第11話 鑑定士リオ、正式メンバーに
ダンジョンから戻ったリオとダリルは、まっすぐギルドのカウンターへ向かった。
「おかえりなさい、リオさん。ダリルさん。
今日はずいぶん収穫が多かったようですね」
受付のエミリアが、やわらかな笑顔で二人を迎える。
「ダリルさんのおかげで、こんなに魔石が取れました」
リオは笑顔で、採掘した大量の魔石を差し出す。その横で、ダリルは得意げに胸を張っていた。
「すごいですね。初めてのダンジョンで、こんなに採れるなんて珍しいですよ」
エミリアは品物を手際よく並べ、ひとつずつ丁寧に鑑定していく。
しばらくすると、彼女がわずかに息を呑み、手を止めた。
クイックスライムから採れた《結晶魔石》を手にした瞬間だった――
「これは……《結晶魔石》ですね。
このダンジョンの浅い階層ではとても珍しい。
よろしければ、ギルドで買い取らせていただきますが……」
リオは驚きと戸惑いでエミリアを見つめる。
「……お願いします」
エミリアは優しく微笑みながらも、残りのアイテム査定をスムーズに終える。
ふと、彼女の視線がリオの腰と胸へ向かった。
ーーその銀色の柄は、神秘的な光沢を放ち、月と狼の刻印が刻まれていた。
ーー淡い青紫色の宝石をあしらったペンダント。
竜族の紋章を思わせる意匠が、ほんのり光を宿している。
どちらの品も、新人であることを考えれば、あまりにも特別な品だ。
(……こんな品まで手に入れていたなんて)
エミリアはすぐに何もなかったかのように笑顔を整えた。
「正式な買取金額は、明日お知らせします。
ご都合のよろしい時に、またいらしてくださいね」
その時、奥の部屋からギルド長のバルドが歩み寄ってきた。
「リオ。報告に来てくれ」
「はい!」
リオがバルドのもとへ向かう。
カウンターにはダリルとエミリアだけが残る。
ーーダリルはまわりを気にしつつ、低い声でエミリアに話しかける。
「なあ、リオって本当にただの鑑定士なのか?
帰り道、モンスターに一匹も会わずに抜けられた。
どう考えても、“やけに当たる勘”だけじゃ無理だろ?」
エミリアは扉越しにリオの姿を見送りながら、ため息をひとつ漏らす。
「やけに当たる勘だけじゃなく、“努力”も彼は人一倍なんです。
……でも、それだけじゃない何かを持っているかもしれませんね」
柔らかい表情のまま語るエミリア。
だが、その瞳はほんのり緊張をはらんでいた。
ダリルが何か言いかけた時、リオとバルドが戻ってくる。
バルドはギルドの面々へ力強く声をかける。
「リオは、本日の研修を無事に終えた。
これからは正式に“ダンジョン探索メンバー”として活動してもらう」
「おお、やったな!」
ダリルが喜びの声を上げ、リオの肩をぽんと叩く。
「おめでとうございます、リオさん。
これからもよろしくお願いします」
エミリアも優しく微笑みかける。
「……はい。よろしくお願いします!」
照れくさそうに頭を下げるリオ。
その後、ダリルとリオは夕食へ向かうためギルドを後にした。
カウンターにはエミリアとバルドが静かに残る。
ーーしばらく沈黙。
やがて、バルドが小さく笑った。
「……言うまでもないが、あの短剣やペンダントーー分かってるよな?」
エミリアは伏し目がちに、肩を小さくすくめる。
「……気づかないふりくらいなら、できますよ」
「そうか……
あの子は、これからもっと面白いことをしてくれそうだ」
バルドは意味深な笑みを残し、奥へと姿を消す。
夕暮れのギルド。
エミリアは、去っていくリオの背中を――窓越しに、長く見送っていた。
「……やってくれましたね、リオさん」




