1話
悪役令嬢物書くのやっぱり好きだなあ~(/ω\)
前作:「悪役令嬢が精霊召喚に失敗したようですよ!?」 では書けなかった内容です。前作を超える出来にしたいなあ。(前作かなりお気に入り)
123年3月1日 とある国で悪役令嬢が処刑され、この国の新たな第一王子の婚約者が発表された。
彼女の名はマリア。平民の娘だった。
その翌日3月2日第一王子の訃報が速報としてこの国に轟いた。
”第一王子死去。この国は一体どうなる”
王子の婚約者のマリアはその後姿をくらまし、事態は混乱を極めた。
後継者がいなくなり、王は決断した。
「我が国民に告ぐ。これより我がギセイニナール王国は隣の隣国へ併合する事になった。引き続き励むこと。」
「おい。噓だろ!?」
「おれたちの仕事は?」
「一体何がどうなっているの? 恐ろしい・・・。」
「怖いよお~。母さん!」
「おお、よしよし。大丈夫だから。」
全国民に批判と動揺が駆け巡る。
思えばあの日・・・。世界は変わってしまったのかも知れない。
*****
*事件当日
王室のとある一室で第一王子がヒロインを手籠めにしようとしていた。
「フフフ。やっと邪魔者がこの世から消えたよ。マリア。君と2人きりになれた・・・。」
「ええ。殿下。もう終わりですね。」 彼女の瞳からハイライトが消えた。
「グ、グッハ。どうして何だ。私はこんなにも君を愛していたのに。」
内臓が綻びでないように手で押さえる。
「ええ。私も殿下を愛していましたよ? でももう用済みです。」
熱い口付けをした後に深々とナイフで首を搔っ捌いた。王家の肖像画に血しぶきが盛大に飛び散る。
コツコツ。後ろから足音が鳴り響く。
「何て酷い女だ・・・。」
「あら。第二王子殿下。ご無沙汰しております。最後ぐらいはと、良い夢を見させただけですわ。」
「君を敵にまわさずにすんで良かったよ。」
「今でも味方ではありませんけども♪」
「クックック。その通りだな。」
「ええ。フフッ。」
互いに顔を見合わせながら真っ暗な部屋を見渡した。
「さて、この国は明日からどうなるんだろうか。」
「君はどうする? マリア。」
「あら。私の心配をして下さるの?」
「ハハッ。いい加減その気取った演技は止めても良いだろうに。単なる社交辞令だよ。君と会うのはこれっきりだろうから。」
「あら。ごめん遊ばせ。でも私の任務はここまで。後のこの国は”あの方”たちの意向でも白とでも黒とでもなる。それにねえ私そろそろ身の危険を感じていたところなの。今度は私が用済みになって消されかねない。」
「ああ。おっしゃる通りだな。私には直接被害が出ないのが喜ばしいよ。」
「では。殿下おたっしゃで。」
「君も。地獄で会おう。」
「そうね。多分私の方が先に落ちるわね。でも後悔はしていないわ。」
「それは同感だ・・・。君とはそこだけでも通じ合えて良かったよ。」
*****
123年3月3日 身元不明の遺体がカルピス海河口付近にて発見される。顔はひどく損傷しており、特に捜索願いの人物に該当なし。
王子は偶然王宮警備隊からこの情報を聞かせてもらった。
「最近また若い女性が亡くなっていたらしいぞ。」
「全く物騒な世の中になったものだねえ。お妃候補は行方不明。第一王子は暗殺されるは。おれたちの仕事がより責任重大になったものだな。」
「その話詳しく聞けないだろうか。」
「ハッ。殿下失礼いたしました。ご挨拶を遅れてしまった事誠にお詫び申し上げます。」
「申し訳ございません。私たちも詳細は分からないのですが、歳は10代後半から20代前半のそれは見事なピンク金髪をお持ちの高貴な方と思わしき人物です。肌は研がれ領家の娘の雰囲気があったそうです。」
「もしお時間を頂けるのでしたら、さらに詳しい情報を警備隊から受け取ってきて差し上げますが。」
「良い十分だ。我々の安全は諸君らの働きにかかっている。これからも引き続き頼んだぞ。」
「ハハッ。」
2人の兵士は最敬礼で殿下を見送った。
「そうか。マリア。君も殺されたのだな。1日も持たなかったとは。先に地獄で待っていてくれ。」
その独り言は誰にも気づかれることは無く、夜風にかき消された。
*****
*ある異世界転生者の話
おれの名前はシン。おれはギセイニナール王国の国の滅亡を無事見届けた。
この世界はおれはある小説投稿サイトで何とも後味の悪い小説にあった世界観まんまだったので知っていた。
いわゆる転生知識チートというヤツだ。いや。そうだと思いたい。この世界がどうなるかは知っていた。だがここは乙女ゲームの世界で。
一般庶民に転生してしまったおれは特に何にも関係なかった。
それにそれは良い方向へ向かう未来だったはずなのだ。この国にとっては。
