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ハッピーエンドの世界線~悪役令嬢処刑後のとある国の議事録~  作者: コカマキリ
二章 ヴァンパイア

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16話

更新遅くなりました! 作者も頑張って書きますのでゆるゆるとお付き合い頂ければ幸いです。

温かい湯気が立ち昇る。こういう異世界転生ものってほんわか回って必須だよね。実際に転生したこのおれが言うのも何だと思うが、マジでそう思う。


前回ドタバタあったおれたちは2人湯船に使ってのほほんとしていた。混浴だと!? 〇すとかどこからか聞こえた気がするけど、なにか問題があるとでも? だってねほら・・・水着着用だし・・・。


他の利用者もいるし、2人っきりってわけでもない。


ちなみにシェーンさんの胸の大きさはささやかなものである。(大変失礼)いやでも、視界の隅に映った感想だから! おれそんなむっつりじゃないから! それよりも・・・。湯につかる首筋から背中のラインが美し・・・。


「ゴホンッ。げほげほ!」


な、なぜだ!? 急に湯気でむせたんだが。


「まったくせわしないやつだな。おちつけって。」


ふふんっとドヤ顔をしているシェーンさん・・・。いやこれはドヤ顔ではないかも。真顔だ。それはさたえおき。


「い、いえなんでもないです。ちょっとむせてしまって・・・。なにか飲み物買ってきますね! 果物ジュース売ってましたよ。入口の屋台で! なんかトロピカルな感じのやつです。」


「お、いいねえ~。私も一杯頂こうかな! その、私の分もお願いしても良いだろうか?」


「ええ。もちろん。」


湯船というか大浴場からあがるとお湯がざばっとこぼれた。あたたまっている身体には夜風がつらい。


さ、さむい! 湯冷めしてしまうぞ! おれは己の温まったほやほやの足にむち打ち先を急いだ。足元に石鹼が隠れている(ただ落ちていただけ)とは知らずに。


スパーンと前のめりに転び、床を滑りぬける。


羞恥心と痛みに少し涙ぐんでなかなか立ち上がれない・・・。


「いててて・・・。」


良かった。痛む膝を見やるとなんとか血は出ていないようだ。少しほっとしジンジンと痛む手の平でさすって立ち上がろうとした。少し内出血してしまっているかもしれない。


思ったより足に力が入らず、思わずよろけてしまった。


「うわっと!? あ、あぶねえ。」


すっと美しくすらりと長い指手首を掴みとり支えてくれていた。


「あ、ありがとうございます!?」


最初は高速移動してきたシェーンさんだと思った。だが違った。ぐんっと引き上げらる一瞬で理解した。なんせシェーンさんはこんなに背が高くない。


肩にスルリとかけている黒い美しい濡れ髪がゆれた。斜めにスッと刺さる眉と大きな目、艶やかなカールしたまつ毛と褐色の肌を際立たせる水色のアイシャドウ。


頭に浮かんだのはたった一欠けらの感想だった。世界三大美女がおれを救ってくれた。ああ。もう隕石が頭に落ちてきて〇んでも良い・・・てことだった。


異世界すごすぎん? シェーンさんは当然に絶世の美女だし、おれの好みどストライクなエジプト美女きたああああああああ(語彙力崩壊)


ああ。女神たちが2人もおれと一緒の空間もといお風呂にいるだとおおおおおおおおおお・・・。


意識が、消え失せていく! いやこれはショッキングな出来事より、起きた事故なのか? いやなぜか急に呼吸困難になっているようなのですが!?


「パトラねえから離れろ・・・。」


おれは筋骨隆々の狼男に首を占められていた。言わずもがな。彼の手は爪先にいたるまで嫉妬の炎に燃えたぎっていた。


死ぬ! 死ぬうううう! おれは渾身の力で彼の腕をたたき続けた。


「私の連れが世話になったな。すまない。そのなんだ。不躾な視線が不快になったのなら私からも謝らせてくれ。」


そう言って彼女はとてつもない美しい笑顔の下からど薄黒い殺気を放っていた。あまりの重圧に狼男もさすがにひるんだのだろうか。


おれの首をしめている手がゆるむ。


「ゲホゲホっ。だずげでくれでありがとう、ほんとに・・・・(涙)」


「ええ。」


短いひと言だが怒りが声にこもって聞こえた。お風呂の反響音!? いや違うな。まさか、おれのために怒ってくれているのか・・・。なんか申し訳ない。ほんとに弱くてごめんなさい。


「すまない。うちのズルフィがすまない。汝も頭下げて謝るのじゃ!」


「も、申し訳なかった。不埒なオーラを感じたもので、つい・・・。」


ぺこりと頭を下げてくれたのは小さな男の子だった。ライム色の金髪の上に犬耳(?)が垂れている。


「いえ。人違いです。自分が手を出されたのは2m越えのゴリラみたいな狼男ですから。」


「それ、自分です。ほんとにすいませんでした。(ぺこり)」


「そいつだぞ。さっき小さく縮んでいつのを見ていた。」


シェーンさんが説明してくれる。


「そうか。まあ骨も折れてないし、痛みの割にはあともついてないし、もう良いですよ。ただ、今後は気を付けて下さいね。(小声で)そんなことをしていると、パトラさんに嫌われてしまいますよ?」


