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暗殺者は不死の魔女を殺したい  作者: Mikura
三章 不死の魔女と暗殺者の終わりを目指す旅

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【コミックス一巻発売記念】海辺のまち



 ララニカは不老不死の祝福を返し、ただの人間になった。

 長い経験から狩猟には長けているし、そのあたりの一般人に比べれば体の動かし方を良く知っている。けれど長い間不死であったため、自分の身に無頓着だ。

 それは共に居て痛いほど実感する。ノクスはそれが心配でならなかった。



「この街は結構発展してるけど、人の出入りが激しすぎるし、スリも多かったからないね」


「そうね。一見賑やかだけれど、裏側の世界も広そうだわ」



 ノクスとララニカは、二人で暮らす家を探して旅をしている。南の暖かな気候の地域を色々と回っているが、今のところこれといった場所は見つかっていない。

 今回は海辺の賑やかな観光地へとやってきたが、ここは旅行者として訪れるにはいいけれど、永住するには向かないというのが二人で出した結論だ。

 二人で宿まで戻ってきたが、歩き回って疲れた。海を眺められ、吹く風が心地よいテラスのソファに二人で座って、しばらく休憩する。……こうして風に当たりながら夕日を眺めるのは贅沢だけれど、これは観光としてたまに訪れて見るからいいいものなのかもしれない。



「今はいいけど、夏になると暑そうだなぁ……この先気温が上がると過ごし辛いかもね」


「そうね……今日は少し疲れたし、シャワーを浴びたら休もうかしら」


「……ララニカ、夕食はきちんと食べないと」


「貴方はしっかり食べなさい。私は別に食べなくてもいいわ」



 子供の頃、ララニカがスープの具材をほとんどノクスに与えて、自分は崩れた具の端しか沈んでいないような皿を、なんでもない顔で食していた姿を思い出す。

 あれは成長期のノクスのためでもあっただろうけれど、何より彼女が不死で、食べずとも死ぬことがないからだったのだと後になって知った。



「駄目だよララニカ。……今の君は、ちゃんと食べないとすぐに痩せる」



 隣に座る彼女の腰に手を回し、そっと抱き寄せる。毎日こうしていれば、彼女の体調の変化にも気付きやすい。……少しやせたかもしれない。



「……そうだったわね。まだ、あまり実感がないのよ」


「だから俺がしっかり管理する。……ちょっと痩せてる気がするから、たくさん食べて」


「……そんな顔しないでちょうだい。ちゃんと食べるわよ」



 ノクスの健康には気を遣うが、ララニカ自身は己の健康に気を遣うことを忘れがちだ。己に気を遣わずとも死なずに生きてきた時間が長すぎて、自己管理が甘いのである。

 放っておいたらすぐに病気にかかって死んでしまう。そんな気がして、ノクスはララニカから目を離せない。


(まあ、心配はそれだけじゃないけど……)


 夕日に照らされたララニカの金の髪は、とても美しく輝いている。この美しい髪色を持つ人間はほとんどいない。おそらくそれは天族の子孫だけが持つ特徴だからだ。

 街を歩けば大勢の目を引くし、そして何より彼女自身がとても美しいため、欲の籠った目を向けている者も珍しくはない。……その目を潰してやろうかと何度思ったことか。実行すればララニカに怒られるので我慢しているだけだ。


(二人きりでどこかに引きこもって、ララニカの体を完全に管理して過ごしたい……と思わないこともない……)


 彼女を最も長生きさせるなら完璧な管理をすればいい、という考えが頭によぎることはある。しかしそれはララニカの自由を奪うことであり――もっといえば、奴隷の生活と変わらない。

 奴隷として生きた経験があるノクスも、ララニカも、それは望まない。だから傍から離れず、変化を見逃さず、あらゆる面で守りながら生きていくしかないのである。……そして、それはノクスが望んだ生活でもあるのだ。



「……私は面倒でしょう。悪いわね、人間の生き方が身についていなくて」


「ううん。……俺は今が幸せだから」



 死ねない魔女だったララニカを殺すことを目標に生きてきたノクスだが、根底にあったのは彼女と共に生きたいという願いだ。

 それが今、叶っている。この時間ができるだけ長く続くよう努力するのは当然で、そして努力できることは幸福でしかない。



「長生きしてね、ララニカ」


「……私を殺す予定の人の台詞とは思えないわね」


「だって、殺すまでは生きていてもらわないと」



 矛盾した言い回しかもしれないが、最期の瞬間まで殺す気はない。置いて逝くのも、置いて逝かれるのも嫌だから、どちらかが本当に命尽きるまでは生きる努力も生かす努力も怠らないだけなのだ。

 そんなノクスを見上げたララニカは、仕方のない子供でも見るような優しい顔で笑った。



「好きにしなさい。私の命は貴方にあげたのだから」


「…………そういうこところ、ほんとにさぁ……」



 この魔女は、リゾート地の絶景よりもよっぽど魅力的で、心を揺さぶってならない。夕日など見えないくらい、ぴたりと寄り添って彼女で視界を埋め尽くした。




 美しい景色は求める必要がないかもしれない。ならば、次はどんな町へ行こうか。




こんな感じで二人は旅をして家を探していると思います。


本日コミックス第一巻が発売です、ありがとうございます!

とてもかわいいノクスとララニカのほっこり…(ほっこり…?)が見られます!

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小説版特設サイト『暗殺者は不死の魔女を殺したい』
コミックガルドで連載中
『コミカライズ』
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