21.美しく成長している彼女〜side王太子リード〜
※王太子リード目線のお話です。
私の元に、ストラム公爵からのマリリンに関する事が記載されている手紙が届けられた。
手紙には、マリリンが何年も伸ばしていた前髪をストラム公爵達が知らない間に待女に切ってもらっていたと…
(何だって?!マリリンが前髪を?という事はマリリンの美しい瞳が晒されているという事ではないか…)
私は、そう考えるとたまらなくモヤモヤした。
更に、明日は朝からマリリンが待女と二人で薬草を採りに行くとの事であった。
行き先である森は、王都の入口付近にある小さな森であった。
いくら小さな森だろうとも、女性二人で行くなど危険すぎると思った私は早急に影を呼び付けて、明日のマリリン達の監視を言いつけたのだった。
翌日、私はストラム公爵に話をする為に公爵邸へと向かっていた。
だが、ストラム公爵は急遽大切な仕事が入った様で公爵邸を留守にしていた。
私は、その間にマリリンとの時間でも過ごそうと思い執事にマリリンの居場所を聞きルカを連れて庭へと足を運んだ。
少し歩いていると、庭師らしき男性と少年らしき人物とマリリンが楽しそうに笑いながら話しているのを見つけた。
(あの少年らしき人物は、明らかにマリリンに好意を抱いている目をしているな…)
私は、マリリンと話をしている少年を見てすぐに思った。
私は、すぐにマリリン達の元へ行き声をかけた。
私の声で振り返ったマリリンを見て驚いた。
長かった前髪を切り揃えていたマリリンの美しさの破壊力は凄まじかった。
私が居ることに驚いている顔も、笑った顔も、困った顔も全てあの初めて出会った時の少女の面影を残していたが、今のマリリンはあの頃の何倍も可愛く美しかった。
ルカも、マリリンを見て驚いている様だった。
私は、マリリンが庭師達に渡していたマリリンが手作りしたというクッキーを、自分だけ食べられない事が嫌で半ば無理矢理食べたいとマリリンへ言った。
マリリンは、困っていたが最終的に了承してくれた。
私は、庭師の息子のバットに笑顔で軽く牽制をしておきマリリンに案内されテラスへと向かった。
マリリンが急ぎお茶の手配をしてくれ、クッキーも丁寧に取り分けてくれた。
ルカが毒味をと先にクッキーを口にしようとしたので、毒味は必要ないと私はルカよりも先にクッキーを口に入れた。
たとえ、毒味であっても私より先にルカが食べるなど面白くなかったのだ。
それに、マリリンが変な物など入れるはずがないと信じていたからだ。
マリリンの手作りクッキーは、ハーブ入りの物だったがとても食べやすい甘さで美味しかったのだ。
私は、マリリンのドレスではない服装についても切り揃えた前髪についても尋ねた。
服装の事をすっかり忘れていたマリリンの慌てぶりが、可愛らしくてたまらなかった。
前髪の件も、危険をなくす為との事だったがこの件については後ほど、ストラム公爵に話をしようと思った。
こんなにも美しさが晒されていてはまずいと思ったからだ…
そして、今日採りに行った薬草の話も聞いた。
念の為、次からは誰か男性を付けるようにと忠告しておいた。
マリリンに、万が一危険が及ぶなど考えただけでも恐ろしい事だからだ。
私が忠告すると、マリリンは次からは庭師の息子のバットを連れて行くと言った。
(バットだと?あの者は駄目だ…こうなれば私が付き添うという手もあるな…)
私は、バットが付き添いをするくらいなら自分がと心から思った。
私が、マリリンが楽しそうに話をしている姿に癒やされていた時…
ストラム公爵が帰宅したとの伝言を受け、執務室へと向かわねばならなくなった。
テラスにマリリンを一人残しておく訳にもいかないので、ルカを残して私は執務室へと向かった。
執務室へと、向かった私はストラム公爵へ今後もしっかりとマリリンの行動報告をして欲しいという事…
マリリンの美しさが、だだ漏れになっている事に対しての対策をしなければならない事…などを念入りに話した。
ある程度の話がまとまったので、私はテラスへと戻った。
テラスへ近づくと、笑い声が聞こえた。
そこには、マリリンとルカが楽しそうに笑っている光景があった。
私は、驚いたと共に焦りも感じていた。
(ルカがあの様に笑っている姿を見るのはいつぶりだ…ルカは幼い頃より歳の割に落ち着きがある上に、ケラケラと笑うタイプではなかった…笑うとしても私の前か家族の前だけだったが…あの様にマリリンと笑いながら話をしているとは…先程もあえて私には言わなかったのだろうが、前髪を切り揃えているマリリンを見てとても驚いていた様だが、ルカもマリリンの美しさに驚いたのだろう…)
私は、そんな事を考えていると不安になり思わず二人へ声をかけた。
私は、自分がいない間に二人が仲良く話していた事にモヤモヤしていたからかそれが態度に出ていた様で、ルカがフォローする様にマリリンとの話の内容を説明してくれたのだ。
どうやら、ルカの妹のアリスの肌の悩みについての話の様であった。
私は、話の内容がアリスの事であった事に少しホッとしたのだ。
そして、私はその後楽しそうに嬉しそうに話すマリリンを見て、昔を思い出したまらなくなりマリリンの手を握ったのだ。
マリリンは、固まっている程驚いていた。
ルカも、思わず固まっていた。
私は、そんなものはお構いなしにマリリンの手を握りマリリンの温もりを噛み締めていた。
(あぁ…早く毎日毎日、こうしてマリリンの手を握ったり抱きしめたり出来る日がやってこないだろうか…)
私は、そう思っていた…
余りの驚きからか、マリリンは意味がわからない事を言う程困っていた様だったので、私はマリリンに謝りそっと手を離したのだった。
マリリンは、朝から動いているからか少し疲れている様に見えたので、私はマリリンへ休むように伝え公爵邸を後にした。
今日、改めて思った。
やはり、一日でも早くマリリンとの婚約を本物のものにしなくてはならないと…
(いや…本物なのだが、マリリンの気持ちの問題が大きな壁となっているからな…)
私は、そんな事を思いながら執務をこなしたのだった。