3話
更新できた♪ 一週間お待たせ致しました。
赤い月夜に墓石に男が座る・・・。
「ハハハ・・・。分かる、分かるぞ。愚民ども。分かりやすい敵が出て来たら、倒しさえすれば終わりだと思うよなあ。だからお前らは低能。真の悪役とは、水面下で準備をし、闇の世界にどっぷりと足をつからせた者でさえもたどり着くのが困難な存在。それが真なる悪よ・・・。」
「どうしたのですか。α(アルファ)。死者を冒涜するのなら、もっと派手にしませんと♪」
そう言ってこの頭のおかしい細身の恐らくは女性と年齢性別不詳のβ(ベータ)が音もなく剣戟をおれの座っていた場所に当てる。
墓石は音もなくヒビが入り、徐々に風塵化していった。
「おい。いきなり何しやがる。それにしても非力な攻撃よ。その程度では、猫の子一匹殺せまい。」
「別に今ここであなたをバラしても良いのですよ~。でもでも~。あの方の邪魔をするのは本意ではありませんので~。」
「それに~。あなたその年まで生きて~力加減の一つも分からないのは痛いと思うのですよ~。(笑笑)」
「フハハッ。ちげえねえ。お前さん歳はいくつだあ? 享年と思え。さあさあさあ、覚悟しろ!?」
攻撃の態勢をとると、空気にいくつものプラズマが駆けた。少しでも身動きをすると2人とも肉を削がれただろう。
「その辺にしておけ・・・。」
音もなく突然やつは背後に姿を現した。殺気が肌に貫きまたその気配も消え去った。
「γ(ガンマ)か・・・。お前が招集に応じるとは・・・。吉と出るか。凶と出るか。フハハハハハッ。今夜は楽しめそうだ!」
「・・・。」
「まだあの方の指令は来てないようですね~。」
「そのようだな。ああ。嘆かわしい。またお前らと会う時間を作らねばならないとはな。」
「まあ。いずれあの方の座を私は奪ってみせますけども~。」
言葉少なく周囲を煽り貶める。だがそう簡単に挑発に乗る者はいなかった。
*****
黒服の長いアゴ髭の男が夜の街を駆け抜けた。
「・・・。」
扉越しに人の気配を感じカーミラは表にでた。
「次の指令、お伺いいたします。」
「今日はそのことについてだ。ゴホン。そうだなあ。今はカーミラを名乗っていたか? そろそろ引退を考えて見ないか。」
「引退・・・。私がですか? 私はまだ戦えます。」
「君を闇の世界に連れてきたのは私だ。だがいつまでもというわけにはいかないだろう。ずっと前から気にはしていたんだ。」
「・・・。」
「今回の元王妃候補の暗殺誠にご苦労だった。君はもう十分働いてくれたよ。もちろんこれからもお金の工面には口をきいてやるし、身に危険が迫った際には守護下においてやろう。これは我が暗殺組織に在籍したものの特権である。身分上は名誉幹部とったところだな。」
「なるほど。至れり尽くせりですね・・・。でも本当に良いのですか?」
「ああ。これからは新しい人生を始めるんだな。」
そう言って男は風に舞う落ち葉と共に消え去った。ああいう厳しい態度をとっているが、あんな闇の仕事をしている人の中では珍獣のような方でまだ良心を失っていない。
あの日・・・。私が路頭で倒れていた時にあの方は私を救って下さった。そして今の私の両親の元へ預けてくれたのだ。
条件として私は暗殺術を仕込まれ、頂いた平穏の生活を守るためにこの手を血に染めた。
いつか私が血を流しすぎて倒れそうになった時にあの方から頂いたハンカチを私はまだ持っていた。
そこにはファミリアという刺繡が施されていた。
あの時のハンカチが死を覚悟した時の心の支えになっていた。
*****
シトシトと雨が降る。こんな時には傘が良く売れる。後は温かい飲み物だろうか。
おれはいつもより多くお湯を準備した。
カランカラ~ン。ドアのベルがなる。
誰かお客様が来たのだろうか。周囲を見渡したが誰も見当たらなかった。
遠くで稲妻が空を走る。雨の勢いも増してきたようだ。
これはなかなかお客さん来ない予感がしてきた。令嬢たちは小綺麗なお洋服が濡れるのを当然嫌がるし、第二王子の騎士団長さまは身の安全のため外出は極力しないだろう。
「あ、あの~。」
「ハッ。いらっしゃいませ!」
いつの間にか椅子に彼女が座っていた。先ほどまでには人の気配すらしなかったのに。
さすがは暗殺者。身のこなしが尋常じゃない。
少し顔がこわばってしまってないと良いのだが。
その頃・・・。カーミラは焦っていた。どうしましょう。ほらいきなり影からこちらに顔を出してしまったからシンさんとっても驚いているみたい。
「この飲み物を注文しても良いかしら。」
「はい。後これはサービスです。」
そう言って小さな容器に入ったキャンディを渡してきた。この匂い・・・。これはまさか!?
「ええ。血液キャンディ梅干し味です。」
「あら。オシャレですね。」
「良かったらまだ試作品なので、後で感想を聞かせて頂けませんか。」
「お安い御用ですわ。それでは早速。」
キャンディを思い切って口に放り込み、舌の上で転がした。
まろやかな甘い血液の味。プラムの酸っぱさと絶妙な塩加減が気分を高揚させる。
フフフ。美味しい。思わず上唇をひとなめしてた。
ハッ。今のは色ぽかったのでは?
いきなりの首の振り速度で衝撃波を巻き起こしてしまったが、店員さんのところを見る。ちきしょう。こっち見てなかった。
戸棚のグラスが弧気味良い音を立てて次々に割れた。
「あああああああ。急に!? お客さまお怪我はありませんか?」
「!!!!!? いえ。大丈夫です。(優しい。もう好き!! それとごめんなさい。涙)」
「飴どうでした? 吸血鬼の皆さんはお気に召しそうでしょうか?」
割れたグラスを片付けながら
「え、ええ。大変美味しかったですよ。後、外ではあまり言わないで欲しいです。」
「あ、どうもすみません。失礼いたしました。」
悪いと思ったらすぐ謝れる男性って素敵。カッコイイ!
「エミリーさん。なかなか雨やまないですね。良かったら、そろそろお店・・・。」
「だ、大丈夫ですから。一人で帰れますから!」
意識してしまったらなんか恥ずかしくなってきた。そんな日には早めに離れるに限る。
好きな人と長くいると心臓が持たない。
いそいそと帰ろうとする私に店員さんの声がかかる。
「魔法瓶に詰めている新鮮な”栄養ドリンク”は一週間分でよろしいでしょうか?」
「あ、忘れてた。ありがとうございます。」
私の心配を!?
「まいど~!」
ぐぬぬ。いつか私を意識させてやるんだから!
男は商売人だった。女は吸血鬼の前に乙女だった。
外の雨模様はいよいよ荒れ狂い、凶悪犯の手配書が勢い良く風に舞っていた。そのずっと遠くではグチャリと虐殺されたものの血が窓辺に張り付いた。
読んでくれてありがとう♪