第30話 続・王宮模擬戦――覚醒の一閃
【金曜更新】
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「リオ君――私と一騎打ちをしてみないかい?」
闘技場の空気が――一瞬にして変わった。
アレク・ヴァレンティス。
王国騎士団副団長。
若くして百戦錬磨、王国の剣と呼ばれる男。
その存在感は、先ほどまでの精鋭騎士たちとは桁が違った。
観客席も静まり返り、誰もが固唾を呑んで成り行きを見守る。
仲間を振り返り、剣を強く握り直すリオ。
「……わかりました。受けます」
「お兄ちゃん……無理しないで!」
ミナが声を張る。
「相手は……王宮騎士団の副団長……」
リズの声には、はっきりと焦りがにじんでいた。
「ギュルルル!」
ルーナの翼がはためき、心配そうに鳴く。
だが――リオの眼は迷いなく前を見据えていた。
(……未来鑑定が告げている。
勝ち目はほとんどない……
だけど、ほんの一瞬――届く未来が見えるんだ)
♢♦︎♢♦︎♢
「リオ君……行くよ!」
アレクの剣が、光の弧を描いた。
一見、ただの踏み込みと斬撃――しかし、
「速いっ……!」
スキルで未来を予測していても、反応が追いつかない。
視界を裂く剣を、必死に受け止めるが――衝撃で腕が痺れる。
「悪くない反応だね」
アレクは笑い、次々と斬撃を繰り出す。
一撃一撃が重い。鋭い。まるで研ぎ澄まされた嵐。
「くっ……!」
リオは防御に徹するが、押される一方。
「副団長が本気を……!」
「冒険者が相手になるはずがない!」
観客席と騎士団からどよめきが広がる。
――仲間の声がリオの背を押す。
「お兄ちゃん! 信じてる!」
ミナが叫ぶ。
「リオなら……届く!」
リズが祈るように視線を送る。
「キュルルル!」
ルーナが高らかに鳴いた。
その声が、心に火を灯す。
(僕は……一人じゃない。
絆がある。守りたいものがあるんだ!)
リオの眼が金色に輝く――視界が鮮烈に研ぎ澄まされる。
アレクの剣筋が、はっきりと見える。
「――はああああっ!!」
渾身の踏み込み。
リオの剣から、光がほとばしる。
「なに……!?」
アレクの瞳が驚きに揺れる。
リオの剣から解き放たれたのは、新たな剣技。
「《閃光裂斬》ッ!」
光を纏った一閃が、アレクの剣をはじき飛ばし、地を裂いた。
轟音。土煙。
「おおおおおっ!」
観客席が、爆発するように沸き立った。
リオの体は限界を超えて震えていた。
しかし、それでも――アレクは、まだ立っていた……剣を握りしめて。
「今のは……新しい剣技かな?」
アレクは目を細め、静かに息を吐く。
そして口元に微笑を浮かべた。
「素晴らしいよ――リオ君。君の剣は、まだ伸びる。
真の《守誓者》にふさわしいことが、みんなに伝わっただろう。
……ここで終わりにしよう」
そう言って、リオに背を向けると自ら場外へと降りた。
歓声と拍手が闘技場を揺らす。
模擬戦は――光の絆の成長と、リオの覚醒を刻み込んで幕を閉じた。
♢♦︎♢♦︎♢
一方その時――
王子アルフォンスは、観客席でうなだれていた。
握りしめた拳が、怒りを押し殺すように小刻みに震える。
そしてその横で――
別の人物もまた、悔しさを噛み殺すように歯を食いしばり、誰にも気づかれぬよう、殺気を押し殺していた。
その影は静かに――次なる波乱の火種を宿していた。




