22.ついに完成しました
毎日慌ただしく過ぎていく中、二週間前に漬けておいた薬草が頃合いになっていた。
マリリンは、早速完成した薬草入りの原液を、ろ紙代わりにした清潔な薄い布を使い丁寧にろ過していった。
そこへ、前世でいうグリセリンに似た成分の物を入れて混ぜていった。
(よし。これで完成だわ。匂いもほとんど気にならない程度だわ。後は…使い心地ね…)
マリリンは、完成した薬草化粧水を前に考えていた。
そして、完成した化粧水を自分の腕でパッチテストを行った。
(いい感じですわね。成分も問題なさそうですわ。前世では研究所に色々な数値を測ったりしたけれどこの世界にそんなものはないから、自分の経験を信じるしかありませんわね…酷めの敏感肌の方には、これを少しきれいな水で薄めて使用してもらった方が良さそうですわね。茎を乾燥させたお茶もいい感じの仕上がりですわね。これでルカ様の妹さんにも使って頂けるわね)
マリリンは、化粧水のテストも行い成分や使い心地などを確認しながら考えていた。
そして、完成した化粧水を一度熱湯煮沸した長細い瓶へと注いだ。
茎を乾燥して作ったお茶は、きれいな紙へと包んだ。
そして、その二つを可愛らしくラッピングした。
(よし。これはルカ様の妹さんに渡す分。他の完成品も同じ様に包装しておきましょう。この化粧水を沢山の方に使ってみて欲しいのだけどどうしたらいいかしら…王都へ出て販売してみたいけれど難しいかしら…ひとまずルカ様の妹さんの分はルカ様にお渡ししなければならないから、リード様へお手紙をお出ししましょう。残りのものについては、お父様とお母様に相談してみましょうかしら…)
マリリンは、完成した化粧水を沢山の人に使ってみて欲しいと思い、いい案がないかと考えていた。
離れを後にして、マリリンはケインの執務室へと向かった。
ケインに化粧水の販売について相談してみたのだった。
母である、アイリーンにも同席してもらった。
「ふむ…話は大体分かったよ。王都での販売か…王都での販売となると一旦陛下に許可を頂かなければならないな…私達だけの判断では難しいからね…」
ケインは、困った様な表情でマリリンへ応えた。
「そうですわね…まず陛下にお手紙をお出しして、返事次第でまた動いてみる事にしましょう。それより…マリリン、あなた凄いわね。このような素敵なものを作ってしまうなんて…幼い頃から本をよく読む頭の賢い子だったけれど化粧水を完成させるなんて。わたくしは、鼻が高いですわ。ふふ…」
アイリーンは、微笑みながら優しくマリリンへと言った。
「ありがとうございます。お母様。お父様とお母様が昔から沢山の素敵な本を読ませ下さったお陰ですわね。わたくしの作った物で少しでも悩んでる方の力になれたら喜ばしい事ですわ。ふふ…」
マリリンも、微笑みながら応えた。
「あぁ…私の娘は本当に美しいだけではなく立派に育ってくれて嬉しい限りだよ。」
ケインも、微笑みながら胸を張り言った。
「ふふ…お父様ったら…あっ…そうですわ。今回作った化粧水を一つ、リード様の専属騎士のルカ様にお渡しする事になりました。ルカ様の妹さんが肌トラブルにお悩みになっていらっしゃるみたいで…完成したのでルカ様にお教えしたいのでリード様にお手紙を出しでも大丈夫でしょうか?」
マリリンが、思い出したかの様にケインへ尋ねた。
「なっ…殿下にだと?!あっ…ああ…ルカ様にお教えするのであれば殿下へお伝えしなければならないからな………お手紙をお出ししないさい…」
ケインは、リードの名前を聞くなり反射的に少し顔を引きつらせながらマリリンへ応えた。
(お父様、リード様の名前出すと毎回表情が引き攣っているのは気の所為かしら……やっぱり、わたくしとリード様の婚約を楽しみにしていたのに、今はリード様の為とはいえ婚約取り消しを保留にしているけど落ち着いたらやはり取り消しするのだから、お父様からしたらよほどショックなのかしら…何だか悪いことをしてしまってるわね…でも、お父様ごめんなさい…これもリード様とわたくしの幸せの為なのです…)
マリリンは、ケインの表情を見ながら心の中でケインへ申し訳ないと思っていた…
「はい。ありがとうございます。お父様。それでは、わたくしはリード様へお手紙を書いてまいります。王都での件はお父様にお任せする形になりますが宜しくお願いします。」
マリリンは、ケインにお願いするとリードへ手紙を書くために、執務室を後にして自室へと戻ったのだった。
マリリンがリードに送った手紙の返事は、すぐに送られて来た。
リードから送られて来た手紙には………
親愛なるマリリン
手紙ありがとう。
君から手紙を貰えるなどおもってもみなかったから、嬉しかったよ…
ルカの妹・アリスへ贈る化粧水の件だが、私がルカへと伝えておいたよ。
それに伴い、ルカとアリスがマリリンを邸へと招待したいとの事だ。
マリリン一人で初めての場所へ行くのは不安だと思うので、二日後の朝に私がマリリンを迎えに行くので一緒に宰相邸へと行こう。
では…二日後の会おう…
リード・ダール
(リード様は、お顔だけでなく字までもきれいですのね…本当に非の打ち所がないとは正にこの事ですわね…それにしてもリード様からのお手紙…家宝にしましょう…この世界では残念な事に推しグッズなど売っていないから、推しからの手紙なんて貴重中の貴重なものですわ…ふふ…手紙を家宝にする事は、別にリード様とルカ様の仲を邪魔する事にはならないですものね…ふふ…)
マリリンは、推しであるリードからの手紙を見つめてニヤニヤしながら思っていた…
まさか…この家宝がどんどん増えていく事になるとは、この時のマリリンは知る由もなかった……




