第12話 朝のギルドと新たな挑戦
毎週金曜で更新の予定です。少しゆっくりにはなりますが、よろしくお願いします!
未熟な点も多く、文章や設定に至らないところがあるかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです。
朝早く――まだ薄暗いギルドの扉が、静けさを裂くように重々しく開いた。
小さな影が、静まり返った館内へ入ってくる。
――リオだった。
眠たげな空気を切り裂くように、小さな足音が床に響く。
「おはようございます、エミリアさん!」
すでにカウンターに座っていたエミリアが顔を上げ、ふわりと笑った。
「おはよう、リオさん。今日もずいぶん早いのね」
「はい。……昨日の《結晶魔石》の買取金額を、受け取りに来ました」
封筒を開き、帳簿を整えるエミリアの手付きは手慣れている。
やがて顔を上げた彼女は、いつになく真剣な声で告げた。
「大金貨一枚と、金貨八枚。――驚くほどの額だけれど、間違いなくリオさんの手柄よ」
「……えっ!? 本当に!? こ、こんなに……!」
リオの目がまん丸に開く。
「結晶魔石は、それだけ希少で高価なの。リオさんが見つけて持ち帰ったからこそ、この金額になったの。立派よ」
「……! ありがとうございます! ――冒険者って、本当に稼げるんですね……!」
「冒険者だから稼げたんじゃなくて――今までの“リオさんの努力”よ」
エミリアの一言に、リオは不意を突かれたようにきょとんとする。
一瞬黙り込み、やがて照れくさそうに笑った。
あどけなさの残る笑顔。その奥に、小さな決意の光が宿り始めていた。
「そうだ! 今朝、このナイフで朝ごはんを作ったんです。
パンを切ったら、まるで空気を裂くみたいにスパッと切れて……
妹のミナも“おいしい!”って喜んでくれました」
得意げに語りながら、リオは腰の短剣をちらりと見せる。
銀の柄に刻まれた狼の紋章が、朝の淡い光を受けてわずかに輝いた。
その瞬間――エミリアの心臓が跳ねる。
(やっぱり……フェンリルソード……! 伝説級の武器を……! まさか、平然とパン切りに使うなんて……!)
驚愕を押し隠すように息を飲むエミリア。だが当のリオは気づかず、無邪気に続ける。
「今日もダンジョンに挑戦してみます。
――どこまで行けるか分からないですけど……一人でやってみようと思います!」
まっすぐな瞳。
その声には一切の迷いがなかった。
エミリアの胸に、誇らしさと不安が同時に広がっていく。
それでも彼女は、ただ静かに頷いた。
「……気をつけてね、リオさん」
「はい! エミリアさんも、ありがとうございます!」
小さな背中が、朝日に染まる扉の向こうへ消えていく。
エミリアはその後ろ姿を、しばらく見送った。
そして胸の奥で、そっと呟く。
(……あの子は、きっとまた“とんでもない勘違い”を起こすわね。
良い意味でも、悪い意味でも――きっと)
♢♦♢♦♢
ダンジョンの入り口。
すでに多くの冒険者たちが列をなし、重装備の金属音やざわめきが空気を震わせていた。
リオも最後尾に並び、憧れを込めて巨大な転送陣を見つめる。
「いつか……自分も、あの転送陣でダンジョンに入れるようになりたいな……」
目を細めたリオの瞳には、子どもの夢と冒険者の本能――そのどちらとも取れる光が宿っていた。
――このダンジョンは、地下五階ごとにボス部屋が設けられた特別な構造を持つ。
複雑な迷宮の奥で、五階ごとに巨大な扉が立ちはだかる。
その扉の向こうには、恐るべき魔物――ボスが待つ。
打ち倒した時のみ、奥に転送陣が姿をあらわして帰還するか、さらに進むかを選べるのだ。
さらに、一度でも突破した冒険者は、次からは入り口脇の転送陣を使い、前回の到達階から再開できる。
――転送陣を使えるのは、実績ある限られた冒険者のみ。
その姿は、誰もが憧れる誇りと格の証だった。
前回の探索で、リオが辿り着けたのはわずか地下二階。
列に並びながら、拳をぎゅっと握りしめる。
やがて順番が巡り、リオは入り口の石段を一段ずつ下りていった。
ひんやりとした空気が肌を包む。
――こうして、新たな挑戦の幕が上がる。




