天下の大商人として名の知れるディアン家の長女のため、お嬢様だったりもするのであるが、何せそのサッパリした性格、口調、おっちょこちょいな性格から誰にもそうは思われないのである。
ちなみにルキのやっているこの腕相撲大会も、旅の途中でお金に困った二人が路銀を稼ぐためにとミリアが考案したものであった。
「俺が行くぜ」
と、見るからにガラの悪そうな男が席に着く。
少しは強そうである。
面白くなればいいけど、とルキは微笑する。その笑みが、男のしゃくにさわったようで、男は掛け金を一袋増やして挑んできた。
――これぐらいのことでカッとなるとは、大した器でもないようである。
残念。
ダンッ
ルキはがっかりした表情で男の手をテーブルにつけた。そしてまた、ルキの前には銀貨の袋が積まれたのだった。