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10.王太子は決意した〜side王太子リード〜

その後、私の計画は順調に進んでいた。


ストラム公爵のお陰もあり、マリリンは見た目を地味な感じにしたので美しさが上手く隠されていた。

あの、美しさはストラム公爵達以外は私だけが知っていればいいと思っていたのだ。


実は、私はストラム公爵にもう一つお願いをしていたのだ。

それは、マリリンの日頃の生活の様子を細かく報告して欲しいという事だ。


日頃の、マリリンの様子を私は知っておきたかったからだ。

マリリンの好きな食べ物、好きな本、好きな花など婚約が正式に成立した時の為にも知っておいた方がいいと思ったからだ。


初めて、マリリンに会った時にマリリンが怪我をした私の手に巻いてくれたハンカチも、洗濯をして大切にしまっている。

私の宝物だ。

その宝物を見つめながら、幸せに浸っていた私をルカが呆れた様な目で見ていた。


「その目は、何?」


私が、ルカに尋ねた。


「いや…ハンカチを見るたびにニヤニヤと笑っているから気持ち悪くてな…」


ルカは、苦笑いしながら私に言った。


「主に向かって、気持ち悪いとは何だ?それに…私はマリリンとの思い出に浸っているだけだ。」


私は、ルカを少し睨むように見て言った。


「そうかよ…それは幸せな事で…君がそこまでご執心のご令嬢は今も、君がこんな風にハンカチを眺めながらニヤついている事など知る由もないないんだろうな…しかし、幼い頃から何かに執着した事がなく私としか近い接点を持たなかった程の君が一人の少女にここまでご執心とはね…そんなにもいいご令嬢なのか?」


ルカは、どこか呆れた様な慣れた様な表情で言ってきた。


「こんな事は、マリリンは知らなくていいんだよ…マリリンは本当に美しいだけではなくとても心優しい少女なんだ…ルカ以外で私を私として見て接してくれた子などいなかったというのに…実を言うと、マリリンに出会うまでは私はルカに好意を抱いているのではないかと思った時期もあったのだ。しかし、マリリンに出会い全く違うと気づいたよ。」


私が、笑いながら話すとルカは驚いていた。


「私にか?気持ちが悪いな…男が男をなど…違うと気づいてくれて良かったよ。そのご令嬢に感謝せねばな。」


ルカは、苦笑いしながら応えた。


「そうだね…ハハ…もうすぐ…もうすぐマリリンを私のものにできる日がやってくるんだな…考えるだけで顔がニヤけてしまうよ…」


私は、そう言いながらも自分の顔がニヤけているのが分かった。

それを見ていたルカは苦笑いをしていた。




そして…時は流れ…

私が十八歳、マリリンが十五歳の年が訪れた。


父である国王と母である王妃には、事前に婚約の件の承諾は得ていたので話はスムーズに進んだ。


そして、王室から正式に婚約の申し立てをする日がきた。

ストラム公爵家の皆は、まさかこの長い期間で私の気持ちが変わることなくこの日がやってきた事に相当驚いていた様だった。


(だから…私の気持ちが変わることはないと言っただろうに…)


私は、そんな事を思いながら婚約の成約を進めた。

そして、ストラム公爵が渋い顔をしながら国王と私のサインがすでにしてある誓約書にサインをした事で、私とマリリンの婚約が正式に結ばれたのだった。


私は、天にも上る気持ちであった。

長い期間待った甲斐があったのだ。


マリリンには、後日改めて正式に挨拶に訪れようと思っていた。

マリリンと直接会うのは、初めて会ったあの日以来であった。

私は、数年ぶりに直接マリリンと会えると思うと待ち遠しくて仕方なかった。


しかし、そんな私の思いが後日一瞬にして打ち砕かれたのだった…


婚約が決まった二日後、ストラム公爵から父と私宛に手紙が届いた。

そこには、婚約の取り消しをお願いしたいという内容が記されていた。

私は、一瞬目の前が真っ白になった…


(婚約の取り消しだと…しかも、マリリンの意思でだと…)


私は、突然の出来事に頭がついていかなかった。

後日、ストラム公爵夫婦とマリリンが王宮へと出向き話をする為に訪れるとの事だったが、私はそんなもの待ってなどいられず自ら、ストラム公爵家へと足を運んだのだった。


ストラム公爵家に到着すると、すぐに公爵夫婦に兄と弟までに出迎えられた。

マリリンは王宮へ行く為の支度をしていた様で急ぎこちらへ向かっているとの事だった。

そして、マリリンが応接室へとやってきた。


数年ぶりに見るマリリンは、地味さを強調しているにも関わらず、美しさに加え体つきまで完璧に成長していてそれを隠しきれていなかったのだ。


そして、マリリンと話をしたい為にストラム公爵達には席を外してもらった。


そして、私はマリリンへ今回の婚約取り消しの件について、何故取り消しにしたいのかを尋ねた。


話を聞くと、マリリンが勉強したい事があるという。

それに加えて、この婚約は政略的なものであり自分の様な冴えない者との婚約は私にとっても良くないと…それに…私自身にはきちんと幸せになって欲しいと…

マリリンは、真剣に思いをぶつけてきた。


だからといって、ようやく婚約まで漕ぎつけたというのにここ

にきて諦めるつもりなどなかった。


私は、考えた結果自分の世間体もあるので当分は解消を保留にして欲しいとお願いしたのだ。

すると、マリリンは私の為ならと心よく引き受けてくれたのだ。

こうして、マリリンとは婚約者のフリをする事になったのだ。


私は、この日決意したのであった…


昔と、変わることのない優しく美しいマリリン…

私は、君をこの先も手放すつもりなどない…

どんな手を使っても、必ず君を私のものにしてみせると…



次話からは、王太子目線の話以前の話に戻ります!!



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