2話
サスペンス大好きの作者♪ あのwkwk感がたまらないですよね~♪
窓の隣木に小鳥がさえずっている。
ああ。もう朝か。まぶたが重い・・・。昨日飲みすぎたか。
「あ、あのう・・・。」
何とも気まずい雰囲気が辺りを支配する。
「目覚めましたね。いや申し訳ない。私も酔っていたみたいでどうやら帰宅してから直ぐに眠っちゃったみたいです。」
「い、いえ。助けて下さりありがとうございます。」
「では、元気が出ましたら、お帰り下さい。先に言っておきますけど、昨日は何もなかったです。あっちの面でも。」
当たり前だ。彼女は見たところ19歳くらいだろうか。20以下。年下はおれの守備範囲外である。
「え、ええ。そうですよね。いや何かあっては困りますけど。そうなんですね。良かった。」
彼女は心底ほっとしていたようだった。
「い、痛い・・・。」
突然頭を抱えて悶絶し始めた。目がどんどん充血している。あれは禁断症状か何かだろうか。
おれの親父は亜人相手にも分け隔てなく商売をしている。
そう言えば先月棺桶職人もといおれの友人から鮮血を受け取っていたな。吸血鬼や喰種相手に商売を始めるアイディアはおれの発案だ。
この国には一定数の人外の顧客がいる。
「なにかないだだろうか。」
そう親父がぼやいていた時に思いつきで始めたのだ。
この国では土葬が一般的だから。腐らないように防腐処理をしたりするために血を抜き取る。その血を回収して腐らないように保管の呪文をかけて商品化した。
まだ在庫残っていただろうか。
「少し我慢していてくださいね。」
そう言い残し倉庫へと向かった。
「ええっと。確かこの辺りにあったはずだ。」
奥の戸棚の一番端に瓶詰しておいてあったそれを手にとる。
部屋まで数分で着く。この距離に倉庫がるのはありがたい。
「入りますよ。失礼。」
「見、見ないで下さい。こんな醜い私を。」
「・・・。どうぞ。」
別に醜いってことないけどな。種族特性って感じだ。
冷たく飲みやすくなった”栄養ドリンク”を彼女は一気に飲み干した。
どんどん顔色が良くなっていく。
「ふうう~。」
大きな吐息を吐き彼女はたいぶ落ち着いてきたように見えた。
「もう大丈夫そうでしたら、家まで送りますよ。」
「・・・。はい。」
少し申し訳なさそうな顔に不安感を感じたのは気のせいかもしれない。
****
「まあ。エミリーあなたが家に帰らないでどんなに心配したか・・・。昨日なんて、あなただと自称する化け物が家に来てたのよ。驚いてお父さんが包丁で一突きしたら逃げていったのだけど。」
「そ、そうなのね。心配かけてごめんなさい。」
そっとお腹周りをついさすってしまった。昨日深々と出血していたあたりだ。
「では、私はこれで・・・。」
「送って下さりありがとうございます。エミリーちゃんとお礼した?」
「ありがとうございました。」
深々と頭を下げてお礼を言われた。
おれも軽く会釈をし、その場を後にした。
*****
身近に吸血鬼っているんだなあ。別に太陽とか平気そうだったけれど。
おれはいつもの乙女ゲームの平民の日常へと戻る。
「シン。今日は忙しくなるぞ。お得意様が来るからな。身分はけっして明かさないが、あの堂々とした立ち居振る舞い。最年少で我が国の騎士団長に就任したあのお方に違いない。」
「じゃあ、本日も張り切って行きますか!」
おれは今日も店頭に立つ。
「まとめて注文をしたいものがあるのだが・・・。」
「あ、はい。何でしょう?」
「あ、あの。先日はありがとうございました。」
「あ、どうも。先ほどぶりです。少しお待ち頂いてもいでしょうか。」
エミリーさんが早速お礼をしに来てくれたようだ。
「ふうん。なかなかこの店は面白い商品を売っているねえ。向こうでは飲み物も注文できるのかな。」
「はい。軽食などもご用意出来ますよ。」
「で、では何か注文しても良いですか。」
エミリーさんはどうやらお腹が空いているらしい。
「はい。どうぞ。こちらメニューです。」
「この辺の方ですか? 良かったら少し相席しても?」
ふむ。なるほど。この国の第二王子改め騎士団長さまは標的の一人暗殺者に興味があると・・・。
キリッと眉をひそめ、少しめんどくさそうにエミリーさんは答える。
