8.ある少女との出会い〜side王太子リード〜
※王太子リードの過去のお話です。
私は、ダール王国の王太子・リード・ダールである。
私は、幼い頃より王太子としての教育を受けてきた。
私は、自分で言うのも何だがやる事は基本卒なくこなせるタイプだった。
しかし、王太子の私にの事をただの【リード】として見てくれる者は家族と幼い頃よりの共に学び、遊んでいた宰相・トーマスの息子のルカだけであった。
ルカには、現在私の専属の護衛騎士をしてもらっている。
ルカとは、時間が空けば共に時間を過ごしてきた事もあれば、私が悩んでいる時は親身になり相談に乗ってくれたりと一番近くにいて自分の一番の良き理解者だと思っていた、私はいつしかルカに対して友達以上の特別な感情が芽生え始めていた。
後に、その感情は同い年であるが兄の様に思う気持ちだったのだと気づいた。
私が、九歳になった年に王宮で何組かの貴族を招いてのお茶会が開かれた。
招かれた貴族の者たちは、一部の者を除きほぼほぼ王太子である私にここぞとばかりに媚を売ってきた。
私は、その者達にヘラヘラと笑顔で対応する事に嫌気がさしルカを連れて抜け出そうと考えていた。
しかし、ルカは父である宰相の横でとても抜け出せる状況ではなさそうだった。
私は、仕方なく一人でお茶会会場をそっと抜け出し庭のほとりにある一角へと行ったのだ。
そこは、大きな木が生えていて回りには大きめな植木がある為、外側からは見えにくくなっている場所だった。
私は、この場所の大きな木の下が気に入っていた。
植木と植木の間に、子供が通れる程の隙間があるので私はいつもそこからその一角に入っていた。
この日も、いつもの様にその隙間から入り込み木の下までいくとそこに誰かが居たのだった。
私は、その人物に近づき様子を伺った。
そこにいたのは、小さな少女だった…
その少女は、気持ちよさそうに眠っている様だった。
眠っている少女を、覗き込んだ私は驚いた。
寝ているというのに、とてもきれいな顔立ちをした少女であったのだ。
私は、思わず寝ている少女の頬を指でツンッと押した。
すると、少女は寝たままふにぁ〜っと笑った。
そして、
「もう食べられませんわ…」
と、寝言を言ったのだった。
私は、思わず
「プッッ」
と笑ってしまった。
すると、その漏れた声で少女が目を覚ましたのだ。
少女は、まだ寝ぼけていたのかボーっと私の事を見て、回りを見渡した。
すると、突然少女が声を上げた。
「あぁ〜。どうしましょ…わたくし寝てしまっていたのね…」
少女は、自分が寝てしまっていた事に気づき驚きを隠せず動揺していた。
そして、私に気づいた。
「えっ……と…、どちら様ですか?」
少女は、私を見るなり不思議そうに尋ねてきた。
どうやら、少女は私の事を王太子だと気づいていない様だった。
「あ…、私は…今日のお茶会に招かれ、父と母と共に参加してる者だよ。」
私は、ニコリと微笑み応えた。
「あらっ。そうでしたのね…では、わたくしと同じですわね。わたくしも、お父様とお母様とお兄様と弟と共にお茶会に招かれた参加しました。」
少女は、私の言葉を聞き安心した様に笑顔で応えた。
「お茶会に参加しているのに、何故こんな所へ?」
私は、疑問に思っていたことを少女に尋ねた。
「えっと…実はですね…お茶会が退屈になってこっそり抜け出して歩いていたらここへと迷い込んでしまったのです…早く戻らないとお父様方が心配すると思い、どうにかしてお茶会の会場のに戻らなければと思い考えていたのですが…気づいたら寝てしまっていた様なのです…」
少女は、経緯を説明しながら苦笑いで応えた。
「そうだったのか…しかし、何故退屈だったのだ?」
私は、少女も自分と同じようにお茶会が嫌になり抜け出して来たようなので理由を尋ねた。
「貴族の方々が、次から次に挨拶し合ってばかりで少々疲れてしまいまして…お菓子とお茶をよばれようと思えば、また次の方が来られてで…それで、何だか退屈になってしまいまして…少し気晴らしにお散歩でもしようとこっそり抜け出したのです…こんな事を言うなんて令嬢としては良くはないのですが…あなた様も、道に迷われたのですか?」
少女は、少し困った様な表情で説明してくれた。
「あぁ…そうだな…私も君と同じような理由かな…少々疲れてしまってね…」
私は、苦笑いをしながら応えた。
「ふふ…やっぱりそうでしたのね。では、わたくし達は仲間ですわね。ふふ…仲間が居てくれて良かったですわ……あらっ…」
少女は、クスクスと笑いながら言った。
そして、何かに気づいた様だった。
「あら…ここ、お怪我なさってますわ。切れてますわ…植木の木などで擦ってしまわれたのかしら…あっ、そうだわ。」
少女は、私の手を指さした。
どうやら私の手の甲が擦れて切れているのに気づいた様だった。
私は、いつの間に…と全く気づかなかった。
そして、少女はポケットからハンカチを出し私を取り優しくハンカチを巻いてくれた。
「今日は、たまたまハンカチを二枚持っていて良かったですわ。こちらは使用していないきれいなハンカチですので。こうしてハンカチで押えておけば傷口に汚れが入り込んだりしませんわ。後で、きちんと消毒して貰ってくださいね。」
少女は、ニコニコと笑いながら私の手を処置してくれたのだった。
すると…
「マリリーーン。どこだー?」
と、どこからか男性の声がした。
「お兄様の声だわ…。」
少女が言った。
「行かなくてはいけないですわね。申し訳ありませんがわたくし、どうやらお兄様が探しているみたいですので行きますわね。傷口はきちんと消毒して貰って下さいね。では…失礼します…あっ…そうですわ…ここへ退屈して迷い込んだのは二人だけの秘密にしてて下さいね。退屈で抜け出したなんて知られては怒られちゃいますから…」
少女は、兄が探しに来た様で兄の元へ行くようだった。
少女は、私に挨拶をすると思い出した様にここでの事は秘密にしてくれと言ってきた。
「わかった…気をつけて…消毒もきちんとするし、ここでの事もちゃんと秘密にしておくさ……あっ…ハンカチは…」
私は、彼女に言った。
「ハンカチは、差し上げますわ。口止め料としてお受けとり下さい。」
少女は、花のような笑顔で言いながら兄の元へと戻っていった。
私は、その笑顔を見た瞬間…雷の様なものが落ちてきた感覚になった。
(あの様に、何も躊躇うことなく私がどこの誰かも知らないというのに傷口の処置をしてくれ、ハンカチを口止め料としてなどと言う者など初めてだな……それに…何だ…この心臓がうるさいくらいにドキドキしている…私はどうしたのだ…)
私は、少女が去った後にそんな事を考えていたのだった。
そして…その後…
それが一目惚れだと気づいたのは言うまでもない…
そう…私は…初めて会った少女に恋をしたのだった…
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