49話
短くてすみません!
レインの朝は遅い。だいたい騎士団の相棒であるサタンが起こしに来るまでゆっくり眠っている。魔族は一般的に早起きだ。魔術への修練には膨大な時間を必要とするので、何日も睡眠を取らない個体もいるほどだ。
だがあえて私は言わせてもらう。休める時間があったらなるべく休むべきであると。私に言わせれば、あの慎重かつ狡猾で魔術の研究では常に第一線に立ち続けてきた【西の魔人】ルシファーがバベルの塔を魔力を暴走させ爆破させた事件なんて起こらなかったはずだし、ときどき自己鍛錬しすぎて衰弱してなにも後世に残せないままこの世界から消え去った、天から与えられた才を持つ魔族たちなんて何人もいた。
私のルールはただ一つだ。太陽が登っているうちは魔術の開発やお仕事を頑張る。日が落ちたら身体を休ませる。ただそこに、最近は相棒のサタンが寂しがってないか確認しにいくのが追加された。
「ksjdkkkoiii &^^&#><?」
「なんだ寂しくなったのか?すまん今武器の手入れしてて手が汚れているから、少し待っててな。」
ふむ。なんだやっぱり私がいないと寂しいんだな。仕方がない構ってやる。ひとしきり構ってやったあと、フカフカなクッションと空いたソファーを見つけた。
少しだけだ。ほんの少しだけ。スゥスゥ…。どうやら夢の世界への誘いにしばしこの身を預けることになったようだ。そう言えば…我が私と言い出したのはコイツと出会ってからだったな。その日のことの懐かしみながらその日の夢をみた。
「おーい。レイン待たせてすまん。あ…そこにいたのか。まったくこんな所で寝て。寝冷えするぞ。」
一度寝室に戻り毛布をとってきて羽織らせてあげた。スヤスヤと眠る寝顔はこうグッとくるものがあったが、おれはもしかしたら最近平和ボケしているのかもしれない。この国はまだ争いの真中であるのだ。おれの勤めを果たさなければ。
まあ最もこの国で守りたい殿下もレインの両者ともども、おれにずっと守らなくてはならないほど弱くはないのだが。今所属している騎士団は他の列強と比べてもそれほど弱くはないだろう。だがなんとなく不穏な雰囲気があたりに立ち込めているのだ。
それはきっと殿下の最も近くにいたあの方が行方をくらましたのが大きかったのではないかと思う。あの人にはそう思わせる存在感があったのだ。
おれとレインも殿下の力になれていれば良いんだけどなあ。ふと窓に雨粒があたるのを見つけ、納屋のすだれを直すため外にかけだした。黒雲が山の頂きにかかるのが見える。きっとお昼頃にはここまで雨雲が流れて来て雨は長引くに違いない。
1日やらねばならない用事がまだ残っているのを思いだし、おれはレインを休憩室に残したまま一人先を急いだ。
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私はレイン。誇り高き魔族である。普段から温厚であると評判高い私は、毎日人間の魔術師に喧嘩を売りに行ったりなどしない。私は温厚だからな。そこら辺の魔族と一緒にしないでもらいたい。どうしたことが魔族は今のところ私しかいないようだが。
まあ、焦ることはないだろう。この昔は脆弱であるとされていた人族が世にはこんなに繁栄しているのだ。どこかに魔族の生き残りもいるに違いない。
実はというと最近、今すぐにでも同族を探す旅に出かけたいと思っている。しかし私が気に入って伴侶にした人族のサタンという人族にしてはカッコ良いやつがいるのだが、どうやらやつはこの国に思い入れがあるらしい。今結構踏ん張りどころなのかさらわれた同僚の行方とか、未だ慌ただしい国内の治安のために走り回る日々である。
一体滅んだこの国にやつはなにを期待しているのか。私は実際のところこの国に今のところ思い入れはない。昔私が住んでいた土地は何百年先か分からないが現在はあまりに変わり果ててしまっているのだ。
だがもし世界を探し回るなら、伴侶のこやつとまわりたいなって思っている。人間には新婚旅行という文化があるらしい。魔族流でプロポーズしてしまったので、それだけでも人族に会わせたいのだ。
すまない。つい惚気てしまったな。きっと世界を旅するときにはお土産話をたくさん持って帰ってきてやろう。我らが魔族の親戚、ヴァンパイアの小娘どもに、な。
ソファーからノソノソとはい出てみると、やつの姿がみえない。なんてやつだ。相棒である私を置いて行くなんて。確かにやつは強いのが、私が側にいないとすぐ寂しく感じてしまうに違いない。
ふぅ、手のかかるやつめ…。仕方がないから、私がじきじきに1人でもできる仕事やっといてやろうと思う。できればもっと暇なときにやりたかったのだけどな。
私はときどきうっかり忘れてしまうから、今のうちにやっておくのもまたありなのかもしれない。書類棚の山をみてあまりの多さにヒュッと短い呼吸をしてしまった。決して絶望を感じたわけではない。私は魔族だからな。ひ、人族の書類の山なんて全然怖いと思わないのだ。
今夜帰宅時に枕を新調しようと固く誓った。
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