第10話 新スキル:魔物予知鑑定
毎週金曜で更新の予定です。少しゆっくりにはなりますが、よろしくお願いします!
未熟な点も多く、文章や設定に至らないところがあるかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです。
「よし、これで目的の基礎魔石も十分だな。リオ、初仕事にしては上出来だ!」
ダリルが肩に大きな袋を担ぎ、どこか誇らしげな笑みを浮かべる。
地下2階――ギルド認定・迷宮試験《通称:ギルテス》の課題地点である砕石場。
袋の中には、灰色がかった半透明の魔石がぎっしりと詰まっていた。
《基礎魔石》――ダンジョンの壁や床に鉱石のように埋まり、ツルハシで掘り出して集められる。
冒険者にとっては定番の収入源であり、日用品や道具の燃料にも使われる、“生活の石炭”とも呼ばれる存在だ。
「ありがとうございます。
でも……帰り道こそ、気を抜いたらダメなんですよね?」
リオは袋を持ち直しながら、相変わらず慎重な声で返す。
「おう、出口まで油断すんなよ。最後の最後でヘマすると台無しだからな」
ダリルは人差し指を立てて、何やら得意気にウインクする。
「……それと、帰ったら今日は俺のおごりで晩めしだ。好きなだけ食っていいからな!」
「えっ、本当にいいんですか?」
ダリルは胸を張って、鼻息も荒く続ける。
「当たり前だろ。初仕事だからしっかり祝ってやる。
困ったことがあったら何でも相談しろよ?
――お前の頼れるダンジョンの“師匠”だからな、俺は!」
(……なんか、おごりを強調してるような……)
リオは思わず、少し苦笑いしてしまう。
♢♦︎♢♦︎♢
「そういえば、さっきのと同じものかな?」
帰り道にふと、手持ちのクイックスライムを倒したときに手に入れた魔石と比べてみる――
基礎魔石とは見た目も明らかに違っていた。
表面は滑らかで、淡い青紫の光を不思議そうに反射し、内部には細かな火花のような輝きが脈打つたびに揺らめく。
クイックスライムから取れた魔石は、《結晶魔石》と呼ばれる希少で高価なものだった。
(……これも魔石? でも、色も模様もまるで違う……)
拾い上げると、掌にほんのり温かい感触がひろがる。
「ピコン!」
頭の奥で、電子音のような声。
《鑑定士スキルがレベル5に上がりました》
《新スキル:魔物予知》
「……!」
リオは思わず周囲を見まわす。
視界の隅に、小さな光点がいくつも浮かび上がる。
2つの青の光点を中心に、赤が通路の先や壁の向こうで点滅を繰り返している。
(青は自分たちみたいだけど、赤はーーもしかして……魔物?)
青紫の魔石を握りしめたまま、リオは確信した。
「ダリルさん、あっちの通路と左の角に魔物がいます。
細い道を通れば、全部避けていけるはずです!」
ダリルは思わずリオの顔を覗き込む。
(本当なら、こんな勘は流すところだが、リオのは“やけに当たる勘”だからな……)
リオの言葉通りに進むと、不思議なくらい魔物の姿が見つからない。
たとえスライムやゴブリンの姿がこちらから見えていても、向こうからは気付かれずに通り抜けられるのだ。
(――魔物と戦闘にならない⁈
気付かれていないのか……?)
ダリルは、ぽりぽり頭をかきつつ、驚いた顔をする。
(普通はベテランの斥候でも、ここまで読めねぇぞ……
“無能”なんて言ってた奴ら、どの面下げて言ってたんだ……?)
「リオ、お前、やっぱりすごいよ。俺が初めてダンジョンに入った頃なんて、自分の居場所すらわからなくて泣きそうだったからな」
リオは少し照れ笑いを浮かべつつ、真正面から返す。
「……ダリルさん――いえ、“師匠”のおかげです。今度は、一人で探索できるようになりたいです」
「はっは、目標は高いほうがいい。……でもまあ、当分は“師匠”の俺を頼っていいからな!」
ダリルは恩着せがましく親指をグッと立てる。
(やっぱり、“師匠”って呼ばれたいんだ……)
リオはまた小さく苦笑いした――
♢♦︎♢♦︎♢
やがて、夕暮れのギルドの扉が見えてくる。
「報告が終わったら、今夜はリオの好きなものを食うぞ。おごりの約束だからな!」
「……師匠、ありがとうございます。
でも、本当にお財布は大丈夫ですか?」
「”弟子”のためなら、いくらでも出すぞ!
……まあ、今日だけ、だがな……」
ダリルは語尾を小さくしながら、さりげなく懐の財布を押さえた。
その様子にリオは、どこか嬉しそうな苦笑いを浮かべる。
ギルドの扉を押し開けるリオの背中には、少し照れた静かな自信と――
次の冒険への新たな覚悟が、そっと灯っていた。




