第21話 “宿命の鏡”と因果の目覚め
毎週金曜で更新の予定です。少しゆっくりにはなりますが、よろしくお願いします!
未熟な点も多く、文章や設定に至らないところがあるかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです。
ダンジョン探索の試験官は、リオの時と同じくダリルが担当することになった。
以前から、リオたち兄妹の話を聞いていたダリルだが、とくにミナの病が完治したと知って、心から喜んでいた。
「君がミナか? 俺はリオの師匠、ダリルだ。」
そう言って、にやりと笑いながらミナに視線を向ける。
「元気になって本当によかったな。もうダンジョンデビューなんだって?
……よし、俺のことは師匠と呼んでいいぞ!」
ミナはぱっと顔を明るくして、うれしそうにうなずいた。
「はい! 師匠、がんばります!」
「それに、ドラゴンを連れているってウワサも聞いてるぞ。」
「キュルルッ!」
ルーナが代わりに元気よく返事をする。
「ドラゴンって、俺の言葉がわかるのか……⁈」
♦︎♢♦︎♢♦︎
4人はダンジョンの入口から地下へと足を踏み入れた。
リオは未来鑑定スキルで、隠されたトラップやモンスターの気配を正確に察知し、仲間に的確な指示を出す。
「次の角、トラップがあるよ。気をつけて。」
リオの声に従い、ダリルも感心したようにうなずく。
「お前の勘……いや、これはもう勘の域じゃないな。」
ミナとルーナも、リオの導きに自然と合わせ、迷いなく動く。
連携は見事で、トラップもモンスターも難なく突破していく。
「……すげぇな、お前たち」
思わず息を呑むダリル。
あっという間に地下二階を制圧し、ダリルが提案する。
「この調子なら、もう少し潜ってみるか?」
ミナとルーナは輝く目で「うん!」と即答した。
♢♦︎♢♦︎♢
気づけば、いつの間にか地下五階のボス部屋の前に立っていた。
「……さすがにここから先は危険だ。ボス部屋には入らない――」
言い終わる前に、扉がひとりでに開き、ミナとルーナが勢いよく駆け込んでしまった。
「お、おい! 待てって!」
慌ててリオとダリルも追いかける。
部屋の中央には、巨大なビッグスライムが不気味に揺れていた。
「来るぞ!」
リオが構え、ダリルは後方で見守る。
――だが、
「お兄ちゃん、ルーナ――プロテクトブースト!」
ミナの詠唱とともに、二人は青い光に包まれ、防御力が上昇する。
「それと――スピードブースト!」
続けて敏捷上昇の魔法がかかり、ルーナはふわりと宙へ――風の魔力をまとい、ビッグスライムの周囲を高速で旋回する。
「キュルルルッ!」
渦巻く風が唸りを上げ、ビッグスライムの巨体をその場に釘付けにする。
「お兄ちゃん、パワーブースト!」
攻撃力上昇がリオに付与される――リオには核の位置が《見えて》いる。
「今だ、ルーナ! 動きを止めて!」
風の魔法がスライムを縛り、リオは跳躍。
核へと一直線に刃が突き刺さる。
スライムは抵抗する間もなく崩れ落ち、床へ溶けて消えた。
――ミナはきょとんと首を傾げる。
「師匠? ボスって、いつもこんなに弱いんですか?」
「キュルルッ?」
ルーナも不思議そうに鳴いた。
ダリルは呆然と立ち尽くし、思わず額に手を当てる。
「……いや、普通はこんな風にはいかないんだが……」
(……もしかして、師匠の俺より強い……?)
ミナとルーナは嬉しそうにハイタッチし、リオは思わず苦笑した。
床には、一枚の鏡が残されていた。
淡い光を放つ、ただならぬ気配の鏡。
「《鑑定》!」
ミナが鑑定スキルを発動する。
「……“宿命の鏡”。複数の未来を映すけど、使えるのは一度きり……だって」
リオは息を呑む。
ミナは期待に満ちた目で鏡を見つめ、
「ねえ、これで今日の夜ごはんとか分かるかな?」
「いや、そういうんじゃないと思う……」
リオが鏡をゆっくりと持ち上げると――
《命運スキルレベルが上がりました》
視界が白に染まる。
未来が奔流のように押し寄せる。
燃える街。
泣き叫ぶ子ども。
影が空を覆う。
鏡は砕け散った。
「お兄ちゃん⁈……だいじょうぶ……?」
ミナが不安げに、リオの袖をつかむ。
「……平気だよ。ありがとう。」
ミナは安心したように、しかし真剣に尋ねる。
「じゃあ……夜ごはんのおかずは?」
「本当に心配してる?」
リオは思わず吹き出した。
ルーナも「キュルルッ!」と楽しそうに鳴く。
♦︎♢♦︎♢♦︎
――その頃、
ギルドの奥にあるギルド長室では、重い沈黙が落ちていた。
ギルド長のバルドは机越しに、自分を毒殺しようとしたリズを見つめる。
「リズ。俺に毒を盛った件……誰の命令だ?」
「……言えません」
うつむいたまま、震える声で答えるリズ。
その瞳には、追い詰められた影が宿っていた。
バルドは拳を握りしめる。
「あんな猛毒をお前が自分だけで用意できるわけがない。
……お前が何を背負わされているのかは知らない。だが、このままだと、お前が罪を着せられてしまうぞ?」
しかし、リズは唇を噛んだまま動かなかった。
揺れる灯りが、リズの影を壁に大きく映し出す。
(……どうする……このまま問い詰めても、心は閉ざされたままに……)
――その時。
ダンジョン探索を終えたリオ、ミナ、ルーナ、ダリルの四人が、夕闇に包まれたギルドへと戻ってきた。




