第2話 ギルド長、毒殺事件
まだまだ未熟な点も多く、文章や設定に至らないところがあるかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです。
拙い作品ではありますが、登場人物たちの成長や物語の世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
《ピコン!》
脳の奥に、何かが弾けたような電子音が鳴り響いた。
《鑑定スキルのレベルが上がりました》
《新スキル:命運鑑定を取得しました》
(……な、なにこれ⁈)
視界の奥が熱を帯び、脳内に不可解な映像が流れ込む。
それは――断片的な“過去”と“未来”の記憶。
(バルドさんが倒れる……そして……ダリルさんのポケットに、小瓶……?)
映像は、人の目には見えないはずの光景だった。
自分にしか見えない、誰にも知られていない“情報”。
妄想なのか、それとも鑑定の力が導いた〈真実〉なのかはわからない。
(もし……これが本当なら……)
言わなければ誰も気づかない。
言っても、信じてもらえる保証はない。
……それでも――
(見過ごすなんて、できない!)
震える指先を抑え、リオは隣のエミリアの袖をそっとつかんだ。
「……エミリアさん、あの……」
小さく息をのみ、続ける。
「理由は説明できません……でも――」
脳裏に、薄紫の花弁と銀色の葉を持つ草が思い浮かぶ。
澄んだ香りを漂わせるその薬草は――銀花草。
古くから猛毒を和らげると伝えられる、非常に希少な薬だ。
鑑定スキルがほとんど役に立たないリオが、書物や人づての話から、必死に学び得た知識のひとつであった。
「……ほかの薬じゃ効きません。
銀花草の煎じ薬じゃないと、バルドさんは助からないと思います」
その真剣なまなざしに、必死の色がにじんでいた。
「あと、ダリルさんのポケットの中……調べてください」
一瞬、エミリアは驚きの顔でリオを見つめた。
だが、軽くうなずくと、その表情からはすぐに迷いが消えていた。
「……わかったわ」
短くそう告げると、ギルド内に響く鋭い声を放った。
「ギルド員の皆さん! ダリルさんのポケットを確認してください!
あと、薬師の方! “銀花草”の煎じ薬を急いで!」
ギルド員たちは一瞬戸惑ったものの、次第に動き出した。
そして――
「お、おい……これ、なんだ……?」
ギルド員の一人が、ダリルのポケットから小さな琥珀色の小瓶を取り出す。
「違うっ! 俺じゃない! 本当に知らなかったんだ!
毒薬だなんて、そんなつもりじゃ……!」
ダリル――
Bランクの剣士で、冒険者たちの兄貴分として慕われていた男。
今は、顔を真っ青にして必死に叫んでいた。
やがて、白湯のように湯気を立てた〈銀花草〉の煎じ薬が運ばれてくる。
それは一杯で金貨数枚という、希少で高価な薬だった。
急いで、バルドの口元に薬が流し込まれる。
ざわめきと静寂が交錯する、張り詰めた空気の中――
「う、うぉぉ……! まだまだ食えるぞおお!」
バルドの叫び声が、突然ギルド内に響きわたる。
その瞬間、あちこちから安堵の息が漏れた。
正気を取り戻した後の、その一言。
大食漢の“生還”は、皆にとって何よりの安堵だった。
……だが、その時。
先ほど取り出されたはずの小瓶が、ギルド員の手元からポロリと滑り落ちた。
カラン――と乾いた音を立てて床を転がり、リオの足元で止まる。
「……!」
リオが反射的に手を伸ばし、小瓶を拾い上げた瞬間――
再び、脳内に閃光のような映像が走った。
それは、さっきよりもさらに鮮明な“未来の記憶”だったーー