第一王子にこの国を任せていたら国民の生活が廃れて、貧困層の割合が上がり国の維持が妖しくなり、この国は没落していく運命にあったと作者は名言していた。
なら、悪いがどっかの馬の骨とも知らない力なんて皆無に近い庶民の私が歴史に改ざんするように動いただろうか。
動けるはずもなかったのである。
というわけでおれは悪役令嬢を見殺しにすることにした。
異世界転生したからって別にチート能力もあったわけでもない。ただ、商才スキルMAXを最初から持っていた。
この世界ではこのスキルがある人はお金持ちになりやすいらしい。
まあ、父さんや母さんの話を信じるとだ。つまり・・・。別にレアスキルでも何でもない。この国の人口の2、3割はこのスキル保持者でさらにカンストもしているのだから。
掲げられる国旗が変えられた日。おれはいつもの通り近くの酒場を飲み歩いていた。この国の民は良く酒を飲む。酒が名産品であるからのなのか、国民性なのか。
理由はいくつあっても良い。とにかく美味しいのだ。
おれは酔っ払いながら夜道を月明かりを頼りに頼りない足取りでいつもの道から帰宅していた。
あの日。運命のいたずらか。おれはもしかしたら選択を誤ってしまったのかもしれない。
何故か月明かりが切なく感じてしまったのだ。おれは自宅へ真っ直ぐに帰らずに川のほとりを散歩しに行った。
夜風が水気を含み冷えている。
少し寒気を感じ身震いをした。早く帰らねば。こんな庶民の麻布の服なんて防寒の仕事なんて専門外だ。
くるりと向きを変え、元来た道を引き返す。向こうから人影が近づいていた。
男 いや。かなり小柄だな。女性かもしれない。この時間に一人きり?
不規則な動きが危なっかしい。酔っているのだろうか。いやこれは・・・。
よろめいて倒れる瞬間に走り間に合わせ、抱き留めた。
「大丈夫ですか。あなたは?」
「わ、私は・・・。」
支える手の平にべったりと血がこびりつく。鉄のような匂いが鼻の奥を刺激した。
これはもう助からないかもしれない。
間近で見た彼女の瞳は真っ赤に純血し、白目の部分はピンクに染まり、開いた瞳孔は金色に夜の月を照らしていた。
おれは声にもならない悲鳴を上げそうになり、彼女から離れそうになった。
上唇からはみ出す歯は明らかに人外のものだった。長く鋭利に尖っていた。だがその顔には見覚えがあった。
自宅の向かい側に住んでいる、いつも近所の小さな子と遊んであげている心優しい気立ての良い子のはずだった。
「ごめんなさい。このまま死なせて下さい。私はたくさんの罪を犯しました。フフフ。おかしいですよね。」
「・・・。」
「今だってこの国の元お妃候補を手にかけてきたのです。ですが存外強く、反撃されこの様です。」
絶望の表情を浮かべ彼女はせせら笑った。己の醜態を。
このゲームのヒロインを殺したのは彼女だったのか。原作にはそういった記述はなかった。ヒロインは突如退場してしまったのにはモヤモヤさせられてしまったものだ。きっとストーリー通りなら彼女もこのまま死ぬはずで。
おれの手の平に一筋の汗が流れた。
悪役令嬢の救出は確かにおれの手の届かないところにあった。でも、彼女は違うかもしれない。おれは彼女の知り合いでもある。
もしかしたらまだ助けられるのかもしれない。
吸血鬼は不老不死ときく。何かしら方法があるのかもしれない。
「どうやったら助かる?」
気付くと言葉に出してしまっていた。
「血、血が欲しい・・・。」
彼女の目からどんどん生気が抜けていく。もう意識もないようだ。
おれは成人男性で特に病気もしてないはずだし、健康だから400mlくらいなら大丈夫だろう。
でも知識がなかったからおそるおそるだったものの、手の甲の皮膚を嚙みちぎり彼女の口に押し当てた。
ドクンドクンと脈打っている。急な出血で少し目まいがしたものの、早めにハンカチで患部を押し当ておれは手当をした。
月明かりがようやく雲の間から差し込み彼女を照らし出す。
彼女の背に生えていた大きな翼と尻尾そして尖った歯、目が人間の姿に変わっていく。
おれはどうやら殺人犯を助けてしまったらしい。何がどうしてこうなってしまったんだ。
翌日、私は見たことのないベットに横たわり、まだ全身に力が入らず身を起こすことも出来なかった。
「どうして。私を助けたのですか。私はあの時死ぬべきでした。それが天からの罰なのだから。」
返事がない。
先ほどから人の気配がするので首を横に振る。
いつも家の前の通りで挨拶を交わしあう仲のお兄さん(名前は知らない)がベットの隣の椅子に座りに首を揺らしながら寝ていた。
読んでくれてありがとう♪
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