第11.5話 〜エミリア視線〜 受付嬢エミリアのまなざし
ギルドの朝は、静かな空気に包まれて始まる。
私はカウンターを整えながら、昨日の出来事を思い返していた。
リオさんが、ついにギルドの一員になったのだ。
彼の成長を見守ってきた私にとって、それは本当に嬉しいことだった。
けれど、やはり気になる――。
私はギルドでも、特別な鑑定スキルを持っている。
自分と同じか、それ以下のスキルレベルなら“数値”として見抜ける。
私の鑑定スキルは“レベル4”。
――たとえば、ダリルさん。
ベテラン冒険者の剣士スキルでさえ“レベル3”。
それなのに、リオさんは出発前には無かった剣士スキルを、ダリルさんと“同じレベル”――レベル3まで、わずか1日で身につけてしまった……
しかも彼のスキルは《命運鑑定》。
今まで他の誰にも見たことがないスキルだ。
さらに、たった一日で手に入れた3つのスキルも、どれもこれまで私が見てきた冒険者には無いものばかり。
――本当は、リオさんが特別なスキルを持っていることは知っていた。
でも、《命運鑑定》のようなスキルは前例がなく、一般的な鑑定士として周囲に伝えられなかったのだ。
私自身も、彼の成長と変化を密かに期待し、応援している。
カウンター越しに、今日もリオさんがギルドにやってくる。
新しい冒険者として、少し緊張した面持ちで……
私はいつも通り、やさしく微笑みかける。
「おはようございます、リオさん」
「おはようございます、エミリアさん」
その返事に、私は心の中でそっとエールを送った。
――でも、昨日からどうしても気になっていることがある。
リオさんの腰に、昨日は見慣れない短剣が下がっていたのだ。
あの形、あの色――。
私の記憶が確かなら、あれは伝説の魔獣“フェンリル”の牙から作られたと言われる、幻の短剣。
(まさか……でも、あれは……)
私はリオさんの後ろ姿を目で追いながら、心の中で静かに驚きの声をあげていた。
胸の奥で正体の知れない、ざわめきが広がり始める――