しっかりと後付けで釘をさしておく。彼の絶望する顔をみて、もう再犯はなさそうとなぜか強く思えた。


ふふんこれが世にいうショタお姉というやつなのか? あとからなんか大切なことに気づいてしまった。


いいか悪いかは置いておいて、あの2人の組み合わせはとても良い。


なんか気持ちここにあらずって感じであとは適当に話をつけ、うわのそらで座席についた。


「さっきは大丈夫だと言っていたけど・・・。多いに心配なんだが・・・。(ジト目)」


うーん。なんか気まずい。


「大丈夫ですよ。また助けてくれてほんとに恩しかないっていうか。この恩は・・・。」


「この恩は?」


「血で返します!」


「ふむ良い笑顔!」


表情あんまり変わってないけど、まるで鼻歌が聞こえてくるようだ。


「それはさておき、このトマトジュース美味しいですねえ。にんじんとかりんごとか入っているのかも。同じ色に見えますけど、それってまさか・・・。」


「ああ。吸血鬼ヴァンパイア用のジュースだ。温かいのも良いがたまには冷たいのありだな。味見してみるか?」


それって人の血ですよねえええええ。


「え、遠慮しときます・・・。(汗)」


「そうか?」


「はい・・・。」


「美味しいのだがな~。」


そうでしょうとも。


冷気をおびたクリスタルがなんかとても癖になってきた。おっと湯冷めしたらいけないな。


「そろそろ上がりましょうか?」


「そうね。」


時々、女性らしい口調に戻るタイミングがいまいち分からんが、今までいろんな名前で生きて来たんだ。きっとキャラがぶれているのだろう。


更衣室で一度わかれ、着替えをしながらおれは思った。なぜおれ異世界転生してお風呂で美女2人を前にして殺されかけていたのだろう?


美人だったな~。しかしいやらしい目で見てたわけではない。たぶん。また会いたいな。あの2人。


それよりなんか修羅場みたいな展開おれにはどうやらご縁がないようで。なんか思っていたのと異世界転生って違うんだが。


ささっと身支度を終え、外でシェーンさんを待っていた。


すっとすれ違いざまに先ほどの2人組が頭を下げていった。あの小さな男の子がゴリラだなんてまだ信じられない。


おれも自然にお辞儀を返し、視線をまたプランナインに戻す。そろそろシェーンさんが出てくるころだ。


ふとなにか胸騒ぎを感じた。理由はとくにあるわけではない。だがなぜかおれは先ほどの2人が曲がった道を追いかけていた。


天が裂けるような悲鳴があたりからいくつも沸き起こる。


そこにはおびただしい出血量の狼少年とそれにすがって泣き叫ぶパトラさんがいた。


違う。そうじゃない。おれは彼女の絶望の叫びを必死に無視し、プランナイン温泉街へ全速力でもどった。おれは昔から感が良い。それが今ほど憎いと思ったことはない。


耳元を小さな妖精が魔法のようにささやいていた。<<死祭りだよ。楽しんで。>>


耳をかきむしった。ふざけるなああああ! なんだそれは!? キイキイわめく笑い声が遠ざかっていく。


駆け寄っている足に力が入らずめまいがする。いや血を吸われすぎたわけじゃなくて。


入口で血を出し倒れているシェーンが瞳に入ってきた。


なんで? あんなに強いシェーンさんが死ぬわけない。殺られるはずがないのに!!


歯を食いしばっておれは駆け寄った。


「死なせない。おれを置いていかないで下さい。お願いですから! 誰か! 助けて下さい! 誰か!」


なんだよ死祭りって!? 殺人鬼が出回っているのか? おれに超一流の回復魔法なんて使えるわけがないだろう。


この間のだってある友人からの借り物の魔術だったのだ。こんな深い傷ポーションなどでは治らない。


さっきまで彼女の側にいて、彼女の声がしていたのに。こんなことになるなら・・・。


ああ。おれは自分が嫌いだ。


彼女を揺らさないように引きずり端によせた。辛すぎて彼女の顔が見れなかった。


そっと息をはいた。この間にも時は刻まれていっている。


もうこれしかない。おれのすべて受け取ってくれ。自傷をしたおれの血しぶきが彼女の顔に吸い込まれていく。


暗い月がおれたちを照らしていた。




















読んでくれてマジでありがとう♪ (私もまじんシリーズで爆速で書けるようになりたいマジで) 今第一章の続き考えてまして、番外編で近々何話か出す予定です。(ちょっと凝って作りたいのでまた投稿遅くなったらすみませんm(__)m) ホラー展開もぼちぼち入れてこ。

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