4話
本日2話目♪ 良いペースですが、次話は来週までお待ち下さい♪
吸血鬼の朝は早い。とても眠い。だが、私を大事に育ててくれた義両親にもまだ明かせない正体。
この間だって腹を搔っ捌かれたばかりだ。だからあまりにも異質なのだ。この間知り合った店員は・・・。
私が吸血鬼だというのを知ったうえで助けてくれて、今日も摂取する血液を売ってくれる。
もしかしたら、こんな私を受け入れてくれるのは彼だけなのかもしれない。
少しばかり顔が火照ってしまう・・・。いけませんね。どうやら私は色ボケしてしまっているようです。
急いで青白い肌にファンデーションを塗りメイクする。お化粧をしなければ顔色が悪いと心配をかけてしまう。
だから、私は幼少期から化粧をして来た。幸い吸血鬼だから肌は強い。未だにほっぺもプルンプルンで赤ちゃん肌だ。
化粧をしているとばれない程の神がかった技術をいつの間にか身につけていた。
鏡でまつ毛にカールをかけながら思う。何で人間は吸血鬼のことを不老不死だとか思っているのだろう?
私だって死ぬ時は死ぬし、寿命だって変わらない。歳だって普通にとる。
唯一の違いは身体を負傷した際の再生能力が桁違いだということと、血液を身体が欲するという事だろうか。
よし、今日も良いできだ! これでも同性にも異性にもきれいだと言ってもらえる事が多いのでビジュアルには自信がある。
ちょっとだけ、ローズマリーの香水でアクセントをつけて、今日こそあの店員に口説かせて見せるんだから!
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「ヘクシッ。なんだ急に寒気が・・・!?」
「おい。シン。体調悪くなったらあれだし、奥で休んできなよ!」
「分かった。ありがとう。」
「あ、あのう。大丈夫ですか。良かったら・・・。」
そう言ってニコリと上目遣いで微笑みハンカチを差し出してきたのは・・・。
吸血鬼だった。
「う、うわ!びっくりしました。」
「いえ。」
にこにこ笑っているが騙されてはいけない。完全に気配を消して彼女は店に入って来ていた。
「でもありがとう。お気持ちだけで十分です。」
「そ、そうですか・・・。」
あからさまにシュンとさせてしまった。
「馬鹿野郎。すみません。こんな不出来な息子で! 人の好意はありがたく頂戴するもんだ。どうぞ向こうでゆっくりしていって下さい。」
「痛ってーーーーー!」
スパーンとおれの頭をはたいた後、一番奥のカウンターに案内し、我が家で一番良い茶菓子とティーでもてなす。
「こんな可愛いらしいお嬢さんが来ているというのに、うちの息子は体調崩しちゃったみたいで・・・。いやはや面目ない・・・。」
「あ、あの。良かったら私彼の看病しますよ!? 以前お世話になりましたし!(汗)」
「そんな悪いですよ。」
「でも、ご家族さま今日は忙しいですよね? でしたら、どうかやらせてもらいたいです!」
ちょっと一生懸命に頼みすぎてしまったのか、どうやら状況が飲み込めたらしい店長はこう耳元でアドバイスをしてくれた。
「うちの愚息は年上が好みらしいですよ。あんまり派手でない感じのやつが・・・・。すみません。いらないお節介でしたか。」
「い、いえ! ありがとうございます! 私頑張りますから!」
「あらまあ。悪いわね。それに若いわあ~。素敵ねお父さん。」
おれはベットで一人ぶっ倒れていた。
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どれくらい眠っていただろうか。
気づけば、隣に吸血鬼がいた。
「あの、その~。吸いましたか?」
「いいえ。」
そう言って彼女はにこやかに笑い否定した。
おれの額の冷やしタオルを取替え、彼女はあざとく横髪を耳にかけあげた。
