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彼は彼女を終わらせる  作者: ただの織葉


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2.手袋と距離

目を覚ましたあと、セレナはしばらく天井を見つめていた。

やがて、ゆっくりと体を起こす。


長い黒髪が肩口から滑り落ちた。

窓に映る顔立ちは、華美というより端正で、大人びている。

感情をあまり表に出さないせいか、年齢より落ち着いて見られることが多い。


「……朝ね」


小さく呟き、セレナはベッドサイドに置かれた手袋を手に取る。

黒を基調とした手袋は特製で、魔力を練り込んだ布で作られている。

どんな季節でも、どんな場面でも、これだけは外せない。


セレナは物心ついた頃から、「触れると人の寿命を奪う」呪いにかかっていた。

家族は理由を知っているようだったが

何度聞いても困ったように口を閉ざすので、もう諦めている。


呪いを封じ込める効果がある手袋は

セレナや周りの人を守る大切な道具なのだ。


ノックの音がする。


「失礼いたします、セレナ様」


入ってきたのは、年若いメイドだった。

背筋を正し、視線を伏せ、必要以上に近づかない。

その距離感は、長年この屋敷で共有されてきた暗黙の了解だ。


「お目覚めでございますね。お着替えを」


「ええ、お願い」


セレナはさっと手袋をはめ、ベッドから降りる。

メイドは素早く、だが慎重にドレスを整えた。

布越しであっても、直接触れないように。


親しげな言葉は交わされない。

雑談もない。

かすかに震えるメイドの手から緊張が伝わる。


「手で触れないと呪いは発動しないわ。今は手袋をしてるし、大丈夫」


「し、失礼しました!」


安心させるために伝えたはずが、

自分の緊張感がセレナに伝わってしまったと

メイドは余計に萎縮してしまったらしい。


着替えを終え、部屋を出ると、廊下の先に一人の男が立っていた。


朝日を浴びる銀髪はきらめいて、触ると柔らかそうだ。

長身で、無駄のない体つき。

騎士として鍛え上げられた身体は、威圧感があるはずなのに、不思議と安心感を覚える。


「おはよう、ルシアン」


「おはようございます、セレナ様」


ルシアン・ヴァイス。

セレナの護衛騎士だ。


執務室に向かって歩き出すと

いつも通り、ルシアンもセレナから半歩下がって歩き出す。


「今朝は、少しお顔が優れないように見えます」


「そう?」


ルシアンから話しかけてくることはかなり珍しいので

相当ひどい顔をしているのだろう。


「はい」


「……悪夢を見ただけよ」


そう答えると、ルシアンは一瞬だけ視線を伏せた。


「そうですか」


理由を聞かない。内容を探らない。

それが彼の優しさであることをセレナは知っている。


「ふふ。」


不器用な優しさに思わず笑ってしまう。

私が笑うなんて想定していなかったのだろう。

背後で、ルシアンの動きが一瞬止まり、何事もなかったかのように歩き出す気配を感じた。

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