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【コミックス1巻発売中!】ど底辺令嬢に憑依した800年前の悪女はひっそり青春を楽しんでいる。  作者: ゆいレギナ
5章 夏休みこそ親孝行をしよう!

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第33話 悪女、夏休みに浮かれる。


 ◆


 夏休みはいつも億劫だった。

 だって実家に帰っても、家事と雑用と仕事の手伝いと、変わらぬネリアの世話。

 家事などがない分、学校の方がいくらもマシ。むしろ授業という逃げられる時間があるだけ幸せだった。勉強は楽しいもの。


「おー、こんな乗合馬車にお嬢さんがひとりとは珍しいなぁ」


 でも、乗合馬車はそんなに嫌いではなかった。当然ネリアは個人で手配した高級馬車で実家まで帰る。道中のホテルの手配も私がしていたけど、最高級の部屋を用意しないと怒られていた。その分、費用が少なくなった私が乗合馬車で、安宿を継いで実家まで帰る羽目になっていたのだ。


 もちろん護衛もいない一人旅。怖い人も少なくないけど……優しい人だって同じくらいいる。果物を分けてくれたりする人も少なくなかった。そんな一期一会の出会いに、この世も腐ったものではないと救われた気持ちになったものだ。


 実家の滞在期間はおよそ一か月。その往復で二週間。

 その一人の二週間だけが、わたしの夏休み。


 一人で、わたしだけの――お金はないけど、いろんな刺激を受ける夏休み。


 ◆

 

 さて、王様に喧嘩を売ろう!


 そう思いついたとて、相手は王様。今の私は元・ど底辺の令嬢。

 会おうと思ったところで、普通に会えるはずがない。謁見などを申し入れたらこう……秘密裏に招いてもらえたりとか、もしかしたらしそうな雰囲気ではあったけれど……そんなこちらから下に出て、しかも相手の独壇場とかまっぴらごめんである。私はあいつをぎゃふんと泣かせてやりたいのだ。


 ――と、そんなこんなで、あっという間に夏休み。

 ちなみに、学期末試験はもちろん余裕だった。本当にシシリーは頭がいい。魔導解析クラブでの勉強や研究はもちろんのこと、私とアニータの放課後魔術訓練にもきちんと知識ではついてきている。


 きっかりSとAで埋まった成績表を受け取って、楽しい夏休みの始まりである。やっぱり実技面で如何に教師以上の魔導を披露したとて、他人から魔力を借りる生徒にSは与えられないらしい。ま、それはそうだね。


「でも、まさかこのわたくしが元『枯草令嬢』に成績で劣る日が来るとは思いませんでしたわ……」

「ごめんね。もっと悔しがっていいよ?」

「本当、さっさとあんな姉なんか見捨てて実力出してなさいって話ですわよ!」


 今日も今日とてアニータに怒られながら、私は見送られようとしていた。

 ちなみにアニータに『あんな姉』呼ばわりされたシシリーの姉・ネリアは重たそうな鞄をひとりで持っていた。両親へのお土産が入っているのかな? それとも自分の洋服が入っているのかな? どちらにしろ、今日も顔色はあまりよくなく、着ているワンピースもどこかくたびれている。


 トラバスタ領は学校とかなり離れた場所にあるそうで、里帰りには休み初日から馬車旅を始める必要があるらしい。アニータはゆっくり準備してから、ご実家のヘルゲ領に戻るとのこと。


 そんなアニータは試験明けから、ずーっと私の勧誘に必死だった。


「ねぇ、本当にトラバスタ領に戻るの? わたくしの家で過ごしてもいいんですのよ? 湖も綺麗ですし、自慢の避暑地ですわよ? それに近頃我が家は医療薬研究にも熱を入れてますの。二学期は魔導薬学の試験が山場だといいますし、予習するにはうってつけの環境ですわ!」

「ふふっ、アニータとひと夏過ごすのも、すっごく楽しそうではあるんだけど……親孝行できるのも、今しかないしね」


 もちろん『(ノーラ=ノーズ)』がシシリーの親の顔を拝める機会なんてこの休みくらいしかない、といった意味の発言なのだが……眉根を寄せるアニータは、どうやら別の解釈をしたらしい。


「あなたのご両親、実はどこか具合が……」


(悪いの?)

(二人ともすこぶる健康だと思うよ……)


 シシリーが言うなら、間違いないのだろう。

 つまり、私も遠慮なく『甘えられる』ということだね!


「アニータ、また休み明けも仲良くしてね!」

「当たり前ですわ! あなたこそ、何かありましたらすぐわたくしを頼りにするんですよ!」

「りょうかい~」


 あぁ、今日も私の友人がとても愛い。

 大好きな友達とひと月以上会えないのは、とても名残惜しいけれど……。


「それじゃあ、お姉ちゃん。行こうか!」


 私はずっと不貞腐れた顔で待っていた姉・ネリアの腕を組む。




 そして、馬車の中は当然二人きりの姉妹水入らず。

 それなのに、ネリアの顔は浮かない。


「なんであんたなんかと同じ馬車に乗らないといけないの……?」

「行き先は同じなのに、私だけ乗合馬車で帰るのも無駄な出費じゃない?」


 至極当然の摂理を説いても、ネリアは余計に不貞腐れるのみ。


「あ、あの高飛車な令嬢に誘われてたんじゃないの⁉」

「おー、よく知ってるねー。でも、私もたまにはパパとママに会いたいしさ? 一緒に仲良く親孝行しようよ」

「誰があんたなんかと――」

「ところでお姉ちゃん、今までの試験の代筆などの件って、パパとママは知ってるんだっけ? あとお姉ちゃんは成績表どうだった? 私ねー、学力検査は全部Sだったんだけど、実技面が頑張ってもAが限界でさー」

「…………」


 せっかくお喋りしているのに、なぜかお姉ちゃんは押し黙ってしまったけど。

 そんなお姉ちゃんに、私はにっこりと言い放つ。


「楽しい夏休みにしようね、お姉ちゃん!」



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― 新着の感想 ―
妹圧が強い……助けてシシリー!!!
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