なうほど。アイドル顔負けの可愛さだ。だが、彼女はおれの4つほど年下。
「お体を悪くされている方から血をすったりしませんよ。それに、今はゆっくりしてください。今は季節の変わり目で体調崩しやすいですから。」
そう言って妖艶な笑みを浮かべる。
辺りにとても良い匂いが漂っているのに気付く。これはローズマリーか? 彼女と目が合った。ニコリと微笑みを向けてきた。
いつもより落ち着いた大人びた表情で。彼女の瞳が妖しく輝く。まるで中に引きずり込まれそうだ。
「おれが眠っていた時間看病してくれたんですね。何とお礼を言っていいものか。でも、これ以上付き合わせてしまうのは大変心苦しいです。もう。だいぶ良くなった気がしますから。」
そ、それは早く帰れという意味だろうか。いや。悲観的になるな私。
「私がしたくてしてるので、気にしちゃダメですよ? それに・・・私は、私はあなたがシンさんが、す・・・。」
「え・・・!?」
「す・っごく心配何です! 昨日だって王家の猫耳メイドがお買い物に来たらデレデレしてましたし! 貴族の女性の方にも密かに人気があって良く声をかけられているのもなんか許せないっていうか!」
めちゃくちゃ病人の前で大声だすやんこの人。
「あなたにはそう見えたのですね!? おお。すみません。以後気を付けます・・・。」
あれ!? 吸血鬼な彼女昨日と一昨日店にいたっけ? もしかしたらおれが昼休みに入った時に来たのかな? でもメイドのメリーさんが来たのが午前中・・・。
多分記憶違いなのかもしれない。人の記憶は忙しい時には割とマジで当てにならないからな。
考えても分からない事に時間を割くのは無駄。確かにその通りだと思った。
*****
人に今まで好意をもった事がなかった私。暗殺者仲間の恋人では毎晩死闘を繰り広げ命をかけるのを何より楽しむそうなんだが。
もし、私の気持ちが伝わらないのなら、少し苦しんで死ぬ程度の毒をたらしたナイフで手首を切ろうかと思ってみたりする。
いや、それより吸血鬼感の親交を深める儀式、”爪刺し”で頬に穴をあけてあげるのも良いかもしれません。
でも、人間なんてやわな生き物だから・・・。どこまでが許容範囲なのかキチンと確認しませんと!
乙女の前に、女は殺し屋であった。
*****
「あの。シンさん。”ツメサシ”と”ナイフでザクリ”どっちが好きいいですか?」
「???」
つめさしとは!? ないふデざくり!? いや。これは消去法で答えてもどちらも危ないパターンな気がする。
おれの前世合わせて半世紀の人生経験が警報を鳴らしている。それはもう緊急警報のサイレンのように!
「あ、あの~。私はカーミラさん。私はあなたが側にいてお話して頂けるだけでとても楽しいですし、嬉しいです。」
ど、どうだ!? 告白っぽくなってしまったのが実に残念だが・・・。それなりに命を守れる無難な答えではなかろうか?
「・・・。」
これどういう表情!? 美人が無表情って怖い・・・。ごめんね。まるでお人形さんみたいな無機質感っていうか。
いやもう本当に申し訳ないけどそう思う。
「そ、そうですか。良いですよ! じゃあ、私が知り合いの吸血鬼から聞いた話なのですが、我が一族はこの国の戦争が始まって以来・・・。@>?SKDLFJL+SKdi ・・・という問題が@ ・・・・あれ? 眠っちゃいましたね。フフフ。私もこの話実は睡眠導入剤としても使っていたのです。お休みなさい。シンさん。」
そう言って彼女は少しだけずり落ちた毛布を上に寄せてあげた。スウスウ。寝息が聞こえる。
寝顔もかわいい。ずっと彼と一緒にいたいなあ。私に心底興味なさそうなのがもどかしい。
ところで、先ほどシンさんが言っていた、私と一緒にいて話するだけで楽しいし嬉しい。
それがどういう意味か今度友人に聞いてみようと思う。
読んでくれてありがとう♪