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Unknown Story  作者: 六月 真珠
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3話『四人組の男女』



アルファール王国 王都リオナから馬を使って東へ6日程進んだ場所にある辺境の村リアーナ。


そこに隣接する森から奥へはいると草や木の葉はより濃い緑色になる。

葉の色が変わった場所からは強大なモンスターや魔獣が数多く生息している危険地帯、通称『魔の森』。


そこに四人組の男女が野営をしていた。



「…結界は張った。カリナ、先に寝るといい」



フードを被った少女が赤髪の少女、カリナに気を使い言葉をかける。

カリナは『ありがとう』と言って水を一気飲みして一息つく。


焚き火の準備をしていた男の一人は疲れを全く感じていないのか満面の笑みを浮かべてフードの少女に革袋の水筒を投げ渡す。



「シーラも水分補給きてしっかり休めよ!最年長なんだか痛っ!」


「…次は石にするからな。」



フードの少女、シーラはそう言いながら水筒から出した水を魔法で器用に口へ運ぶ。

顔面に強烈な水の塊をぶつけられた筋肉質の大柄な男、バンクは未だ顔を抑えて悶えている。



「今のはバンクが悪いからな…カリナ、火を頼めるか?」


「はいはい。ラウルはどうするの?」


「俺とバンクで見張りしとくから先に休んでていいぞ。」



そう言いながらシーラとカリナに風よけの布を渡しているのはチームリーダーのラウル。


ラウルは依頼書と回収した魔獣の素材を取り出して入念にチェックする。



「魔狼の牙と毛皮はこれで良し…後はワイバーンの鱗と…」


「コレだな。魔の森の湖付近に現れた黒い玉の調査…」


「それが現れてから森の魔力濃度が上がって魔獣やモンスターの危険度が増してるとかだったよね?」


「ギルマスが言うからにはそうらしいが…カリナは何か分かったりしないか?」


「うーん…私は特に…感知系は苦手だからな〜。シーラはどう?」


「…まぁ、精霊が少ないように思うが…元々この森に余りいないだけかもしれないしな。その黒い玉とやらを見てみないと何とも言えん。」


「でもよ、何か起きてるのは確かだろ?今日の魔狼やたら硬かったし。いつもなら俺のスキルで一撃なのに」


「そうだよな…」



バンクの言う通り、今日の魔狼はいつもより硬くて強かった気がする。

シーラやカリナも積極的に戦闘していたが、魔法の通りも悪かった様に思う。


ここへ来る途中で倒してきたゴブリン達も少し大きかったし…



「魔王が…現れたりしてな」



ラウルの何気ない一言に三人は顔を見合せて堪らず声を上げ笑ってしまう。



「真面目なお前がそんなこと言うなんてなぁ!」


「どーしたのかな〜ラウル〜?怖いの〜?」


「はぁ?!ちげーよ!」


「まぁ落ち着いて。ホットミルクでも飲む?」


「シーラまでからかうなよ!」



和やかな空気になった所で四人は軽く食事を済ませて交代で休憩を取る。

シーラとカリナが先に眠り、バンクとラウルが周囲の警戒をする。



「この結界、物理対策もできてたらいいのにな」


「魔獣やモンスター避けってだけでも感謝するべきだろ。それに物理や魔法を防げる結界は上級魔法って言うくらいだし。」


「ふーん。…そういやラウルよ、最近どうなんだよ?」


「どうって…何が?」


「とぼけんなってぇ〜!ほら、ギルドの受付嬢の…えーっと、ミューラちゃんだっけ?付き合い始めたんだろ〜?」


「はァッ!?お前何言っ」


「おいおいおい!二人は寝てるんだから静かにしろよ〜!」


「あ…すまん…」



シーラは寝てるけど、私は起きてるんだけどね。


カリナは寝たようだが、私は起きてるぞ。



狸寝入りをしている二人に気が付く様子もなくバンクとラウルは男同士の恋バナを続ける。



