2話〜日向かりん〜
登場人物紹介。
日向かりん
ー楠なつみとは幼馴染で腐れ縁。小中高と同じ学校に通っていたいわゆる親友。部活は女の子には珍しく女子サッカー部に所属。基本的に明るく、勘が鋭いところがある。
「おーい、早く座れ〜」
高校生活お決まりの一言。
チャイムがなる前に5分前の予鈴が存在している。チャイムよりはポップな音楽で校内の生徒を着席へと導こうとしている。
しかしだ、チャイムが鳴っても座っていない生徒が必ずどのクラスにもいる。
私はそういう生徒を眺めながら、きちんと着席している自分に少しばかり優越感を感じながら、先生の一言を待っている。
「なつみおっはよん〜」
このなんとも慣れた感じで朝の挨拶をしてくる彼女は、日向かりん。私が唯一クラスで仲良くなった友達、いわゆる親友であり腐れ縁でもあるポジションに位置する女の子。気を使うことなく素の自分で話せるのも、かりんくらいだと思う。
「おはよ、かりん」
「もぉ〜、最近いっつもなつみは学校来た時テンション低いってば〜。あ、柊くん関係してたり?」
「そうたは関係ないと言えばないけど、あると言えばある。」
「やっぱりあるんじゃん〜。あかりちゃんと登校してきたの?」
「うん」
「柊くんもよく付き合うよね〜。あかりちゃん別に悪い子じゃないけど、もっと視野広げてじゃないけど、もっといい子はたくさんいるのにね〜例えば、なつきとか?」
「なんでそこで私になるのよ。私は幼馴染だからそんな対象に見られてるわけないじゃん。それだったらかりんの方がよっぽど可愛いよ。」
「え?そう〜?まぁ、たしかに私は可愛いっていうか愛嬌があるって感じじゃないかなぁ?」
「(自分で愛嬌あるって分かるもんなんだ、、、)」
「なつきは愛嬌っていう感じではないよね〜。なんか見た目の割には冷静な感じがする。というか、人を近づかせないオーラみたいなのが見える。」
「私そんなオーラだしてるつもりないんだけどな。」
「それはそれでかっこいいと思うけどな〜あ、授業始まるからまた後でね〜」
私には何気ない会話ができる相手が少ないから、こういったやり取りは心地がいい。なんだかクラスに馴染んでいる感じがしていて、安心感がある。
かりんに言われた通り私は少しクラスの中では変わった生徒、つまり浮いているタイプの生徒のようだ。
別にそこを気にして周りに気を使って自分を取り繕ったりすることはしない。単純に、そういうのが面倒くさい。
こういうところが私を「女の子らしさ」から遠ざけているのだと思う。
「はい、次はここまでやっておくように」
午前中の授業が終わり、昼休み。
いつものようにかりんとお弁当を食べていると、
「なつ!」
クラスの全員が1度そうたを見た後にものすごみい速さで私を見る。
はぁ、そりゃあんなイケメンから名前で呼ばれたら注目浴びるのはわかってるんだけど、何回やられても慣れないんだよなぁ。
「柊くん、なんかあったの?」
「え、なつから苗字で呼ばれるのなんかすげぇ違和感。てか、なんでいつもみたいに呼んでくんないの?」
まったくコイツは自分のポジションを全く理解していないようだ。そりゃいちいち「柊くん」なんて呼ぶのは面倒くさいし、気を使うことも面倒くさいけど、そうしておかないとそうたのファンにちょっかいかけられてさらに面倒くさくなる方が嫌。つまり、できるだけ平和に学校生活を過ごしたいのだが、そうはさせないのがこの男なのだ。
「だって、呼び捨てにすると周りの女の子からいちいち言われるのが大変なの。だから、呼び捨ては無し。」
「女子の世界は俺にはわかんねぇからなぁ。ま、それでなつが困るのはダメだもんな、、、うん、わかった。んでさ、なつにちょっと相談があるんだけどいい?」
容姿と振る舞いが相まって、普通に手を合わせてお願いしてるだけなのになんて破壊力抜群のお願いだろうか。私じゃなくて会って二、三回目の女の子にやってみ?確実に目がハートになってときめかせちゃうのは間違いない。当の本人についてはというと、悪い気分ではない。
「別にいいけど、何かあったの?」
「ちょっとなつにしか頼めないことだから、他の子には内緒にしてて欲しいんだけど」
他の女の子というか、おそらく彼女であるあかりちゃんの事だろう。ということは、なんとなくは予想がつく。
「あかりのことで俺に協力してくんない?」
楠なつみの高校生活が平和ではなくなっていくきつかけは、柊そうたであったーーーー。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
最近話題のウイルスや社会全体が色々な動きに変革を求めるようになってきました。
僕もその動きの一つとして、こういった形で自分の満足のいく物語を書いていますので、どうぞよろしくお願いします!