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追放された魔女の私、奴隷の堕天使を買ったら無双し放題だった  作者: 紫煌 みこと
第2章 堕天使の復讐 女神へのざまぁ
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第14話「ミラル、堕天使を追う」


「いやっほ―――ぅ!! 楽しすぎるっ!!」



 私がいるのは、青空の下にお菓子がたくさんある世界。

 あっちにはチョコレート、こっちにはロリポップ。まるで幼心に戻ったような気分だ。


「マシュマロ美味しい! 何この世界、最高すぎるじゃん」


 そういえばリタはどこだろう?

 リタと一緒にお菓子を食べたい! 辛い木の実じゃなくて、甘味を一緒に楽しみたいな。


「リタはどこにいるのかな……って、あっ」


 近くから、バサバサッという音が響いた。

 間違いなくリタだ!

 隠れているのかな? かくれんぼ? おーい、出ておいでよ!



 すると私の足元に、羽根が1本落ちてきた。


「うふふ…………?」



 ――羽根が、真っ白だ。


 私が前にリタから抜いた羽根も取り出してみると、雪のように白かった。


「……は?」


 顔を上げると、そこには――天使が、いた。

 純白の両翼と、黄金の輪を持つ完璧な天使。

 ――そんな彼は、やけに見慣れた銀の長髪と鋭い瞳が輝いていた。


「……リタ? リタなの?」

「……」


 確証はないのに、思わずつぶやいてしまう。

 ――だって目の前の彼は、リタ以外にあり得ないのだから。


「えっ……いつ、天使に戻ったの? 戻れたの?」

「……」

「何か言ってよ。待って、どういうこと?」


 いつの間にか、周囲からお菓子の山が消えている。

 リタが立つ陰から生まれた闇が、明るい世界を少しずつ呑みこみ始めた。


「ねぇ、リタ……」

「……俺はもう、お前と一緒にはいられない」

「……えっ? 急に何……どうしたの?」


 するとリタはそれ以上、何も言わなかった。

 ただ無表情で、困惑した私の顔を見つめた後――彼は地面をそっと蹴り上げ、宙に浮かび上がった。


「ま、待って!」


 大きく手を伸ばすが、リタは感情のこもらない瞳でそれを見下ろし、顔を逸らした。


 すると突然、私が立っていた地面が崩れ出した。

 でもそんなことを気にしている場合ではない。

 必死に手を伸ばしたのに――リタは、見向きもしてくれなかった。


 どうしてなの?

 悪夢であってほしい。

 どんな声も届かずに、私は深淵へと落ちていく。


 リタが羽ばたいて、散らばった羽根が朽ちていく。

 純白の彼は光り輝く世界へ飛び上がり、姿を消した。

 苦しい……苦しいよ、リタ。

 私とリタは、一緒の時を過ごしてから別れるんだよね……?





「……はっ」


 朝日が昇った。

 陽光が身体に当たっているはずなのに、私の体は凍えたままだ。


 ――寒い。

 私を覆っていたはずの、暖かなぬくもりがない。


「……リタ?」


 私はゆっくりと顔を上げて、周囲を見渡してみた。

 誰もいない。


「……リタ!!」


 ついに私は大声を上げて飛び起きた。

 リタは!? リタはどこにいるの!?

 昨日、一緒にくっついて眠ったはずなのに! どこかへ行くとは、私に言っていなかった。


「……あ、羽根……」


 私は直感で、懐から羽根を取り出してみるが――色は、濃い紫紺のままだった。

 どうやら先ほどの出来事は、夢だったようだ。リタは堕天使のまま。

 ――それはいいけれど、リタがいないのは夢じゃない。いくら声を出して叫んでも、私の前に現れてくれなかった。


「嘘……」


 絶望が溢れ出す。

 ふと私は、夢の中のリタが漏らした一言を思い出した。


『俺はもう、お前と一緒にはいられない』


 …………。

 リタ、まさか……私を置いて、天の国へ帰ってしまったの?