「でぇ〜?どこまで行ったんだよ?チューしたのか?チュー?」


「いや、チューは…まだ早くないか?」


「たァ〜!付き合ってもう三ヶ月だろ?!そんなんじゃ愛想尽かされるぞ?」


「…マジか…」



三ヶ月は長いなぁ〜…私なら色々不安になっちゃうかも…

…シーラもそう思う筈だし。


そ、そうなのか…チューは付き合って一〇…いや五年は経ってからするものだと…

…やはり色恋はよく分からんな。

今度カリナに聞いてみよう。



そんな他愛もない話をしている時、何かが割れる大きな音がした後に何かの叫び声が森中に響き渡る。

木々は揺れ、森の奥からモンスターや魔獣達が逃げるように死に物狂いで走り去っていく。



「いまの声なに!?魔獣?」


「カリナ、シーラ!お前ら起きたか!」


「起きたと言うか…って今はそれどころじゃないでしょ?」


「そうだな。バンク、カリナ!周囲を警戒!シーラ」


「…」


「シーラ?」


「…精霊が…集まってる?」



今まで森に隠れていた精霊たちは叫び声の方へと集まっていく。

それはシーラが契約を結んだ精霊も同じだった。



操られたり、魔法の効果で強制的に集められてるわけじゃない。

それどころか、嬉しそう…



「フィー?どこ行くの?」


「フィーちゃんって、シーラの風精霊ちゃんだよね?どうかしたの?」


「俺たちには精霊が見えないからなぁ…」


「シーラ、精霊がどうかしたのか?」


「フィーも森の精霊たちも叫び声が聞こえた方に集まってる。それも、何故か嬉しそうにしてる」


「嬉しそう?」


「とりあえず行ってみよう。」


「あ、おい!」


「ちょっとー!?待ってよ〜!」


「おい!荷物…あ〜、後ででいいか」



嬉しそうに宙を舞う精霊を見ながらシーラ達は森の奥へと進む。

その間モンスターや魔獣に出会うことは無く、木々の隙間から湖が見えてきた。


シーラの目にはその湖の傍には多くの精霊たちが何かを取り囲んでいるのが見える。



「凄い数の精霊…」


「お、湖。例の黒い玉がある場所だよな」


「…一応警戒しておけよ…」



ラウルの言葉に三人は各々武器を手に取り、茂みを抜ける。


茂みを抜けてから湖の傍に立つそれがラウル達に気が付き、振り向く。


全身が真っ黒で真ん丸な赤い目をした見た事も聞いた事もない人型の怪物。

腕は地面に着きそうなほど長く、手足の指は獣の爪の様に鋭い。



なんだ…コイツは…

それに依頼にあった黒い玉は見当たらない。

もしかして、アレがそうなのか?



「…ラウル、こりゃ一度ギルドに戻って報告した方が…」


「そう、だな…ってカリナ!?」



カリナは剣を抜き、目の前の怪物に距離を詰める。

その様子を怪物は未だ動こうとせずにただ静かに見ているだけ。


魔法で剣に炎を纏わせるとカリナは一切の迷いなくその怪物の首に一太刀入れる。

怪物は彼女の剣を受けて頭こそ切り飛びはしなかったが体勢を崩して湖の方へと倒れた。



「かっった!?全然斬った感じがしないんだけど!!?」


「バカヤロー!!!」

「バカヤロー!!!」


「…カリナも大概脳筋だな…」



カリナが手を出した事で戦闘は避けられないと感じたラウル、バンク、シーラも武器を手に取り戦闘態勢に入る。



怪物は何事もなかったかのように湖から半身を出してジッと四人を見つめる。



「これヤバイんじゃねぇか!?」


「ヤバいだろうな!カリナ!生きて帰ったら説教だからな!!」


「ごめんって!つい、」


「…」



三人が警戒しながら話していると、怪物の口はゆっくりと動き始めた。



「ギッッッギャア゛ア゛ア゛ア゛!」



耳元で裂けた口を大きく開き、その目をラウルたちに向けたまま咆哮をした。



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