「構いませんが。本日私は別件できておりますので・・・。」
だが、性根が良い娘なのだろう。ニコリと微笑み返している。
おい。そんな事しちゃうと男はつけあがるぞ? でもおれにしちゃあお客が増えてありがたいので、
「まいど~♪」
喜んで注文をお受けする。
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頂いだ冷水のグラスの氷がカランとなる。この辺の方だろうか。第一印象は姿勢が真っ直ぐな芯の強そうな娘という感じだ。
少しだけ興味がわいた。この只者でない感は運命の出会いと呼べるかもしれない。
*男は惚れやすかった。
*****
騎士団の方でしょうか。胸の方に紋章もついていますし。大変気まずい。私は暗殺者だから、彼は私の天敵。怪しい挙動をみせるようなら直ぐに牢屋行きでしょう。
なぜか私の顔をチラチラ見ているのですが。手配書の顔だと気づかれてしまいましたか。いえ。そんなはずはないです。
絵師が下手すぎて私にちっとも似ていませんから。共通点は髪の色が黒いくらいです。もう絶望的な手配書センスですよね。
人選誤りましたね。騎士団!
思わずニコニコしてしまった。
*女は心の内が表情に出やすかった。
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ふっ。これは常連さんゲットだな♪
男は全容を分かっていたものの、お金が欲しかった。
*男は守銭奴だった。
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ちょっと店員を気に入った暗殺者。
暗殺者に好意を寄せている騎士団長。
お得意様が増えて嬉しい店員。
ここに奇妙なコミュニティが形成されようとしていた。
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先日、まだ17歳という年齢で新しく誕生した新興国の騎士団長に元第二王子が就任された。
元々王位継承権がなかったからか、大変優遇を受けたものであると後の歴史学者たちは語る事になる。
だが、それはあってもあり間違ってもいた。
彼はそれに見合う貢献を隣国へとしたのだ。そして実力も申し分なかった。
1年早めて彼の卒業は認められ、彼は騎士団長としての責務を果たす事になった。
そんな彼は住民の生活を第一に考え、政治にも少なからず意見をご指摘する立場にあり、また新興国の政府も彼の事をリスペクトし尊重していた。
彼は実際に民草の中に紛れ、物価の把握などの些事に至るまで、気を回していた。
そうして訪れたのがこの商店だったのである。
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昔から悪役令嬢の取り巻きだった令嬢たちにある噂が広がった。あの第一王子に悪役令嬢の敵を撃ってくれた王子さまがある商店に出入りしているらしい。
噂は尾ひれを呼び、他にも素敵な殿方が集まるという話も王国中で話題になった。
そしてやはりビジュアルに自身がある男たちもたくさん集まるようになった。
これが以外と店を繫盛した。
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*第二王子
「何故だ・・・。何故あの子はあれから顔を出さない。」
*令嬢たち
「ああやって。恋焦がれている女性を待ち続けているんですって。」
「まあ。素敵♪」
「私たちも良い相手探そうかしら?」
わりと併合されてから元の貴族家の影響力が少なくなったことにより、この国では自由恋愛が盛んになった。
「あの。良かったら、お茶しませんか。」
「あら。まあ。大胆ね♪ ええ。お願いしようかしら。あなた達も良くて?」
「ええ。もちろんよ。」
見た目の麗しい令嬢たちを見ながら、シンはにこにこしていた。
なんて良いお得意様なんだ。フフフ。商売繫盛繫盛♪
それを見て嫉妬心に燃える暗殺者が陰で爪を研ぎすませていた。
なんだ次話まだ続きそうだなあ。作者も正直にそう思っちゃった次第です。(/ω\)てへっ♪