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【コミックス1巻発売中!】ど底辺令嬢に憑依した800年前の悪女はひっそり青春を楽しんでいる。  作者: ゆいレギナ
6章 稀代の悪女に増える罪

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第48話 悪女、少し本気を出す。

「くそっ!」


 私は急いで魔力を紡ぐ。そして攻撃的な細い熱線で、『母親』の頭部を貫こうとするも――それは魔術的な障壁で弾かれた。とっさにアイヴィンが防いだのだ。


 ズレた熱線の衝撃で、実験器具が壊れる音が響く。

 それとほぼ同時に、アイヴィンは首を掴む手をなんとか振りほどいたようだ。けほけほと咳き込みながらも……その『殺人人形』にかける声は優しい。


「ふふ、まだその身体に慣れていないからね。力加減を間違えちゃったんだよね?」

「アイヴィン、いい加減に――」

「黙れよっ!」


 目を覚ませと、最後まで言わせてもらえなかった。

 だって、彼ほどの頭脳の持ち主なら、わかっているはずなのだ。


 これが本当の母親でないことくらい。

 母親の顔をした殺人人形にすぎないことを、わかっていないはずがないのだ。


 それでも……彼は怒声をあげたいのを懸命に堪えて、私に向かっても極力優しい声を出そうとする。


「放っておいてくれていいからさ……きみは先に寝てきてよ。明日はちゃんと役人に会わせてあげるから。今晩だけは、さ……?」

「……ちゃんと自分で処分できるの?」

「そんな言い方⁉」


 ――やるしかない。


 私は有無を言わさず、再び指先に溜めた熱線を『母親』へと放った。

 大きな舌打ちとともに、それをアイヴィンは当然のように払う。


「これ以上は、冗談として流せないけど?」

「お生憎様。私は本気だよ」


 躊躇わず、今度は両手に集めた熱を雷へと変換して放つ。

 私の容赦ない攻撃に、アイヴィンが喚く。


「この――悪女がっ!」

「そうだよ。私は稀代の悪女・ノーラ=ノーズだもの」


 だから、存分に恨めばいい。

 恨みなんか数えきれないほど背負い慣れている。私が封印される時の民衆の歓喜の声援を、きっとあなたは知らないだろう。その民衆が今更一人や二人増えようが、私にはさして問題ないのだ。だから、存分に恨んでほしい。


 その妄執が私への復讐心に代わったところで――私はどうってことないのだから。


(……嘘つき)

(最近のシシリーは減らず口が多くないかな)


 心の中でそんな軽口を叩きつつも、状態は正直悪かった。

 ずーっとこちとら、全力で攻撃しているものの……一向にターゲットに当たってくれないのだ。全てを完璧にアイヴィンが防いでしまっている。実験室内はもうボロボロだけどね。


 埒が明かないと攻撃の手を一瞬緩めた時、アイヴィンが笑う。


「もう諦めなよ。トラバスタ嬢の一般的な魔力量じゃ、いくらセンスが長けていたって俺は出し抜けないよ? もうきみは一般人なんだから。自分の身の回りだけ大切にしておきなよ」

「ふーん、言ったね?」


 そこまで言われて黙っていられるほど、私はできた人間ではない。

 それに……こいつはわかっていないのかな?


 私の青春に、常に付きまとってきたのがアイヴィン=ダール(あなた)なのにね?

 だから私は息を整えてから、手を上に掲げた。


「来い――(ノーラ=ノーズ)の魔力!」

「はっ」


 アイヴィンの嘲笑だけが聞こえる。

 いくらシシリーの魔力を込めても、遠くから私の魔力を連れてくる気配はない。


「無駄だよ。この研究所の全体に結界が張ってある。外からどんな魔導的な攻撃をされても、通さないような結界がね。だから中からいくらきみ自身の魔力を呼ぼうとも、それがきみの元まで届くことはない」


 それでも手を掲げ続ける哀れな私に、アイヴィンは慈愛にも似た笑みを浮かべた時――私は大きく足を踏み鳴らした。途端、わずかなランプに照らされた私の影が鋭利に伸び、その黒い実態がアイヴィンの喉元を狙う。


「なっ」


 たかだか『次代の賢者』如きが馬鹿にしないでくれるかな。

 私は稀代の悪女と謳われる前に、八百年生きている『大賢者』だ。あなたの言うセンスだけで、十八歳の若造を出し抜くくらい簡単だよ。


 だから、アイヴィンの自身への致命的な攻撃を防ぐための一瞬で、私はシンプルな熱線を人形へ放とうとした時だった。


「えっ?」


 今度、思わず目を見開いたのは私の方。

 その『母親』を模しただけの殺人人形(キリングドール)が、自らアイヴィンの前に踊り出し――私の伸びた黒い影が、彼女の胸に光る赤いクリスタルを貫いた。 


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挿絵(By みてみん)


出版社:アース・スタールナ

イラストレーター:あかつき聖 先生

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ヒロインが可愛いと読者の皆様に「やっほい」いただいています。

本屋さんで見かけた際はぜひよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] まあ、こんだけ壊しまくったら再現実験も出来ないから当分殺人人形なんてものは出てこないね。 こんなものを造ったから、前の魔法文明は滅んだんじゃないかな? [一言] あー、やっぱりこうなったか…
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