表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
理性は沈黙し、愛が奏でる。〜天と地のクリスマス・ソナタ〜  作者: 久茉莉himari


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

【5】お隣の天使が甘党でした。〜筋肉スター恋に動揺、ズッ友も走る!〜

恩寵でも修復しきれないほど、ボロボロになった柄on柄のスーツ。

ルシアンはヴェネツィアにある「器の人間」のクローゼットへと戻った――その瞬間。


「遅いっ! 俺様を三時間も待たせるとは何事だ!」


怒鳴り声とともに、クローゼットの扉がガタンと揺れた。

ルシアンが静かに目線を向けると、そこには三角フラスコを片手に仁王立ちするルチアーノの姿があった。


「ルシアン! 大ニュースだ!!

アンジュちゃんがセレニス州でクリスマスを過ごすんだよ!!」


鼻息荒く叫ぶルチアーノに、ルシアンはわずかに眉を動かす。


「アンジュさまが……? それは理由あってのことだろう」


――神の命に違いない。

そう確信した矢先、ルチアーノがさらに一歩踏み出す。


「これは絶好のチャンスなの! 恋のチャンス!

クリスマスデートをするんだよ、ルシアン!」


ルチアーノの手が宙を舞う。

その動きに合わせて、空想の光景が次々と語られていく。


「アンジュちゃんは、お前の紳士的なエスコートにうっとり……!

聖なる夜に、『ルシアン、あなたって素敵ね』ってなるんだ!

煌めくクリスマスツリー、黄金に揺れるシャンパン、星空の下――見つめ合う二人……どうだっ!?」


ルシアンは無言でクローゼットの一番右側のスーツに手を翳し、瞬時に着替えた。

その冷静さが、むしろツッコミよりも鋭い。


「それにな……!」ルチアーノはさらに身を乗り出す。

「ロクシーの奴が絡んでるんだ! あいつは金さえ積めば簡単に寝返る!

俺様がロクシーを雇うから、お前はアンジュちゃんとロマンチックなクリスマス・イブを過ごせ!

ズッ友として俺様が全面協力する!!」


ルシアンは小さく息を吐き、フッと笑う。


「アンジュさまは、私とクリスマス・イブを過ごしたくはないだろう」


「な、なんで!? やる前から諦めるのか!?

恋に障害はつきもの! 俺様、間違ってますか!?」


ルシアンの無表情に、ほんの一瞬だけ影が差す。

それを見たルチアーノは、言葉を止めた。


しかし次の瞬間、彼は再び拳を握りしめ、勢いよく叫ぶ。


「いいから行こう! 俺様がアンジュちゃんの泊まってるヴィラを一棟押さえてあるッ!!」


クローゼットの中に、地獄の王の宣戦布告が響いた。





ヴィラの庭で、兄貴との撮影用の写真を撮りまくっていたリオ。

カメラのメモリが満タンになっても、まだ撮り足りない。


「兄貴とのツーショットは奇跡の芸術だからな……!」

真剣な表情で自撮りを連写していたその時――


隣のヴィラから、水音がした。


リオが振り向くと、朝日を受けて輝く水面の向こうに、ひときわ眩しい存在がいた。


ブロンドの髪は金糸のように光を放ち、白いローブが風に舞う。

信じられないほど美しい女性が、プールサイドで佇んでいた。


「……え……ま、待て待て待て……!

あれ、“アンジュ”じゃないか!?

全米No.1ランジェリーモデルの!? 嘘だろ……!!」


リオはカメラを落としかけながら、慌ててサンベッドへ駆け寄る。

そこではアーチボルトが優雅に読書をしていた。


「アーチー!! 大変だ!!

あのモデルの“アンジュ”が隣のヴィラにいるんだ!!」


アーチボルトは鼻を鳴らし、本を閉じる。


「そんなわけあるか。リオ、日射病じゃろう」


「あるんだよ!! プールで泳いでる!! 本当だってば!!」


「……仕方ないのう……」


重い腰を上げたアーチボルトは、面倒くさそうに隣を覗き込んだ。


次の瞬間――


「落ち着けリオ!! あれは人間じゃない。わしの経験が言っとる!!」


「はあ!? なにそれ!?!?」


リオが混乱していると、壁の向こうから柔らかな声が届いた。


「そこの二人……なぜ叫んでいる?」


覗き込んできたのは、手にチェコレートラテを持ったアンジュ。

朝日に照らされて、まるで神話の一枚絵のようだ。


リオは顔を真っ赤にして、思わず手元のチョコレートを掴んだ。


「……甘いもの、お好きですか!?」


アンジュは一瞬だけ首を傾げる。

――この筋肉男……私にお菓子をくれるのか? なぜ?――


だが次の瞬間、目を輝かせた。


「おう! 私は甘党だ!」


リオは緊張で声が裏返る。

「ハ、ハイッ! ではお部屋にお届けしてもよろしいでしょうか!?」


アンジュはにっこり微笑んだ。


「良かろう!」


その笑顔にリオの心臓がバクンと跳ねた。


――“アンジュ”は僕を知らない!?――

全米を熱狂させているスター選手のリオ・レヴァンを……!?


自分の名がSNSのトレンドを埋め尽くしているこの瞬間に――

隣の天使は、ただ微笑んでチョコレートを待っていた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆

Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪


〈ルシアンとガブリエルをもっと知りたいあなたに…〉


【完結】大天使と“ズッ友”になりたい地獄の王。 〜柄物スーツに一目惚れしてから、すべてが始まった件〜


https://ncode.syosetu.com/n5195lb/


【完結】大天使ガブリエル、地上に爆誕!〜神の命がふんわりすぎて、祈ろうとしたら迷子になりました〜


https://ncode.syosetu.com/n2322lc/


【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜


https://ncode.syosetu.com/n7024ld/


【完結】大天使ルシアン、最強捜査官になる〜神の沈黙と愛の証明〜


https://ncode.syosetu.com/n5966lg/


を読んで頂けるともっと楽しめます(^^)


こちら単体でも大丈夫です☆



\外伝の元ネタはこちら✨/


『最強捜査官』本編 → https://ncode.syosetu.com/n2892lb/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