「いや……たぶん、できないはず」


 そんなことができるなら、とっくに私に教えているはず。

 上位天使っていう奴らに会いにいったの?

 リタは、私の天使は……私なしで、1人で天界に戻れるの?


「あっ……」


 地面をよく見ると、黒い羽根が落ちている。

 リタが出て行ったときに、もしかしたら羽根がすれて落ちたのかもしれない。


 ……外に行ったら、まだリタが傍にいるといいな。

 ただ森から出ただけなら別に……





「…………」


 外に出ても、リタはいなかった。

 代わりに村を見つけた。なんだか、複雑そうな表情を村人たちは浮かべている。


 地面には、リタの手配書が散乱していた。

 ……リタを目撃しなかったか、聞いてみようかな。


「あの、すみません」

「……なんだい、お嬢さん。旅人かい?」

「この紙に書かれた堕天使に、見覚えはありませんか……?」

「……!」


 たまたま声をかけた男性は、顔を青ざめさせた。

 リタについて、何か知っているのだろうか?

 だったら問い詰めなくては。


「な、何か知ってるんですね?」

「……」

「早く教えてください! 私、この堕天使と一緒にいたんです」

「そ、そうなのかい……!?」


 男性はたじろいだ。

 すると他の村人たちも私に気づいて、驚いたような目で見てきた。


「お、お嬢ちゃん。この堕天使は、真夜中に自ら村に現れたよ」

「……え?」

「そんでもって、自分からこう言ってきたさ。『俺には金貨1000枚の賞金がかけられている。この村は貧困なのだろう? 俺を使って賞金を得るといい。仲間には、許可を取ってる』……って。最初は俺たちも悩んだけど、堕天使本人が何も抵抗しなかったし……」

「……それってつまり、堕天使を教会に連れてっちゃったんですか!?」

「あ、あぁ。たぶん……」


 ……お願い。誰か、これを嘘だと言って。

 リタ、勝手にいなくなって……自分から捕まるとか、何してんの!?


「その言葉は嘘です! 堕天使は、私に何の許可も取ってません。今すぐ連れ戻してください!」

「む、無理だよ。数時間前の話だもの。もうすぐ教会へ着いてしまうころじゃないか?」

「……なら、教会の場所を教えて! 私が走っていくから!」

「で、でもそれだと、僕らの賞金が……」


 村人たちは、戸惑ったような様子で顔を見合わせた。


 ……やがて1人の女性が、震えている手を上げた。


「……いや……おかしいわよ、普通。命あるものを売って、お金を得られるとか。これで金貨1000枚もらって、私たちはいい気分になれると思う?」

「……」

「この女の子がかわいそうよ! 教会の場所くらい、教えてあげてもいいんじゃないの?」


 その言葉をきっかけに、村人たちがざわめき出す。

 ――知ってる。人間が、優しい生き物だっていうことは。

 みんな、生きるのに必死なだけだ。この村人たちが悪いんじゃない。魔力だけは抑えろ、私――


「……教会の場所、どこですか」

「……あっちの、高い木の方角が北だ。木を超えた先の山に、教会がある」


 男性が、ため息交じりにつぶやいた。


 よし、これでいい。

 教会の場所はわかったのだから、あとは全力で走るだけだ。


「ありがとうございます、教えてくれて」

「……」


 村の人々は、苦笑を浮かべた。

 貧困に困っているのは本当なのだろう。服もぼろくて、建物も荒い造りだ。

 前にドドラの被害に遭った村と、同じような場所だった。


「お金の件は、いつか私が何とかしますから」

「……!」

「では、またあとで」


 とにかく、間に合わせるしかない。リタが連れていかれる前に。

 私は全力を出し切って、教会へと走り出した。

 もともと走るのが苦手な私。でも、今は疲れを感じている場合ではない。

 白い冠が飛ばされないように。絶対に、リタに追いつかないと――!

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