40.気づいた気持ち、気づきたくなかった気持ち…
マリリンは、国王と王妃達と話が終わった後…
リードから声をかけられた。
「マリリン…今日は父上や母上の元へと訪れてくれてありがとう。父上も母上もここの数ヶ月、公務が忙しくなかなかマリリンと顔を合わせる機会が持てなかったが、二人共マリリンに会うのを楽しみにしていたから機会が持てて良かったよ。」
リードが、マリリンへ笑顔で言った。
「いえ…こちらこそ…婚約のお話が決まってから陛下や王妃様とお会いする機会がなく申し訳ないと思っていましたので…今日この様な機会を設けて頂き感謝しております。それに…仮販売の件もお礼をお伝えする事が出来て良かったです。」
マリリンも、笑顔でリードへ言った。
「そう言って貰えると、私も嬉しいよ。それで…この後なんだがストラム公爵と公爵夫人は父上と母上とお茶を飲む様なのだが、その間少し…私と出かけないか?」
リードは、どこかマリリンの顔色を伺う様な表情でマリリンへ尋ねた。
「お父様とお母様がですか…はい。分かりました。リード様にお供致しますわ…」
マリリンは、少し考えた後…微笑んでリードへ応えた。
(先日のわたくしの態度の事を、リード様に謝っておきたいとも思っていたから丁度いい機会だわ。)
マリリンは、リードからの誘いにそんな事を思っていた。
「そうか…良かった…では、行こうか。連れて行きたい場所かあるんだよ。ここからそう遠くない所だから。」
リードは、ホッとした様に微笑みマリリンへ言った。
「はい…」
マリリンは、微笑みながら応えた。
そして、リードとマリリンは馬車を走らせて王宮から十五分程の場所へと到着した。
馬車から降りた二人は、リードの誘導で少し歩いた。
そして、歩いた先には……
とても綺麗な白詰草が一面に咲いている場所だった。
それを見たマリリンは思わず…
「うわ〜…何て綺麗な場所なのでしょう。この様に沢山の白詰草が咲いているだなんて…リード様、この様な素敵な場所へ連れてきて下さりありがとうございます。」
マリリンは、とびきりの笑顔でリードへお礼を言った。
「あぁ…マリリンなら喜んでくれると思っていたよ。君のその笑顔が見たくて連れてきたんだよ。」
リードは、優しい笑みを浮かべながらマリリンへと言った。
あまりにも優しい笑みに、マリリンは思わずドキッとしたのだった。
「さぁ…あそこへ座れそうな場所があるからそこへ座ろうか…」
リードは、マリリンへそう言うとその場まで歩いた。
「さぁ…ここなら洋服が汚れる事はないから。さぁ…座って白詰草をゆっくり見ることが出来るよ。」
リードが、優しくマリリンへと言った。
「はい。」
マリリンは、そう言うとその場へと腰を下ろした。
腰を下ろした、二人は心地よい風が吹く中で穏やかに白詰草を眺めていた。
すると…マリリンの肩へポンっと何かが寄りかかってきた。
リードだった…
「リッ…リード様?どうされました?」
マリリンは、急に寄りかかってきたリードに驚き慌てて言った。
だが…リードからの返答はなかった…
不思議に思ったマリリンは、そっとリードの顔を覗き込んだ。
すると…リードは寝息を立てて眠ってしまっていたのだ。
(ふふ…リード様ったら、どうしたのかと思ったら寝てしまわれたのですね。連日の公務でお疲れになってるのですね…いい機会ですから寝かせておいて差し上げましょ…リード様の寝顔をこんなに間近で見ることが出来るだなんて…推しの寝顔頂きましたわ…ふふ…そうだわ。リード様が寝ている間にあれでも作りましょうかしら…)
マリリンは、リードの寝顔を見ながらそんな事を思っていた。
そして、マリリンはリードをそっと自分から離して後ろにあった、小さな木にリードの身体を持たれかけさせた。
そして、マリリンは沢山の白詰草を採り集めて花冠を作ったのだ。
(幼い頃によく、家族で白詰草畑へ出かけていたわね。その時によくお母様がお父様に、わたくしがお兄様とアースに花冠を作っていたわね。懐かしいわね。花冠を作るなんて子供の時以来ですわね…)
マリリンは、幼い頃の事を思い出しながら思っていた。
そして、マリリンは作った花冠を寝ているリードの頭にそっと置いた。
頭に、花冠を置かれたことでリードは目を覚ました。
「あら…起こしてしまいましたか…申し訳ありません…」
マリリンは、起きてしまったリードに慌てて言った。
「いや…大丈夫だ。私は寝てしまっていたのか…せっかくマリリンとの時間を過ごそうと思っていたのに…」
リードは、寝てしまった事を後悔したかの様に言った。
「ふふ…リード様は連日の公務に加え、わたくしの仮販売のお手伝いまでして頂いていたのですからお疲れになっていたのでしょう…リード様の寝顔を見ていたら起こしてしまうのが申し訳なくなりましたわ…それに…」
マリリンは、くすくすと微笑みながら言いリードの頭の上を指さした。
リードは、不思議に思い自分の頭に手をやった。
そして、頭に乗っていた花冠を頭から取り手にした。
「これは…?」
リードは、マリリンへ尋ねた。
「リード様が寝ている間に、花冠を作ってましたの。仮販売をお手伝いして下さったお礼と思いまして。」
マリリンは、にこりと笑いながらリードに言った。
「マリリンが?私の為に?ありがとう。とても嬉しいよ…寝てしまって後悔したが、お陰でこの様な嬉しい贈り物を貰えたよ…」
リードは、心から嬉しそうに微笑みながらマリリンへお礼を言った。
(リード様に、喜んで貰えて良かったですわ。こんな嬉しそうなお顔を見れるならいつでもお作りしたくなりますわ。こんな楽しく嬉しい時間がずっと続けばいいのに…もっとリード様と一緒にいれたらどんなにいいかしら…………え?わたくし…今…リード様ともっと一緒に居たいと思ったの………?)
マリリンは、リードの喜ぶ顔を見たながらそんな事を思っていた時…ふと、自分の思っている事に驚いた…
「マリリン?どうしたの?」
マリリンが、急に驚いた顔をしたのでリードは心配そうにマリリンに尋ねた。
「え?あっ…何でもありませんわ。リード様がそこまでお喜びになって下さるなんて思ってもみなかったので…」
マリリンは、誤魔化す様に微笑んで応えた。
「そうなのかい?私は、マリリンから貰える物ならば何でも嬉しいさ。」
リードは、嬉しそうな笑顔でマリリンへ言った。
マリリンは、そんなリードの笑顔を見て心臓がドキドキしている事に気づいた…
そして……
(あぁ…そうか…わたくし…気づいてしまいましたわ…わたくしったら…いつの間にかリード様に恋をしていたのだわ…ドキドキしたりモヤモヤしたりしたのはそのせいだったのだわ…はは…まさか推しに恋をしていまうなんて…寄りにもよって…想い人がいる方に恋をしたなんて………こんな気持ち気づきたくなかったですわ………)
マリリンは、気づいてしまったのだ…
自分が、いつの間にかリードに対して恋心を抱いていた事を……




