46話
お久しぶりの投稿です!お待たせしてしまい大変申し訳ございません!
ここで何かが始まる。そう思っていた。ふとした瞬間におれは過去のおれの視点で今の自分を見てしまうことがある。
10分ほど前だろうか。おれは確かにこの目の前の男のことをさえない見た目の書店の店主だと思っていた。
だがどうだろう。各も難しい魔術書の魔法式を操る男は目を見違えるほどにランランと輝かせ、目の前に魔術式を次々と構築し始める。
おれは彼を見誤っていたのだ。彼の魔術書にかける情熱を。彼がこれまでに築き上げてきたその叡知を。ついその魔術式の美しさに見惚れてしまう。
魔法とはこのように美しい物だったのか。私が今まで目にしてきた魔法とは全く違うものだ。これはそう、人類が扱ってて良い代物ではない。先の時代の遺物。魔族たちの知恵の結晶であるのだろう。魔法とはあまり縁がある人生とは言えなかったが、そんなおれにさえそう思わせてくれたんだ。
彼の操る魔術式の行く末を、繊細な操作を幾度も繰り返す彼の指の爪先を気付けば食い入るように見つめていた。
「準備完了です。殿下。この術式の起動時間は30分。その間に例のお方の救出を致しましょう。」
「ああ。今回は本当に助かった。後に手厚い礼を持って報いさせてくれ。では転移魔術を実行する。サタン術式の中心へ入ってくれ。''術式起動''」
おれたちがダンジョンの入り口についたのは、ここを後にしてから5時間あまりもたっていた。その間レインは飲まず食わずで足を棒のようにし、ただ立っているしかなかったんだ。
「レインーーー!!」
思わず2人をおいて駆け寄って行った。彼女はおれが最後に見たままの姿勢で肩を震わせながら救出を待っていた。
すぐにおれの存在に気付き彼女はホッとしたように微笑んだ。心細かったのだろうか。おれの服の裾をそっと掴み目にたくさんの涙を浮かべ上目遣いでただ見つめてきた。
彼女は普段あまり愛想が良いとは言えないし、このようにおれに涙を見せることもなかったんだ。そんな心の芯まで強い彼女が見せた涙はおれの心を揺るがすにはあまりに破壊力がありすぎた。
「お願いです!!彼女を…レインを助けて下さい!」
心からの助けを求めおれは店主に頭を下げ懇願し続けた。
彼は物静かそっと近づき、おれの肩をそっと叩きただこう口にした。
「君たちのためにこのとっておきの魔術書を使うことができて光栄です。」
そっと差し出された手のひらから目映いほどに光が入り乱れ視界を白へと染めていく。
魔術は無事に成功したのだろうか。よろよろと倒れ込むレインをおれは彼女を優しくだき抱えた。
意識を失う瞬間彼女の瞳が揺れながらもおれを捉える。その瞳には確かな信頼感が感じられたがそれはきっとおれたちの絆なのだろう。
紫色と水色のオッドアイが閉じるその瞬間さえもがおれにとってとてつもなく愛らしかった。彼女はこんなに整った顔をしていたのたろうか。まつ毛はこんなに長くカールしていたのか。
困ってしまった。おれはいつも見ているはずの彼女の顔にこんなにもドキマギしてしまう。
いつかレインに告白されたとき、おれは確かに彼女のことが好きだった。でもそれはまだ十分に恋という感情とは呼べなかったのではないかと今ではそう思う。
そんなことにさえ気付けなかったおれはあまりにも愚かだった。でもだからこそだ。この感情を教えてくれたレイン。あなたこそおれの最愛の人である。
王都へ引き上げる道中、レインは意識はないはずなのにしがみついて離れなかったので体温が直接伝わってきて心までぽわぽわと温かくなってしまった。
もしかしたら目を覚ましたら彼女は今日のことを忘れてしまっているかもしれない。もしかしたら…完璧に覚えていて、おれの行動や言動の足りなかったところに憤慨するかもしれない。
言葉が通じないので彼女の真意をくみ取ることはできないけれど。いや…通じていたとしても全て知ることができると考えること事態が傲慢に違いない。きっとこうだろうと決めつけることをしなければ、彼女とはいままで以上にわかり合えるし、歩みよることができるはずである。
いつも予想を超えてくるのが魔族のレイン…彼女の魅力なのだ。
明日どんなことをされても受け止めてみせるとおれはその日の夜空に浮かぶ満天の月に誓ったのだった。
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