第29話 王宮模擬戦――歓迎の仕方が物騒すぎる
【金曜更新】
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王宮の演習場。
大理石に囲まれた広大な闘技場には、王族や貴族、そして数多くの騎士団員たちが詰めかけていた。
これから始まるのは――
王宮騎士団と冒険者パーティ光の絆との公開模擬戦。
観客席に緊張が走る。
「行けぇ! 騎士団の力を見せろ!」
「殿下に勝利を捧げよ!」
甲冑に身を固めた十数名の精鋭騎士が、一斉に剣を抜いた。
鋼が擦れ合う音が闘技場に響きわたり、開始の号令とともに模擬戦は幕を開けた。
♢♦︎♢♦︎♢
十数名の騎士が、真っ直ぐ突撃してくる。
その威圧感に、観客席の貴族たちが思わず息を呑む――
一瞬で蹂躙されるだろう、と。
だが、光の絆の四人は一歩も退かなかった。
「ここまで来たら――やるだけだ!」
リオが深く息を吸い、剣を構える。
「お兄ちゃん――楽しめば大丈夫だよ!」
ミナが杖を掲げ、詠唱を走らせる。
「キュルルルル!」
ルーナが空を舞い、風を呼ぶ。
「……任せて」
リズの影が地を這い、黒い鎖のようにうねる。
即座に前衛と後衛へ散り、冒険の死地で培った連携を繰り出す。
「《クイックオール》!」
ミナの詠唱で仲間の動きが一斉に加速する。
「ギュルルルッ!」
ルーナの風が吹き荒れ、突進してきた騎士たちを場外へと弾き飛ばした。
影が閃き、リズが低く囁く。
「――《影縫い》」
地を走る黒い鎖が、複数の騎士の脚を一瞬で絡め取る。
「はあああっ!」
リオが駆け込み、剣技でその隙を一気に斬り伏せる。
「くっ……なんという連携だ!」
「冒険者風情がここまでとは……!」
観客がざわめき、精鋭と謳われた騎士たちが次々に倒れていく……
♢♦︎♢♦︎♢
やがて場に残ったのは、ただ一人。
大盾を構えた巨躯の男。
「……グレゴール、ロッシュ!?」
「えっ……あの“鈍重な盾男”が、最後まで残ったのか?」
ざわめきが広がる。
身長は二メートル近く、筋骨隆々の体躯。
だが灰色の瞳はどこか優しく、黙々とタワーシールドを構える姿には、不器用ながらも仲間を背負う強さが滲んでいた。
倒れた騎士たちの前に、無言で立ち続けるその背中は、まるで盾そのものだった。
「……残ったのは俺だけか」
ぼそりと低くつぶやく声に、リオは思わず息を呑む。
(……壁みたいだ)
動かぬ巨盾。その存在感だけで、前に進むのが困難に思えた。
「全員で行くよ!」
「もちろん!」
「ええ!」
「キュルルル!」
四人が一斉に攻めかかる。
だが――
「はああっ!」
リオの斬撃を、タワーシールドが正面から受け止める――びくともしない。
「――《影縫い》!」
リズの黒鎖が伸びるが、盾の一振りで払われる。
「《ウィンドスピア》!」
「ギュルル!」
ミナとルーナの魔法が突き刺さるが、盾の壁に阻まれて火花を散らすのみ。
「な、なんて防御力なの……!」
「まるで動く城塞……!」
観客がどよめく。
グレゴールは一切反撃をせず、ただ仲間を守るかのように立ち続けていた。
(この人……仲間を守るために、ここに立ってるんだ)
リオは強く剣を握り直し、仲間に視線を送る。
「みんな! 合わせるぞ!」
「「うん!」」
「キュルルル!」
連携が重なる。
リズの影が一瞬、足を縛る――
ミナの《フィジカルブースト》で強化されたリオの一撃が、盾の角度を崩す。
その隙を逃さず、ルーナの風が盾の裂け目を貫いた。
鈍い衝撃音。
巨体がわずかに揺れ、やがて膝をつく。
「……俺の負けだな」
グレゴールは静かに盾を伏せ、苦笑を浮かべた。
「……冒険者が、王宮騎士団を……」
「しかも、あのグレゴールに膝をつかせるとは……!」
大歓声が闘技場を揺るがす。
♢♦︎♢♦︎♢
――まだ、戦いは終わっていなかった。
グレゴールの背後から、一人の青年が歩み出る。
その一歩ごとに、闘技場の空気が張り詰めていく。
鋭い青の瞳。整った顔立ちに覇気を宿す――
王国騎士団副団長、アレク・ヴァレンティス。
「さすがだね、光の絆。
精鋭を退け、グレゴールまで倒すとは見事だよ」
剣を抜き、軽やかに構える。
「リオ君――私と一騎打ちをしてみないかい?」
その言葉に観客席がどよめき、空気が一変する。
リオの心臓が高鳴る。
副団長。若きエース。王国の誇り。
放たれる剣気は、ただの模擬戦とは思えぬほど鋭かった。
「……お願いします!」
リオは一歩を踏み出す。
冒険者の絆と、騎士団の誇り――
二つの力が、火花を散らして激突する!




